第3話 七星魔天! なぜまてんじゃないよ
ナオの案内で山を捜索していると、前方の木陰に倒れている数人の人影を発見する。
「あそこに誰か居るぜ⁉︎」
「聞いてた特徴と人数も一致するわね」
「どうやら彼等で間違いないようですね」
「おーい‼︎ オメェら、大丈夫かー⁉︎」
遭難者達の元に走って行くクラフト。
「待って!」
クラフトに続いて駆け寄ろうとしたノア達を、両腕を広げて静止するニーナ。
「どうしたんですか? ニーナさん」
ひとり駆け寄るクラフトが、遭難者の5メートル手前まで近付いた時、突如クラフトの足下に魔方陣が現れ大爆発を起こす。
「うおおおおー⁉︎」
「爆裂陣⁉︎」
「やはり罠だったわね」
「クラフトの奴は⁉︎」
ノアがクラフトの身を案じていると、爆煙の中からクラフトが飛び出して来る。
「あっぶねー‼︎ 死ぬかと思ったぜ‼︎」
「チッ! よく生きてたわね?」
「今、チッて言ったー⁉︎ てかオイ、ニーナ‼︎ テメェ! 罠がある事分かってて俺様だけ先に行かせただろー⁉︎」
「あんたなら耐えられると思ったのよ」
「いや、絶対防御を使うのが一瞬遅かったら死んでたっつーの‼︎」
「生きてるんだからいいじゃない。それにほら、役に立ったからノアちゃんの写真あげるわよ」
そう言って、ノアが着替えてる時の写真を渡すニーナ。
「やったぜー‼︎ なら許す‼︎」
「いつの間に撮ったんじゃああ‼︎」
『だが、誰が何の為にこんな罠を?』
その疑問にノアが答える。
「うむ。これは魔族が人間をおびき寄せる時に、よく使う仕掛けじゃ」
「魔族ですって?」
「そうじゃ。ああやって目立つ場所に捕らえた人間を置き、助けに来た人間を罠にかけて殺し、魂を食らうのじゃ。もっとも、余はこんな姑息な罠など使った事は無いがの」
「そうですね。言われてみれば、ノアールの城には罠の類は全く無かったですね」
「つまり、魔王ノアールの軍に属さない、他の魔族の仕業って事ね?」
「おそらくはの」
「みんな! 周りを警戒しながら近付くわよ!」
警戒をしていたが、特に何事も無く遭難者達の元にたどり着いたノア達。
すぐさま状態を確認するニーナ。
「大丈夫。まだ生きてるわ。今治してあげるから、もうちょっと頑張んなさいよ! 《ヒール‼︎》」
治癒魔法をかけられた冒険者達が、程なくして目を覚ます。
「……あれ? 俺はどうなって……?」
「あなた達は?」
初めは虚ろな目をしていた冒険者達だったが、段々意識がハッキリして来ると、自分達を助けてくれたのが勇者パーティーのメンバーだと分かり驚く。
「あ、あなたはニーナ様⁉︎」
「それにクラフト様まで⁉︎ まさか、勇者パーティーのみなさんが私達を助けてくださったんですか⁉︎ あ、ありがとうございます‼︎」
冒険者達から感謝のオーラを受け、かなりのJPを獲得したノア達。
そんな中、気付いてもらえなかったナオとウルが哀しい顔をする。
(はあ……やはりこの姿では、自分は気付いてもらえませんか……)
「ホー」
「まあ、ナオはまだしも、貴様は絶対に気付かれんじゃろうな」
2人が哀しんでいると、助けた冒険者がいきなり何かを思い出したように警告を発する。
「ハッ! いけない! みなさん、早くお逃げください‼︎」
「何よ、いきなり⁉︎」
「自分達はバジリスクを討伐して帰還しようとしていた時、いきなり恐ろしく強い魔族に遭遇して、一瞬で倒されてこの様なんです! その魔族がまだ近くに居るかもしれません! だから早く逃げてください!」
