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第8話 そのフクロウ、獰猛です

 目を回していたウルがハッと目覚めチカの無事を確認すると、すぐさまチカを守るように頭の上に乗っかる。


「ウルちゃん?」


 しかし徐々に、ノアにされた仕打ちに対して怒りが込み上げて来たウルが、チカの頭の上で激しく暴れ出した。


「クククククワアアッ‼︎ キエエエー‼︎ ホオオオオオー‼︎」


「ウ、ウルちゃん! 怒るのは分かるけど、落ち着いて‼︎」


 だが、ノアと離れ過ぎているせいか、ウルの言葉はノアには聞こえなかった。


「ハッ! 何を言うとるのか分からんわ。貴様はそこでその小娘を守っておれ」


「ホッ⁉︎ ホオオオオー」


 ノアに言葉が伝わっていない事を悟ったウルが、諦めて大人しくなる。


「ウルちゃんを投げるなんて、ノアお姉ちゃんちょっと酷いと思ったけど、でもおかげで助かったよ。ありがと! ウルちゃん。ノアお姉ちゃん」


 ノアとウルの身体が光に包まれた。


(ウルの奴をぶん投げたからJPが空になるのを覚悟しておったが、どうやら思惑通り少しは回復したようじゃの?)


 チカを救出した事により勝利を確信したノアが、スランプに降伏を勧める。


「これで人質は居なくなったぞ。さあどうするのじゃ? このまま大人しく降伏するなら、これ以上痛い目に合わずに済むぞい?」


「ケッ! バカが! そんな鳥畜生に何が出来るってんだ? テメェら! その鳥を捕まえて焼き鳥にしちまえ!」


「ヘイ!」


 手下達が再びチカを人質にしようと、近付いて行く。


「クワアアーッ‼︎」


 しかしウルが雄叫びを上げた瞬間雷が落ち、手下達を黒こげにする。


「ギャアアアア‼︎」


「な、何でフクロウが魔法を……ガクッ」


 殺さず気絶させる程度に、威力は抑えられていた。

 驚くスランプが、更に指示を出す。


「何だこの鳥⁉︎ クッ、近付かずに離れて攻撃しろ!」


 言われた通りに、遠距離魔法で攻撃する手下達。


「キャッ‼︎」


 頭を抱えてうずくまるチカ。


「クワッ!」


 ウルが翼を広げると、チカの前に魔法陣が現れ、放たれた魔法弾が次々とその魔法陣の中に消えて行った。


「何だと⁉︎」


「ホー、ホー、ホー」


 左右に広げた翼を正面で合わせて、何かをこねるような動きをするウル。


「クワーッ‼︎」


 そして翼を正面に向けて広げると、魔法陣から先程吸収した魔法弾が次々に飛び出し、放った相手に返って行った。


「ぐわあっ!」


「ぐはっ!」


 ウルの技に、開いた口が塞がらないスランプであった。


「バ、バカな⁉︎ 魔法を吸収して跳ね返した、だと? そんな技、一流の冒険者でもそう出来る奴は居ない。それをこんな鳥が? な、何なんだこいつは⁉︎」


 当然と言った表情のノア。


(そりゃそうじゃろう。何しろそ奴は、全冒険者の中で最上位と言ってもいい勇者ウルなんじゃからのう。憐れなナリになったとはいえ、それぐらいの芸当は出来るじゃろう)


「ウルちゃん凄〜い‼︎ 本物の勇者様みたい‼︎」


「ホッホー」


 エヘンと言った感じで翼を腰に当て、どや顔をするウル。


 狼狽するスランプに、改めて降伏勧告をするノア。


「どうじゃ? これで分かったじゃろ? その凶悪猛禽類が小娘の側に行った時点で、貴様の敗北は決定したんじゃよ」


 しばらくうなだれていたスランプだったが突如顔を上げ、椅子の後ろより剣を取り出す。


「ハッハー‼︎ 確かに人質は諦めるしかなさそうだが、このまま大人しく捕まる気も無い‼︎」


「はあ、まだやる気かの? これ以上JPを消耗したくないんじゃがのう」


「ホッ⁉︎ クワワ? クワー‼︎」


 だが、何かに気付いたウルがノアに知らせようと、必死に翼でジェスチャーをする。


「いや、分からんて……」


 しかしノアには、ウルがただ踊っているようにしか見えなかった。


「死ね‼︎ ガキ‼︎」


 ノアに向かい、剣を振り下ろすスランプ。


(ストレングスはまだ効いておる。ならばこの剣を受け流してカウンターを入れれば終いじゃ!)


 両腕を交差させて、剣を受けようとするノア。


「クワアアアアー‼︎」


「⁉︎」


 ウルの雄叫びが響く中、何か嫌な予感がしたノアが咄嗟に剣を受けるのをやめ、後ろに下がった。

 ノアが居た空間に、剣が振り下ろされる。


「ヘッ! いい感してるじゃねぇか」


 スランプがニヤリと笑うと、ノアの胸元が裂け、真っ赤な血が噴き出した。


「クワアアアア‼︎」


「ノアお姉ちゃん‼︎」


「クッ」


 すぐさま治癒魔法をかけ、どうにか傷口が塞がったノア。

 

「何故じゃ? 肉体強化魔法をかけとるんじゃ。その程度のナマクラ、防げん筈が……」


 疑問に思うノアに、得意げに種明かしをしてくれるスランプ。


「ハッハー! 勇者ウルのパーティーで、今まともに動けるのは武闘家のクラフトだけらしいからな。だからクラフトが来る事を想定して、この剣には対クラフト用に肉体強化系の魔法のみを無効にする魔術が施されているのだー‼︎」


 だがスランプの説明に、呆れた表情になるノアとウル。


「いや、それって……」


 スランプが得意げに剣を振り上げたその時、どこからか飛んで来た魔法弾が、スランプの剣を粉々に撃ち砕いた。


「なあにいいーっ⁉︎」


 その隙を見逃さず、あっという間に距離を詰めてスランプをぶっ飛ばすノア。


「ぐはあっ‼︎ この剣、高かったの……に……」


「貴様、バカじゃろ?」


 大の字に倒れるスランプ。


「さて……」


 謎の魔法弾が飛んで来た方向に身構えるノア。


「肉体強化系の魔法のみを無効にするのなら、それ以外の魔法なら通用する。単純な理屈ですね」


 そこへ現れたのは推定年齢16歳程の、金髪でロングヘアーの美少女だった。


「何じゃお主は? こやつらの仲間、という訳では無さそうじゃが?」


「フフッ」


 何故かその少女は、ウルをじっと見つめていた。

 そして、誰にも聞こえないような小さな声でポツリと呟く。


「生きていたんですね。良かった……」


「オイ貴様! 何者かと聞いておろうが!」


 今度はノアをじっと見つめる少女。


「な、何じゃ?」


「フフッ、いいえ。あなたが余りに可愛いかったので、つい見とれてしまいました」


 そう言って優しく笑う少女。


「ヒッ!」


 少女の言葉に、クラフトと似たものを感じたノアが警戒する。


「き、貴様! まさか貴様もロリコンか⁉︎」


「も?」


 色んな意味で身の危険を感じたノアが、ウルにアイコンタクトを送る。


(オイ、ウル! 余は見覚え無いが、ロリコンという事はこやつも貴様のパーティーメンバーか?)


 ノアの言いたい事を感じ取ったのか、ブンブンと激しく首を横に降るウル。


 



浮竹隊長とは関係ございません。

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