第7話 理不尽大王降臨!
辺りを警戒しながら構えていたノアがスッと身体を動かした時、その横を死神の鎌のような物が通り過ぎて行った。
(な、何じゃ⁉︎ 今、耳元に風を感じたぞい? ウル、貴様か?)
『ホ? 俺は何もやっていないぞ?』
(本当か? てっきり貴様が変態的発想で、余の耳に息を吹きかけたのかと思うたぞ?)
「クワッ⁉︎ クワアアアア‼︎」
「痛ああー‼︎」
ウルズクローの激痛でしゃがみ込んだノアの頭上を、また鎌が通り過ぎて行く。
(またじゃ! やはり何かが余の側を通っておるぞ!)
『まあ、敵の攻撃で間違い無いだろうが……魔力はおろか、気配もまるで感じない』
(貴様がボケておるだけじゃないのか?)
「クワァ‼︎」
「いだあっ‼︎」
側頭部にウルズインパクトを食らい転んだノアの居た場所に、また鎌が振り下ろされる。
「どうするんじゃ⁉︎ このままでは手も足も出んぞ⁉︎」
ノアがそう言った時、闇が僅かに薄くなった。
「ホッ⁉︎」
(どうしたんじゃウル?)
何かに気付いたウルが、ノアに作戦を伝える。
『おいノア、今言った事をもう一度言ってみろ!』
(今言った事? どうしたんじゃウル!)
『もっと前だ!』
(貴様はボケておるのか!)
『前過ぎだ!』
「痛ああっ‼︎」
『確証は無いが、試してみたい事がある』
改めてウルから説明を聞くノア。
(むうー、あまり気は進まんが、このままでは拉致があかんしのう。仕方ない)
「ああ、何て凄い能力なんじゃー‼︎」
わざとらしい口調でルーネスを褒め始めるノア。
「さすがは七星魔天のひとりじゃー‼︎」
すると、ノアがわざとらしく褒める度にどんどん闇が薄くなって行く。
(ウル、どうやら貴様の読みは当たったようじゃの⁉︎)
『ホウッ! もっと褒めまくるんだ!』
(うむ)
「この強さで第7位だなんてとんでもない! これはもう第1位と言ってもいいくらいじゃー‼︎」
色々褒めまくっていると、遂に辺りを包んでいた闇が完全に消え去った。
そこには、赤くなった顔を押さえながら照れまくっているルーネスの姿があった。
「そそそ、そんなに褒められたって嬉しくなんてないんだからね!」
「ツンデレかっ!」
『突っ込んでる場合か! チャンスだ!』
「お、おう!」
ルーネスに向かい走り出すノア。
《ファイアーブレード‼︎》
右腕に作り出した炎の剣で、ルーネスを斬りつけるノア。
「グアッ‼︎」
(浅いか⁉︎)
千載一遇のチャンスだったが、致命傷には至らなかった。
「痛い痛い痛いい‼︎ そうか、そうやっておだてておいてこの隙を狙ってたんだ? やっぱりさっき言った事は嘘だったんだ⁉︎」
再びルーネスから黒いオーラが溢れ始める。
「そうだよ。これが僕の固有能力、蒼月妖だ。僕の気持ちが暗くなればなる程周りを暗くして、僕の存在を認識できなくするんだ」
「はた迷惑な能力じゃのう」
「や、やっぱり僕みたいなミジンコじゃあ、こんなショボい能力がお似合いなんだ……」
「ミジンコと言われると、他人のような気がせんが……」
ルーネスがネガティブ発言をすると、またしても闇が辺りを覆って行く。
『いかん! また闇に隠れられたら厄介だ! どんどん褒めまくるんだ!』
(いや、斬りつけた後でそれは無理じゃろう⁉︎)
『何でもいいから、とにかくやるんだ!』
不本意ながらも、再びルーネスをわざとらしくおだてるノア。
「ま、まあ落ち着くんじゃ! こんな卑怯な手を使うたのは、お主の能力が強力過ぎたせいじゃ!」
ピクリと反応するルーネス。
「お主は間違いなく強い! じゃから強者らしく正々堂々戦おうではないか!」
ルーネスの闇のオーラが止まる。
「そ、そう? 僕って強いかなー? じゃあ真正面から戦ってあげちゃおうかなー?」
再びデレるルーネス。
(ヤレヤレ、単純な奴じゃわい)
漆黒の鎌を構えて向かって来るルーネス。
「あのエモノは中々厄介じゃのう」
『ノア! お前、剣は使った事あるか?』
(剣? 使うた事は無いが、余ほどの天才ならば貴様等冒険者の動きを真似るなど、容易い事。じゃがそもそも剣など無いではないか?)
それを聞いたウルが、ノアの肩から頭に移動して翼を大きく広げた。
『ホッホウ。ならば見せてやろう! これが俺の固有能力、武具……』
ウルが何かを言いかけた時、ニーナが自身の刀をノアに向かって投げる。
「ノアちゃん‼︎ 私の刀を使って‼︎」
パシッと受け取るノア。
『ホ⁉︎』
「お、おう! すまんのう、では使わせてもらうぞい!」
何かをやろうとしたウルが、ノアの頭の上で翼を広げたまま固まっていた。
「ん? ところで貴様は人の頭の上で何をやっとるんじゃ? 天日干しか?」
「クワアアアアー‼︎」
涙目のウルが、ウルズトルネードでノアの髪の毛をむしり取る。
「いだああああー‼︎ な、何じゃ⁉︎ 何故余は制裁を受けとるんじゃー⁉︎ 今回のは本当に意味が分からんぞおおー‼︎」