「ハンッ! 何故余が、そんなどこの馬の骨とも知れん雑魚魔族を相手に逃げる必要があるのじゃ! 余は偉大なる大魔王にょあああー‼︎」
久々のウルズクローを食らい、座り込むノア。
「君……今、大魔王って言ったー?」
「にやあああー‼︎」
いきなり背後から聞こえた囁き声に驚き、飛び退くノア。
「び、び、び、びっくりしたあー‼︎ 何じゃ貴様は⁉︎ 何の気配も無くいきなり現れおって‼︎」
慌ててノアの前に立ち警戒するクラフト。
「何もされてねーか⁉︎ ノアちゃん!」
ノアという名前に反応する男。
「ねえ、今ノアって言った? 魔王ノアールと名前似てるけど、知り合い?」
言葉に抑揚も無く、暗く小さな声で気だるそうに話す男。
「この娘は見ての通り、普通の可愛い人間の女の子。魔王ノアールとは何の関係もありませんよ」
ナオがかばうように話すと、少し安堵した表情になる男。
「そっかー。ああ良かった……」
怪しさ爆発の男を問いただすクラフト。
「お前! 一体何もんだよ⁉︎ ノアールの事を気にするって事は、どこか他の街の冒険者か? 生憎だが、魔王ノアールは俺様達勇者ウルのパーティーによって既に倒されたぜ⁉︎」
それを聞いた男の雰囲気が少し変わる。
「へー、そっかー。魔王ノアールは倒されたのかー。でも君達って勇者パーティーだったんだねー?」
「みんな気を付けて‼︎」
その男から只ならぬ気配を感じたニーナが、更なる警戒を呼びかける。
「何だテメェ! 敵か⁉︎」
だが、クラフトの言葉を無視して、ダルそうに話す男。
「あーあ。知らなかったら何もしないで帰れたのになー。めんどくさいなー」
「ルーネス様!」
ルーネスと呼ばれたその男の右側に別の男が、左側に女が跪いた格好で現れる。
「何だあいつら⁉︎」
「ラパン。サテラ。仕方ない、あいつら倒すよー」
しかし2人の男女が駄々をこね始める。
「ええー、やるんですかー?」
「ちょーめんどくさいんですけどー?」
「しょうがないでしょー? 勇者パーティーと出会っちゃったんだからー、何もしないで帰ったらディア様に怒られちゃうよー?」
「バレなきゃいいんですよー」
「そーよそーよ、疲れるからやめよーよ!」
そんな3人のやり取りをじっと見つめていたクラフトが、ついに痺れを切らして怒り出す。
「オイテメェら‼︎ さっきから何回も何回も何もんだって聞いてんだろーが‼︎ さっさと答えやがれ‼︎」
「もう、うるさいなー。じゃあ自己紹介するよー。僕はルーネス。大魔王ディア様配下の最高幹部、七星魔天のひとりルーネスだ。んで、これがラパンでこれがサテラねー」
「「これゆーな!」」
大魔王と聞いて驚くノア達。
「大魔王ディアじゃと⁉︎」
『ではやはり、こいつらが冒険者を襲った魔族か?』
「ディアだってよ、知ってるか?」
「聞いた事の無い名前ですね」
「私もよ。ウルは?」
「ホウ!」
首を横に降るウル。
「ええー、知らないのー? 意外と大した事ないんだなー、ディア様も……」
「ああー、ディア様に言ってやろー!」
「ええー⁉︎ やめてよもう。逃げるのめんどくさいんだからー」
「何なんじゃ? こ奴らのこの緊張感の無さは?」
「じゃあ覚えておくといいよー。これから魔王ノアールに変わって世界を支配する大魔王、ディア・ボス・ティー二の名をね!」
「大魔王ディア・ボス・ティー二? 何だかどこぞの週刊雑誌みたいな名前じゃのう」
デアゴスティーニとは関係ございません。




