第21話 熨斗って読める?
選考会の全ての試合が終わり、勝ち残った8つのパーティーにシーマ国王が賛辞を贈る。
「此度の闘い、皆見事であった。残ったお前達には充分な報酬を与えよう。そしてお前達ならば必ずや、大魔王ディア・ボス・ティー二を討ち倒してくれるものと信じておる!」
国王の言葉に、選ばれたパーティーの戦士達が士気を高める中、1人の男がありえない言葉を発する。
「そりゃあ無理だな!」
「何っ⁉︎」
「誰だっ⁉︎」
驚きの表情で振り返る戦士達の目線の先に居たのは、選考会でリア充の男をタバコの大爆発で倒した、チーム水妖館の1人、スチームだった。
「オイお前! 無理とはどういう意味だ⁉︎」
戦士の1人がスチームに食ってかかる。
「こういう意味だよ!」
そう言いながら、懐からタバコを取り出すスチーム。
「ハッ⁉︎ みんな離れてっ‼︎」
何かを察したニーナが、戦士達に退避を呼びかける。
「何⁉︎」
次の瞬間、スチームが指で弾き飛ばしたタバコが、大爆発を起こす。
「グワアアーッ‼︎」
『な、何だあああー⁉︎ と、闘技場が爆炎に包まれましたああー‼︎』
ノア達は、クラフトの絶対防御に守られて全員無傷だったが、他の戦士達はその殆どが爆発に巻き込まれて気を失っていた。
「き、貴様! い、一体どういうつもり……グアッ!」
「な、何をす……ガハアっ!」
辛うじて立っていた戦士達も、チーム水妖館のメンバーによって次々に倒されて行き、遂に残ったのはノア達チームHEN隊だけとなった。
『何とおおおー‼︎ これは一体どういう事だああー⁉︎ 突如スチーム選手のタバコにより闘技場内が大爆発! 更に難を免れた選手達もチーム水妖館の選手達により全員倒されてしまいましたー‼︎ あ、いや。我らが勇者パーティーだけは健在です‼︎』
突然の暴挙に怒り心頭のシーマ国王。
「貴様ら、何の真似だ⁉︎ 選考会は既に終わっている! 貴様達は選抜メンバーに選ばれたのだぞ⁉︎ 何故仲間を攻撃するのだ⁉︎」
「仲間だぁ? そんな訳ねぇだろう⁉︎ 何たって俺達は……」
「スチーム‼︎」
スチームの言葉を、ひとりの少女が遮る。
「その先はメルが言うわ」
「ハッ! 分かりました。それではメル様、どうぞ」
スチームがサッと後ろに下がると同時に、前に出て来る少女。
「コホンッ! 何たってメル達は……新進気鋭のガールズバンドなんだからね!」
「いえ違いますメル様。しかも5人中3人が男です」
メルのボケにツッコミを入れるスチーム。
「そ、そうね。少々無理があったわ。では改めて。メル達は……水回り戦隊、キッチンジャー!」
「それでは炊飯器限定になってしまいます、メル様」
「炊飯器のジャーじゃないの! 最近の戦隊ものはみんな最後にジャーって付けるでしょ?」
「当然のように言われましても、知りませんから」
「それに、キッチンジャーって言ってもキッチンだけじゃなくて、水回り全般だよ〜。例えばトイレイエロー! とかイケると思ったのにな〜」
「そんな汚そうな名前、みんな嫌がります」
「う〜ん。じゃあね〜……」
『な、何だ何だー⁉︎ 勝ち残った選手達をボコボコにしたかと思えば、いきなりコントを始めたぞー⁉︎ 新手のお笑い芸人かー⁉︎』
「あーっ‼︎ それ、次に言おうと思ってたのにー‼︎」
実況者に怒るメル。
「お主ら、遊んどらんで早ぅ本題に入らんか」
痺れを切らして、水妖館のひとりがメル達に注意を促す。
「分かってるわよ〜。まったく、年寄りは口うるさいんだから〜」
「そこまで老けとらんわっ!」
ひと通りボケた所で、ようやく名乗りを上げるメル。
「メルの名前はメルクルりゅ……」
「噛んだ……」
「噛んだね……」
「自分の名前を噛みおったぞ」
水妖館のメンバーに突っ込まれるメル。
「メ・ル・ク・ル・ディ・スよ! 慣れないと噛みそうになるから、メルで良いわ!」
「無かった事にしようとしてます〜」
だが、滑稽な言動とは裏腹に、衝撃の事実がメルの口より語られる。
「メルはディア様が配下、七星魔天第5位の……メルよ!」
「あ、名前端折った」
「噛むのを恐れて置きに行きおったぞ」
「そこ、うるさい!」
『ななな、何とおおー‼︎ ただのコント集団かと思いきや、その正体は七星魔天のひとりだったあああー‼︎ しかし、こうも簡単に魔族の侵入を許すとは、この街のセキュリティーはザルかー⁉︎』
「あなた達が討伐隊を集めてるって情報を聞いてちょっと偵察に来たのよ。歯応えがありそうなら魔界で待ち受けようと思ってたけど、余りのダメダメっぷりにここで倒す事に決めたわ」
「だけどあなた達!」
ノア達を指差すメル。
「な、何じゃ⁉︎」
「あなた達勇者パーティーは、魔王ノアールを倒した! だからメル達が直々に1対1で相手して、コテンパンにのし付けて送り返してやるわ!」
「意味が分かりません、メル様」




