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第14話 定番だけど裏切ります

 ノアが魔王ノアールである事がバレたが、とりあえずは様子を見るということで和解した。


 そして、ようやくウルに興味を示すクラフト。


「しっかしこのフクロウがウルの変わり果てた姿とはなぁ」


 ウルにじっと顔を近付けるクラフト。


「ホ、ホウ……」


 クラフトの圧にたじろぐウル。


「ノアちゃんにだけはウルの言葉が分かるんだよな?」


「そうじゃ」


「今は、何て言ってるんだ?」


 ウルに目線をやるノア。


「暑苦しい顔を近付けるな、このロリコン筋肉バカ! だそうじゃ」


「ハハハハー‼︎ その物言い、確かにウルに間違いねぇぜ! でもよー。ナオもそうだが、これって元の姿に戻れんのか? ノアちゃんやナオはむしろ今のままが良いけどよー、さすがにウルは一生このままってのはちょっと可哀想だろー?」


「自分はこのままが良いとはどういう意味ですかっ!」


 再びウルの通訳をするノア。


「俺はそもそも命を捨てる覚悟で最後の戦いに臨んだのだから、別にこのままでもいい。だそうじゃ」


「ふーん?」


 何かを勘ぐるような目で、ウルを見つめるクラフト。

 

「ホ、ホー?」


「お前、もしかして……その姿のままならずっとノアちゃんにくっ付いていられるから、そのままで良いなんて言ってんじゃねぇのかぁ?」


「クワッ⁉︎ クワアアアアー‼︎」


 怒ったウルがクラフトの額をつつきまくる。


「痛っ‼︎ 痛たたたた‼︎ 冗談‼︎ 冗談だってばよー‼︎」


 ウルズストライクが炸裂した所で、とりあえずの行動を決めるナオ達。


「さて、自分達の姿については追い追い考えるとして、どうしますか? 一応クエストは受けていますし、せっかくですからこなして行きますか?」


「そうだな。このまま手ぶらで帰るのも勿体ないし、軽くやって行くか!」


「そうか。では余は帰るから頑張っての」


 さりげなく帰ろうとするノアの首根っこを掴むクラフトとナオ。


「何言ってんだよ⁉︎ せっかくのクエストなんだ、一緒に行こうぜ⁉︎」


「あなたを監視すると言ったでしょう? 逃がしませんよ」


「今はか弱い乙女なんじゃ! 見逃してくれー!」


『お前が魔王ノアールだと知られた以上、彼らから逃げる事は出来ない。諦めろ」


 2人に引きずられながら洞窟に入って行くノア。


 高さ5メートル程の通路を歩いていると、前方にピンク色のノア達の身長にも匹敵する巨大なスライムが現れる。


「何だありゃ⁉︎ スライム、か?」


「しかし、あんな巨大なスライムは見た事ありませんよ?」


 そのスライムの正体をノアが告げる。


「あれはメルトスライムじゃ」


「メルトスライム? そんなスライム、聞いた事ねーぜ⁉︎」


「まあ、滅多に姿を現さんレアな奴じゃからな」


「強いのですか?」


「いや、別に強くは無いのじゃが……」


「なんでぇ! 強くねぇなら、俺様がちょっくら行って倒して来るぜ!」


「あっ! 待つのじゃ!」


 ノアが引き止めようとした時には、既にクラフトの拳がメルトスライムのぷよぷよボディに突き刺さっていた。

 しかしメルトスライムは消滅する事無く、逆にクラフトの右腕の衣服がボロボロに朽ち果ててしまう。


「うおっ⁉︎ 何だこいつ⁉︎」


 慌てて右腕を引っこ抜き、ノア達の所まで後退するクラフト。


『ノア。まさかあのスライムは?』


「そうじゃ。察しの通り、奴は別名エロスライムと呼ばれておってな。身体に触れた武器や衣装のみを溶かしてしまうのじゃ」


「なーにー⁉︎」


「はあ……定番ですね」


 腕を組み、考えるクラフト。


「衣服のみを溶かすだって? ならば!」


 エロスライムの攻略法を思い付いたのかと思いきや、ノアとナオの背後に回り、2人を押すクラフト。


「貴様、何をしておるのじゃ?」


「あなたまさか、自分達を生け贄にしようとか思ってないですよね?」


「いやー、ここはやはり定石通り、サービスタイムかな? と」


「貴様が食われてこーい‼︎」

「あなたが食われて来なさい‼︎」


「ぐはああーっ‼︎」


 ノアとナオにぶっ飛ばされて、エロスライムの上に落下するクラフト。


「くっ! 男の裸なんか誰も期待してねえっての! 絶対防御‼︎」


 固有能力である絶対防御を使った事により、エロスライムに吸収される事無く上から押し潰すような形になり、消滅するエロスライム。


『ホー。あのバカ、またこんなくだらない事でJPを無駄使いして……』


 同じくナオも呆れていた。


「全くあなたという人は、何故そう簡単に固有能力を使うのですか⁉︎ そんなだからノアールとの決戦の時も、肝心な所でJPが不足して使えなかったのを、もう忘れたのですか?」


「いや、今のはお前達が俺様を犠牲にしようとしたからだろー⁉︎」


「それはそもそもあなたが、いやらしい事を考えたせいでしょう?」


「あんな特殊なスライム見たら、ロリコンなら誰だって期待するだろー?」


「分かりますが、少女になった今の自分だと、あなたの気持ち悪さがよく分かりますよ!」


「なんでぇ! ちょっと自分が運良く可愛い少女になったからって、女の子ぶりやがって! 俺様だってリジェレーション浴びたら可愛い娘になれるっての!」


「あなたなんか行き過ぎて、メダカにでもなればいいんです! そしたら水槽で飼ってあげますよ!」


「なにおおおっ! せめて小動物じゃないとお前の身体に触れねぇじゃねーか⁉︎」


「こ、このバカ‼︎ 変態‼︎」


「変態じゃねえ! ロリコンだ‼︎」



 低レベルな言い争いをしている2人を、哀しげな表情で見つめているノア。


「余は、こんなバカどもに負けたのかと思うと、自分が情けなくなるわい……」


『安心しろ、俺もだ……』







初音ミクとは関係ございません。

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