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第13話 中二病という言葉は、本来の意味とは違うそうな

 戦おうと前に出るジュディを止めるレフェリー。


「ちょ、ちょっと待ちたまえジュディ選手!」


「何?」


「その手に持ってるのは何かね?」


「さっき屋台で買った、食べ物色々だよ?」


「これから試合なんだぞ? 置いて行きなさい!」


「何で⁉︎ やだよ! アタシ、食べ物無いと死んじゃうもん!」


「試合が終わった後で食べればいいだろう⁉︎」


「やーだー‼︎ いつも食べ物持ってないとやーだー‼︎」


『ああーとお⁉︎ 何やらジュディ選手がレフェリーともめております。どうやら食べ物を持っていたいジュディ選手と置いて行けと言うレフェリーとの間で、攻防が繰り広げられているようです!』


「あのおじさんだって剣、持ってるじゃない⁉︎」


「あれは戦う為の武器なんだから、当然だ!」


「じゃあ、アタシの食べ物だって武器だもん!」


「食べ物が武器になる訳ないだろう⁉︎」


「なるもん!」


「駄々をこねてないで、置いて行きなさい!」


「やーだー‼︎ なるもーん‼︎」


 お互い断固として譲らない攻防に、観客席からブーイングが出始める。


「いつまでも何やってんだー⁉︎」


「さっさと始めろよー‼︎」


「食べ物持って戦ったって別にいいじゃねーか⁉︎」


「レフェリー、さっきのスチームって奴がタバコくわえてたのはアッサリ認めたくせに、相手が女の子なら急に強気かー⁉︎」


 痛い所を突かれてたじろぐレフェリー。


「グッ! わ、分かった! なら、ヘンケン選手が了承するなら認めよう! ヘンケン選手、どうかね?」


「ああ、ワシは全然構わんよ? 食べ物なんか持ってたら、むしろ戦いにくいのはお嬢ちゃんの方だろうからね」


「よ、よし! なら認めよう! 試合開始!」


 折れたレフェリーが腕を交差させて、試合開始を告げる。

 試合が始まっても、なおジュディを勧誘しようとするヘンケン。


「お嬢ちゃん。ウチのチームに入れば、いくらでも美味しい物を食べさせてあげるよ?」


「え、ホント⁉︎」


「ああ、本当だとも。だからワシらと一緒に憎っくき魔族共を滅ぼそう!」


 先程まで嬉しそうにしていたジュディだったが、ヘンケンの言葉を聞いて急に不機嫌そうな表情へと変わる。


「おじさん、魔族嫌い?」


「ん? ああ、大嫌いだね!」


「魔族に大切な人、殺されたとか?」


「いいや。魔族に直接どうこうされた訳じゃ無いがね。ワシらは同族以外は認めないんだよ」


「同種族主義か……ゴメン。アタシ、おじさんとは仲良くなれそうにない」


「そうか……残念だ。なら可愛そうだが、お嬢ちゃんを倒して先に進むまでだ!」


 剣を構えてジュディに接近しようとするヘンケン。


「ぐっ! 何⁉︎」


 しかし全く前に進めないヘンケン。


「な、何だ⁉︎ あ、足が重い⁉︎ いや、足だけじゃない! 全身に鉛を付けられたように身体が重い⁉︎」


『これはどうした事だー⁉︎ ヘンケン選手、剣を構えたまま全く動かなくなったぞー⁉︎ ジュディ選手の攻撃を誘っているのかー⁉︎』


「バカね。とっくに攻撃されてるわよ」


 ニーナの言葉に同意するナオ。


「重力魔法、ですね」


「ええ。しかもとんでもなく強力な、ね。もしかしたらあの娘の固有能力なのかもしれないわ」


「重力操作系の能力、ですか」


 ようやく、自分が攻撃を受けている事を理解するヘンケン。


「ま、まさか⁉︎ お嬢ちゃんの攻撃魔法なのか?」


「そだよ。でも、魔法じゃなくてアタシの固有能力《加色翔(かしきしょう)》だけどね」


 その後、手に持った串カツを全て食べ終えたジュディが、今度はチョコバナナを食べ始める。


「う、うおっ⁉︎ な、何だあああー⁉︎」


 すると、先程まで身動き出来ずにいたヘンケンの身体が、フワリと宙に浮かび始める。


『ああーとおっ⁉︎ ヘンケン選手が宙に浮いたああー! これはヘンケン選手の飛行魔法なのかー⁉︎』


 そんな実況に、またニーナの解説が入る。


「重力系の能力なら、当然軽くする事だって出来るわよ。私はあの食べ物が怪しいと睨んでるけどね」


 そんなニーナな解説に、とんちんかんな感想を言うクラフト。


「何いっ⁉︎ あの食いもんにそんな秘密がー⁉︎ そんな凄い食いもん、どこで売ってんだ⁉︎」


「いや、あの食べ物が能力発動の条件だという事じゃろう? それぐらい、余でも分かるぞい」


「ノアちゃんの言う通りよ。固有能力を発現するには、何らかのリスクや条件が伴うものよ。あの娘の場合は、常に何かを食べ続けなければいけない、みたいな事じゃないかしら?」


「お、お、お、降ろしてくれええー‼︎」


「じゃあ魔族の事、好きになってくれる?」


「何っ⁉︎ 魔族は滅ぼすべき敵だああー‼︎」


「あっそ」


 ジュディがチョコバナナをひと口食べると、更に上昇して行くヘンケン。


「うおおおおー‼︎」


「その高さから落ちたらおじさん、多分死んじゃうよ?」


「や、やめて‼︎ ま、負けを認めるから降ろしてええー‼︎」


「魔族の事は?」


「愛してますううー‼︎」


「そ。じゃあ許してあげる」


 ニコッと笑うと、ゆっくりヘンケンを地上に降ろすジュディ。


『ああーとおっ⁉︎ ヘンケン選手、アッサリと負けを認めましたああー‼︎ この試合、ジュディ選手の勝ちです‼︎』


「スゲェ! ただ食べてるだけで勝っちまったー!」


「でもよー。あの娘、魔族の事を好きになってくれとか言ってなかったか?」


『そうなんです! 確かにわたくしも聞きました! ジュディ選手はヘンケン選手に対し、魔族を好きになってくれと言っていました。まさかまさか、ジュディ選手は魔族の関係者なのかああー⁉︎』


 実況者の言葉に、ざわつき始める観客達。


「んー」


 それを感じ取ったジュディが痛いポーズをとりながら、中二病的セリフを口にする。


「ハッハッハー‼︎ 愚か者め! 我が混沌より産まれし力により、永劫の闇へと還るがいい‼︎」


『いや、単に中二病をこじらせてるだけだったー‼︎』





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