第26話 チカン、アカン!
ナオVSドラン
「家で待つのもイヤ、共に戦場に出るのもイヤ……お前さん、いったいどうしたいんじゃ?」
「だから! あなたの嫁になるのがイヤだと言っているんです‼︎」
「な、何じゃと⁉︎」
今になって驚くドラン。
「も、もしかして歳の差かの? わしは全然気にしとらんから大丈夫じゃ」
「いや、そこは気にしてくださいよ!」
「なら種族の問題か? わしはそんな細かい事にはこだわらんぞ? 実際長い歴史の中で、魔族と人間族が結ばれた例は幾つもあるからの」
「え⁉︎ そ、そうなんですか?」
「うむ。じゃから何も気にせんでええ。もし周りに文句を言う奴がおったら、わしが力で捻じ伏せてやるでの。ワッハッハ!」
「あいや、だからそういう事では無くてですねっ!」
『こちらでは既にフラれたというのに、未だにドラン選手がしつこくナオ選手にプロポーズをしております。ナオ選手はただただ困惑するばかりだー!』
(そりゃあ困惑もしますよ。歳の差とか種族の問題では無いんですよ。そもそも自分は男なんですから。まあ、こんな可愛らしい愛くるしい美少女の姿では説得力が無いのは分かりますが……)
自身の姿が可愛い事は気に入っているナオであった。
(さて、どうしましょうか? 別に無理に説明して理解させる必要も無い訳ですし、彼の言葉を無視してさっさと倒してしまった方が良さそうですね)
考えがまとまり、魔道士の杖を構えるナオ。
「あなたには何を言っても無駄のようですからね。実力行使させて頂きます」
「なるほど……つまり、嫁に欲しくばわしの力を示せと言う訳じゃな? よかろう! ならばわしの実力、その身に味わわせてやるぞい!」
腰にぶら下げた瓢箪から何かを飲むドラン。
「やっぱり何も理解して無いじゃないですか! もういいです! 行きます!」
《バーニングファイアー‼︎》
ナオの杖の前に出現した炎が渦を巻き、巨大な火の塊となってドランに向かって飛んで行く。
だが、ドランに命中すると思われた瞬間、その見た目にそぐわぬ素早い動きで炎の球をかわすドラン。
「ホッホッホッ。大した魔力じゃわい。じゃがそんな速度では、わしに当てるのは無理じゃのう。ホッホッホッ」
笑いながら、また瓢箪の中の物を口に含むドラン。
「では、これならどうです⁉︎」
《サンダーアロー‼︎》
先程の炎の球より遥かに速い、雷の矢を放つナオ。
だが、またしても命中する寸前にかわすドラン。
「これもかわされた⁉︎」
『ナオ選手、ドラン選手に対し魔法を放ちますが、その全てをかわしていますドラン選手! 見た目は老人なのに、何てスピードだー⁉︎』
(バーニングファイアーならばまだしも、光速に近いサンダーアローまでかわすなんて⁉︎ それにさっきから頻繁に何かを口に含んでいるようですが、あれが何か関係しているのでしょうか?)
「ひとつ、尋ねてもよろしいでしょうか?」
あれこれ考える前に、直接尋ねる事にしたナオ。
「ん? 何じゃ? 心配せずとも、わしは独身じゃぞ?」
「そんな事どうでもいいですよっ‼︎ ……あなたのその異常なまでの速度……それは、能力によるものですか?」
「ふむ……まあ、嫁になるおなごには教えてやっても良いかの」
「なりませんけどね」
「わしの固有能力は積酔勢。酒を飲めば飲む程、動きが速くなる能力じゃ。もう既にたらふく飲んだからのう。最早人間に反応出来る速度では無いぞい」
「やはり固有能力。そしてやはり入っていたのはお酒でしたか……まあ、匂いからしてそうだろうとは思っていましたが。しかし、そんな千鳥足で動きが早くなったら、かえって危ないのではないですか?」
「夫の身を案じてくれるのか? 優しい嫁じゃのう」
「はあ……もういちいち反論するのも疲れました」
「確かにいくら能力による物とはいえ、わしにも限界はある。余り速度を上げ過ぎると、制御が効かずにあちこちぶつかる事もあるでの」
「ダメじゃないですか」
「だがしかし! 大量に酒を飲んでいる時は、どんなに怪我をしても全く痛みを感じないのじゃ!」
「いや、お酒で神経が馬鹿になってるだけじゃないですか!」
何でも答えてくれそうだったので、更に突っ込んだ質問をするナオ。
「ただ自身の速度が速くなるだけなんですか?」
「うむ。ただそれだけじゃ。じゃが速度さえ速くなれば、後はわし自身のこの屈強な肉体そのものが武器になるでの。例えばこの極限まで鍛えられた腕……」
そう言った次の瞬間、ナオの視界から消えるドラン。
(消えた⁉︎ 何処に⁉︎)
ナオが警戒していると、いきなりナオの背後に現れた上半身裸のドランが、ナオのお尻を撫でまわす。
「ヒャアッ‼︎ なななな、何をするんですか⁉︎」
顔を赤くしながらお尻を押さえ、慌てて跳びのくナオ。
「この能力とこの鍛えられた腕を使えば、こんな事も出来る」
『ドラン選手、能力と肉体は凄いが、やっている事はただのチカン行為だー‼︎』




