第24話 ひとり残らず駆逐してやる‼︎
クラフトVSスチーム。
再びタバコをくわえて棒立ち状態のスチームと、スチームの能力を警戒して間合いに入れないでいるクラフト。
『ド派手な爆発から始まりましたクラフト選手対スチーム選手の戦いですが、今は一転膠着状態が続いております。だがそれも仕方の無い事でしょう。迂闊に近付けばスチーム選手のあの大爆発に巻き込まれてしまいます。はたしてクラフト選手、どう攻略するのか⁉︎』
(攻略っつっても、ただあいつの爆発に耐えながら懐に飛び込んでぶっ飛ばすだけなんだが……確かに俺様の絶対防御ならあいつの爆発に耐えられるけどよー。そう何度も使えねぇしなー。もしあいつの能力が回数制限が無くて連発できるってなると、俺様の方が先に弾切れになる可能性があるしなー)
「来ねぇのかい? あんた、見かけによらず慎重なんだなー? もっと力押しで来るのかと思ってたぜ」
「慎重にもなるさ。他のパーティーがやられた以上、俺達が最後の砦なんだからな。絶対に負ける訳にはいかねぇんだ」
「へえー。ちゃんと勇者パーティーっぽい考え出来んだ? それで何で女にモテないのかねー?」
「勝手に決め付けんなっ‼︎ 俺様だって彼女の1人や2人はなー!」
「居るのかい?」
「う……ぐううぅぅぅぅ〜」
黙って涙を流すクラフト。
「だよな。いや、あんたの辛い気持ち、分かるぜー? なあ、どうだい? モテない男同士、俺と一緒に世界中のリア充共を駆逐しねぇか? 今、俺達の仲間になってくれたら、どんな女でも一瞬で惚れさせる、禁忌の魔術を教えてやるぜ?」
『ま、正に悪魔の誘惑だー‼︎ まさかクラフト選手、悪魔に魂を売るのかー⁉︎』
「なん……だと⁉︎ そ、その魔術を使えば、俺様でも女にモテモテになるのか?」
『乗り気だー‼︎』
「ああ、この書類にサインしてくれりゃあ、俺が術をかけてやるぜ」
そう言いながら、どこかから取り出した書類とペンをクラフトに手渡そうとするスチーム。
そのペンを受け取ろうと、手を伸ばすクラフト。
『な、何とクラフト選手! いくら女にモテないからって、本当に悪魔と契約するつもりかー⁉︎』
だが、何かに気付いたクラフトの手がピタリと止まる。
「いや待てよ⁉︎」
「どうした? さあ、早くサインを!」
「オメェはリア充に対する悔しさから、あんな能力が発現したんだよなー?」
「ああ、そうだが?」
「女にモテモテになる魔術なんてものが本当にあるんなら、何でオメェは自分に使わねぇんだ?」
『確かにそうです! クラフト選手、よく気が付いた!』
「ああー、えっと……俺、実はこう見えて女なんだ!」
『苦しい言い訳だー!』
「なっ⁉︎ マジか⁉︎ どこからどう見ても、男にしか見えねぇぜー!」
『信じたー⁉︎』
「だろー? 女が女にモテたってしょうがないから、使わないのさ」
「なるほどなー! ハッハッハッハー!」
「ハッハッハッハー!」
2人で笑い合うクラフトとスチーム。
「んな訳あるかー‼︎」
間合いに入ったスチームに殴りかかるクラフト。
そんなクラフトの右手を指差すスチーム。
「おーっと待ちな! 俺を殴る前に自分の右手を見……」
スチームが何かを言いかけたが、そのまま殴るクラフト。
「ぐぶおわハアアー‼︎」
吹っ飛ばされ、全身を地面に擦りながらようやく止まるスチーム。
『クラフト選手の渾身の右パンチがスチーム選手の左頬に炸裂したああー‼︎ 殴られる直前、スチーム選手が何か言っていたようですが、お構いなしに行ったー‼︎ 早くも勝負あったかー⁉︎』
「そ、そんな訳……無いだろう……」
仰向けの状態から、上半身だけを起こすスチーム。
「お、俺は待てと言っただろう⁉︎ 何で止まらねぇんだよ⁉︎」
「知らん‼︎ 殴る事に必死でよく聞こえんかった‼︎」
「こ、この野蛮人め。まあいい……では改めて自分の右手を見てみな?」
「あん? いったい何だってんだ?」
スチームを警戒しつつ、自分の右手を開くクラフト。
何と、クラフトが握っていたのはペンではなくタバコだった。
「なっ⁉︎」
次の瞬間、大爆発に巻き込まれるクラフト。
「グワッ‼︎」
『何とー‼︎ クラフト選手大爆発ー‼︎ いつの間にか仕込まれていたタバコが大爆発! クラフト選手は完全に爆発に巻き込まれたようですが、果たして無事なのかー⁉︎』
再びタバコをくわえたスチームが、自身の能力について語り始める。
「あー、そう言やぁちゃんと言ってなかったから説明するぜ。おれの固有能力は充爆煙。魔力を込めた水蒸気が充満したタバコに火を付ける事により、大爆発を起こす能力だ。知っての通り、その威力は相手がリア充であればあるほど増していく……てもう聞こえちゃいねぇか?」
爆煙が晴れると、うつ伏せで倒れているクラフトが現れた。
『クラフト選手大ダメージ‼︎ 何とか五体は保っていますが、生きているのかー⁉︎』
実況者の言葉を聞き、疑問に思うスチーム。
「五体が無事だと? 馬鹿な……身体はともかく、タバコを掴んでいた右手まで無事な筈が……」
スチームがクラフトの右腕の状態を確認しようと近付いた時、倒れていたクラフトが急に起き上がり、スチームに殴りかかる。
「何っ⁉︎」
咄嗟に後ろに下がり、何とかクラフトのパンチをかわすスチーム。
「チッ。かわされたか……」
「あんた、なんで全身ボロボロなのに、右腕だけが無傷なんだ?」
「あ、あの一瞬で全身に絶対防御をかけるのは間に合わないと思ったからよ。咄嗟にタバコを握り込んで、絶対防御を右手に集中させたんだ。まあ、爆発の威力が凄くて身体の方はダメージを負っちまったがな」
「へえ……そんな芸当ができるんだ? あんた、見かけによらず器用なんだな?」
「いや、やった事は無ぇが、何となくやってみたら出来ただけだ」
「いや天才かよ!」




