第8話 お腹の脂肪も食器洗剤で落ちないかな?
いよいよ選考会が開始される時間となり、闘技場の中に集まる冒険者達。
満杯となった客席の一角に設けられた特別席にシーマ国王が現れ、マイクを握る。
「わしがシーマ国王じゃ! 今日はわしの名前だけでも覚えて帰ってくれ!」
「売れない漫才師かっ‼︎」
「今日はみな、この国の為によく集まってくれた。じゃが相手はあの魔王ノアールよりも遥かに強いとか強く無いとか言われておる……」
「どっちなんじゃっ⁉︎」
「魔王ディアとその配下、七星魔天じゃ。だが恐るな! その内の2人は我らが勇者、ウルの仲間達によって既に倒されておる!」
客席から大歓声が沸き起こる。
「おおー‼︎ さすがは勇者パーティーだぜー‼︎」
「勇者様達が居れば、魔王ディアなんか一捻りよ!」
「なんたって魔王ノアールもミジンコみたいに楽勝で倒したって話だぜー⁉︎」
「まだミジンコにはなっておらんわいっ‼︎」
客席に向かって怒るノアだったが、歓声にかき消されてノアの声は周りには聞こえなかった。
「とはいえ、決して油断してはならない。仮にも相手は魔王とその配下。力の無い者が挑んでも、無駄に犠牲を増やすだけだ! そこでわしは精鋭のみによる討伐隊の編成を提案し、今回の選考会開催の運びとなった訳じゃが……」
真剣な表情になり、目を閉じるシーマ国王。
「選考会開始の前に、みなにひとつだけ聞いておく……真剣な話をしていたわしを惚れ直した者は手を上げろー‼︎」
ずっこける冒険者達。
そんな中、国王に近しい者達がスッと手を上げていた。
(な、何だかこんな光景、前にも見た気がするわね?)
ずっこけたまま、何かを思い出していたジア。
「ゴホンッ! まあ、今のは軽い冗談じゃが……今回の任務がかなり危険なのは間違い無い。そこで、見事討伐隊に選ばれた者には十分な褒美を与える!」
今度は冒険者達から歓声が沸き起こる。
「なんでも噂じゃあ、魔族を倒したら一生遊んで暮らせるだけの報酬が貰えるらしい!」
「マジかー⁉︎ じゃあまずは討伐隊に選ばれないとなー!」
だが、色めき立つ冒険者達を冷めた目で見つめているニーナ。
「バカね。そんな欲にまみれた人間が選ばれる訳無いでしょ? 私達はか弱き人々を守る為に立ち上がった勇者だから、ノアール討伐にだって選ばれたのよ!」
「いや、その割にはニーナさん、討伐依頼が来た時、相当念入りに報酬の交渉をしていたと思いますが……?」
ニーナに聞こえないように、ボソッと呟くナオ。
そして話を終えたシーマ国王が、冒険者達を鼓舞する。
「みんなー‼︎ 報酬が欲しいかー⁉︎」
「おー‼︎」
右手を力強く突き上げて問うシーマ国王に、同じく右手を上げて応える冒険者達。
「いや、ストレート過ぎるじゃろっ⁉︎」
「金が欲しいかー⁉︎」
「おー‼︎」
「地位と名誉が欲しいかー⁉︎」
「おー‼︎」
「一生遊んで暮らしたいかー⁉︎」
「おおー‼︎」
「ならば、勝ち残れー‼︎ 選考会開始じゃー‼︎」
「おおおおおー‼︎」
「どこかのクイズ番組かっ⁉︎」
他の冒険者達と一緒になって右手を突き上げていたニーナを、ノア達は見なかった事にした。
「それでは、後の説明を頼む」
「かしこまりました」
ひと通りコールを終え満足したシーマ国王が、司会者に託して下がって行く。
「それでは、私の方から選考会について説明させて頂きます。当初の予定では、参加者全員による総当たりリーグ戦を行い、成績優秀者を討伐隊メンバーにするつもりでしたが……」
「総当たりリーグ戦とは何じゃ?」
ノアの問いにニーナが答える。
「細かいルールは色々あるけど、ひとりが……今回はパーティーごとにだけど……他の参加者全員と戦って、最終的にポイントの一番高い人が優勝、みたいな感じよ」
「予想以上に参加者が多かったので、リーグ戦にしちゃうとおっそろしく時間がかかってめんどくさ……いや敵に気取られる恐れがあるという事で……」
「今、めんどくさいって言いかけたぞ⁉︎」
「チーム毎に代表者1名ずつによるバトルを行なって頂き、勝ったチームは勝ち残り。負けたチームは他に戦えるメンバーが残っていたとしても敗退となります」
「代表者に全て責任がかかってくるのかー」
「対戦相手は、その都度抽選で決めさせて頂きます」
「本当にイベント色が強いですね」
「そして最終的に勝ち残った8つのチームを、選抜パーティーとさせて頂きます。なお代表選手は、対戦毎に変えても同じ選手がずっと戦ってもらっても、どちらでも構いません」
誰を出すかについて相談を始めるノア達。
「だそうじゃが、どうやって代表者を決めるんじゃ?」
「ジャンケンでいいんじゃねーか?」
「何を言ってるのですか⁉︎ 相手の能力を考察してこちらも相性の良い人を……」
「実際誰が出てくるかなんて分かんないんだから無駄よ」
「ですが……」
「じゃあ、公平にクジにすればいいよ」
「クジ?」
そう言って、まだぶら下げていた屋台の袋から焼き鳥の串を5本取り出しどこかへ走り去った後、しばらくして戻って来たジアが串を見せびらかす。
「ジャジャーン、ほら! 串に一本だけ赤い印を付けたからさ。これを引いた人が代表って事でどう?」
「そ、それはいいんですが……」
その串を見たノア達は、何故かとても嫌そうな顔をしていた。
「どしたの? 何か問題ある?」
「お主、焼き鳥が付いていた、油やタレまみれの串をよく素手で握れるのぅ?」
「いや、ちゃんと洗って来たからああー‼︎」




