第13話 ノアとナオって似てるから間違えそう
未だに理解していない様子のクラフトに、改めて事の顛末を説明するナオ。
「まあこの姿で言うのもなんですが、自分は正真正銘の男です。いや、男だったと言うべきでしょうか?」
ナオに戦闘の意志は無いと判断したノアも、クラフトと並んで体育座りをしてナオの説明を聞いている。
「魔王ノアールとの最終決戦の時、戦闘不能になった自分達は次々に転移魔法で街へ帰還しましたね?」
「ああ。ウルとノアールの戦いを最後まで見られなかったのが悔やまれるぜ!」
「自分はみなさんの離脱を援護していたので、結果的に離脱するのが一番最後になってしまいました。そして、自分の転移魔法とウルのリジェネレーションが、ほぼ同じタイミングで発動したのです」
『ホー。最後は俺もギリギリの状態だったので、仲間達の事まで気が回らなかったからな』
「あの時は紙一重で離脱に成功したと思っていたんですが、どうやらほんの少しだけ影響を受けてしまったようで、結果この姿という訳です」
『浴びたのが一瞬だったので、辛うじて人間のままでいられたんだな。良かった』
(貴様は哀れな鳥畜生になったがなあああーい!)
話の邪魔をしないように、必死にウルズクローの激痛に耐えているノア。
(しかし、浴びたのが少しだからといってそう都合良く少女の姿になるもんかのう? 余だってまさかのこんな可愛らしい姿じゃし)
『ホウ? 何が言いたい?』
(貴様のリジェネレーションとやら、もしかして貴様の趣味で、生物をみんな少女に変える魔法なんじゃないのかああああー痛あああー!)
『だったらぁ、俺も少女の姿になってる筈だよなああー!』
ノアの肩に爪を食い込ませて 、身体をウネウネと揺する。《ウルズツイスター》の誕生である。
(いだあああー‼︎ ごもっともですうううー‼︎)
「なら! 何でもっと早く教えてくれなかったんだ? あんなコソコソ出たり消えたりしてよぉ!」
(ゴキブリかっ!)
「自分の変身能力には時間制限があるのは知っているでしょう? まだ万全では無いので、あまり長くは変身していられないのです。それに、あなたの前に弱った状態でこんな可愛い姿を晒したら、何をされるか分かりませんからね」
「……しねーよ!」
「何ですか、今の間は?」
「まあ、お前がリジェネレーションの影響で女になっちまったってのは分かった。でも何でノアちゃんを追いかけ回すんだよ?」
「ハアッ?」
呆れ顔で頭を抱えるナオ。
「自分はてっきり、彼女の正体を知った上で付きまとっているものだとばかり思っていましたよ」
「お、俺様はただ単純にノアちゃんが可愛かったから、側で見守っていたいなーって思っただけだぜ?」
「ならば、そんなおバカなあなたに教えてあげましょう!」
そおっと逃げようとするノア。
「そこっ‼︎ 逃げるんじゃありません‼︎」
「ハイイっ!」
直立姿勢で固まるノア。
「その少女ノアは……自分と同じように、リジェネレーションの影響により人間の少女の姿になった、魔王ノアールです‼︎」
「なああああにいいいいいいー‼︎」
「因みに肩に乗ってるフクロウはウルです」
「マジか?」
『オイ! 俺へのリアクションが軽過ぎるぞ⁉︎』
衝撃の事実に、固まったまま何やらブツブツ言っているクラフト。
「ノアちゃんが魔王ノアール……こんなに可愛い娘があのノアール……めちゃくちゃ俺様のタイプで運命すら感じた娘がノアール……ついでにウルがフクロウに?」
『ついでゆーな‼︎』
「じゃあつまり、お前はノアちゃんがノアールだと知っててこんな森の中に連れ込んで倒そうとしたってのか?」
フウッとため息をつくナオ。
「確かにそれを知っていた自分は、目覚めた時ノアールを探し出して仕留めようと思いました。しかし彼女は、さらわれた少女を助ける為に単身猛堕将のアジトに乗り込み、これを壊滅させました」
「「そうだそうだ!」」
ノアとクラフトが同じ様に相槌を打つ。
「ならば直接彼女の本質を見極めようと、この森に誘い込みカマをかけてみました。しかし彼女は自分と戦おうとせずに、逃亡しました」
(それは単に、ミジンコになりたくなかっただけじゃ)
「彼女のそれらの言動、そしてウルが側に付いて見守っている事を考えると、彼女はもう危険な存在では無いように思います」
「当たり前だろー? いくら元魔王でも、今は可愛い女の子なんだ! いくらお前がノアちゃんを殺そうとしても、俺様は絶対にノアちゃんを守ってみせるぜ! ついでにウルもな!」
『だから、ついでゆーな‼︎』
「お主……」
クラフトの男前なセリフに、警戒心が和らぐのを感じるノア。
「ズ、ズルイですよクラフト! 自分だって別に好き好んでノアさんを殺そうだなんて思っていません! むしろ戦わずに済んでホッとしているのです。それに何より、自分もノアさんの見た目は最高に好みですからね!」
それを聞いたクラフトの顔が途端に緩む。
「だよなー! ノアちゃん可愛いよなー! これはもう、神が起こした奇跡だよなー!」
「なー!」
そんな2人のやり取りを、冷ややかな目で見ているノア。
「ダメじゃ、こ奴ら。あまりに残念過ぎる……」
そして、何気に凹んでいるウル。
『俺への関心、低くないか?』
クールポコとは関係ございません。