第20話 浮気を追求されるような
暴走状態のジュディ。
そのジュディの近くに居るニーナ達は、座り込んだまま立ち上がる事が出来ず、最もジュディに近いノアに至っては完全に地面に横たわったまま身動きひとつ出来ずにいた。
「ぬぐぐぐぐ〜‼︎ これ以上押されたら、お腹のあんこが出て来るわい」
重力に耐えながら、対策を考えるノア。
(ウルの奴は完全に潰れたであろうから武器は期待できんし。いや、仮に武器があったとしても、この超重力の中ではまともに戦う事すらできん。こうなれば、何が出て来るかは余にも分からんが……固有能力を使ってみるしかなさそうじゃの)
一か八か、固有能力である英雄召喚を発動するノア。
(この超重力にも負けない、魔道士でも筋肉ダルマでもいいわい。とにかくとんでもなく強い奴、出て来るのじゃ!)
ノアの身体が光を放ち、その光が消えるとそこに現れたのは、見た目は14才程、ピンク色でハーフツインの、超絶美少女だった。
「ん⁉︎ 何⁉︎ どうなって……」
辺りを見渡す少女。
「ああそっか。僕もノアちゃんに召喚されたのか〜⁉︎」
ノアの記憶を共有したのか、状況を理解したらしい少女。
しかし何より驚愕なのは、会場中の全ての人が動くどころか立つ事すら出来ないでいる中、涼しい顔をして平然と立っている事である。
「じゃあ、ここがアイ君が言ってた異世界って訳だね」
『な、なんとー⁉︎ ノ、ノア選手の姿が消え、そ、そこに物凄い美少女が現れましたー‼︎ も、もしかしてこれが噂に聞く、ノア選手の固有能力なのでしょうかー⁉︎ いやそれよりも、何故この少女はこの超重力の中、普通に立っていられるんだー⁉︎』
「ふむふむ。選抜メンバーに選ばれる為に、今はあの娘を倒さなければいけないけど、食べ物が無くて暴走しちゃってる、と……フフッ、何だかセラみたいだね。でも、まずはその前にっ!」
どこから取り出したのか、少女の指の間には鳥の羽らしきものが数本握られていた。
その羽を自身の前の地面に撃ち込む少女。
すると、その羽を基点に一瞬魔法陣が現れ、すぐに消えた。
「これで良し! んじゃあ、あの娘の暴走を止めてあげないとね」
そう言いながら、超重力の中を普通に歩いてジュディに近付いて行く少女。
「後でノアちゃんが食べ物くれると思うから、今は大人しくしようね?」
再び手に持った羽を、今度はジュディを囲む様に周りの地面に撃ち込む少女。
《マジックイレーズ‼︎》
少女が叫ぶと、ジュディから発せられていた重力がスッと消え、気を失ったジュディが地面に倒れ込む。
「レフェリーさん! カウントお願いね!」
「あっ! ハ、ハイ!」
重力が消え、立ち上がる事が出来たレフェリーが、ふらつきながらもカウントを数え始める。
「……ナイーン‼︎ テーン‼︎ ジュディ選手カウントアウトにより、ノア選手? の、勝ちとします‼︎」
『テンカウントー‼︎ ノア選手が消えて突如現れた美少女が、超重力をものともせずにジュディ選手を瞬殺してしまいましたー‼︎ この少女の正体がノア選手が能力で変身したものなら何の問題もありませんが、全くの別人となれば不正行為により、逆にノア選手の失格となってしまいます! はたしてどっちなんだー⁉︎』
闘技場全てにかかっていた重力が消え、ニーナ達もようやく起き上がって来る。
「ふう。酷い目に合ったわね」
「でも、ノアさんがやってくれましたよ」
「その変身ノアちゃんが、何かさっきからずっとこっちを見てるんだが?」
「本当ですね。視線は……ジアさんを見てるような?」
「まさかジアちゃん、あの娘と顔見知り?」
「いやいや! 知らないし、あんな可愛い娘一度見たら忘れないよ〜」
(アイ君に聞いた特徴だと、どうやらあの娘がジアちゃんみたいだね)
なおもジッと見つめて来る少女に、思わず目をそらしてしまうジア。
(そっか。複雑な事情があるんだね……でも、大丈夫だからね)
ジッとジアをみつめたままウインクをする少女。
「んなっ⁉︎ なななな、何なのさあの娘⁉︎」
少女の謎の行動に、顔を真っ赤にするジア。
そんなジアに詰め寄るニーナ。
「ちょっとジアちゃん! あなた、あの娘とどういう関係なのよ⁉︎」
「だから、初対面だってば〜!」
「初対面の娘があんな事するのは不自然でしょ⁉︎」
「あたしだって分かんないよ〜!」
「あの娘とは初対面って事は、ノアちゃんとそういう関係って事?」
「何でそうなるのさ〜!」
「んじゃあ、とりあえず僕の役目は終わったからノアちゃん、後はよろしくね〜」
そう言った直後少女は光に包まれ、その光が消えると、その場に目を閉じたノアが現れる。
「……ん? 終わった、かの?」
目を開けたノアが周りを見渡し、状況を理解する。
「うむ。どうやら上手く行ったようじゃの」
『ああーっとおー‼︎ 謎の美少女が消え、その場にノア選手が現れました! やはりあの少女はノア選手が変身したものだったー! ならばこの試合、文句無くノア選手の勝利……つまりはチームHEN隊の勝利となります‼︎』
勝利したノアが仲間の元に戻ると、勝利した事を讃えられるどころか、逆にニーナ達に糾弾されるのだった。
「ちょっとノアちゃん! あなた、いつの間にジアちゃんとあんな関係になってたのよ⁉︎」
「いや、何の話じゃ⁉︎」
当然、全く訳の分からないノアであった。
「ホ、ホ〜」
そして何と。ウルは生きていた。




