第25話 良い子は絶対やっちゃダメ!
ニーナVSラルム
大きなリュックを背負っているが、何も武器らしき物は持たずにニーナと対峙しているラルム。
未だ泣き止まないラルムにイラつくニーナ。
「まったく! あんた、いつまで泣いてるのよ⁉︎ 本当に戦う気が無いなら降伏しなさい! 人間に危害を加えないって約束するなら、見逃してあげるわよ。私だって弱い者いじめなんてしたくないし……」
「ひっ、ひっく……ダ、ダメだよ。メル様があなた達を倒すって言った以上、頑張って戦わないとあたしがメル様に怒られちゃうもん」
「心配しなくても、あのカミカミ娘はウチのノアちゃんが倒してくれるから大丈夫よ」
だが、ニーナの言葉を聞いて、更に泣くラルム。
「メル様負けないもん! ちょっと滑舌悪いけど強いもん! うえ〜ん‼︎」
『ああーとぉ⁉︎ クラフト選手が激闘を繰り広げている中、こちらでは未だニーナ選手が少女を泣かせているぞー! ニーナ選手、いじめっ子かー⁉︎』
「うるさいわね‼︎ この娘が勝手に泣いてるだけでしょ‼︎」
ニーナが実況者にキレていると、何故か突然ニーナの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「え⁉︎ 何⁉︎ 何で涙が?」
状況が理解出来ず、戸惑うニーナ。
『な、何とー‼︎ 何故かニーナ選手が泣いているぞー⁉︎ これぞ正に、鬼の目にも涙かー⁉︎』
「あんた! 後でぶっ飛ばすからね‼︎」
涙の理由は分からないが、とりあえず自身に治癒魔法をかけるニーナだったが、涙は全く止まる事はなかった。
「治癒魔法が効かない? という事は……まさかだけど、あんたの固有能力⁉︎」
「そう……これがあたしの固有能力、誘感泪だよ〜。あたしが泣けば泣く程、あたしの近くに居る人も泣いちゃう能力なの〜」
「くだらないわよっ‼︎」
ニーナの声にビクッとなったラルムが、更に激しく泣きじゃくる。
「うえ〜ん‼︎ くだらないって言われた〜‼︎ そんなの言われなくても、あたしだって分かってるもん〜‼︎ でも小さい時から泣き虫でずっと泣いてたらこんな能力になっちゃったんだもん‼︎ 好きでなったんじゃないんだもん‼︎ うええ〜ん‼︎」
それに伴い、ニーナの目からも大量の涙がこぼれ落ちる。
「や、やめなさい‼︎ 泣くんじゃないわよ‼︎」
『先程から、ただただふたり揃って泣いております! これは戦いと言えるのかー⁉︎』
(クッ。確かに馬鹿げた能力ではあるけど、これではある意味視界を塞がれてるのと同じ……それに、このまま涙を流し続けてたら、脱水症にもなりかねない。固有能力によるものだから、治癒魔法も効かない。意外と厄介な能力だわ。だけど!)
「攻撃力が無いなら、力尽くで押し通す!」
涙を拭いながら刀を構え、ラルムに向かって行くニーナ。
「イヤー‼︎ 来ないでー‼︎」
背中のリュックから何かを取り出し、自身の目の上でそれをギュッと握り込むラルム。
すると、何かの液体が握った手の中から滴り、ラルムの目の中に入った瞬間、目を押さえてのたうち回るラルムとニーナ。
「痛いいいー‼︎」
「いったあああー‼︎ な、何よ⁉︎ あ、あんた何したのよ⁉︎」
地面を転がり回るラルムの手の中から、タマネギが転がり落ちる。
『ああーっとお‼︎ これはタマネギだー‼︎ 何とラルム選手、自らタマネギを絞ってその汁を自身の目に入れるという奇行を行いましたー‼︎ そして、ラルム選手と同じようにニーナ選手も苦しんでおります。己自身を傷付けて相手を攻撃するとは、何と恐ろしい能力かー⁉︎』
「うえ〜ん‼︎ 痛いよ〜‼︎ 目にしみるよ〜‼︎」
「あんた馬鹿なんじゃないの⁉︎ いくらそういう能力だからって、自分の目に……」
次にラルムがリュックから取り出した物を見て、ギョッとするニーナ。
「あ、あんた……その手に持ってるボトルって、ま、まさか⁉︎」
「シャンプー」
「そ、それをどうするつもりかな?」
「勿論、目に入れる」
『なな何とー‼︎ ラルム選手、今度はシャンプーを目に入れようとしております‼︎ 誰もが一度は経験した事があるでしょう、あれは地獄の苦しみです! それを自らの手で行おうとは、ラルム選手、正に悪魔の所業だー‼︎』
それを知ったニーナが、慌ててラルムを止めようとする。
「ば、馬鹿な真似はやめなさい‼︎」
激しく制止した直後、諭す様に優しい口調で説得するニーナ。
「ね、よ〜く考えて? それは〜、目に入れる物じゃ無くて〜、髪の毛を洗う為の物なのよ?」
「知ってるよ〜?」
「なら、どうして目に入れようとするのかな? そんな事したら……」
「うん。もの凄く痛いね」
「だ〜ったらやめましょうよ〜。2人してただ痛い思いをするだけよ?」
「なら負けを認めて、大人しくノアさんを渡してくれる?」
「それが分からないのよ。あなた達、何でノアちゃんを欲しがるの? ノアちゃんがあなた達魔族と何の関係があるの?」
ノアが元魔王ノアールである事は、ニーナ達は当然知っているが、何か情報が得られないかと、探りを入れるニーナ。
「ふ〜ん。とぼけるんだ? あたし達はずっとあなた達を見てたのに……」
「ず、ずっとっていつからよ?」
「……一回戦から」
「今日の事じゃないのっ‼︎」




