第43話 やっぱり最後は大団円
事情を全て話し、顔を真っ赤にしてうつむく大魔王ルイ。
「うん。よく言えたね、父さん。後は私が……つまりはそんな事があって、戦闘中におもらしした自分が情けなくなって、こんなんじゃ王は続けられないって思い込んじゃって、それでジアお姉ちゃんに魔王の座を譲ろうとしたって訳」
それを聞いて呆れるジア。
「ええっと……ハアッ! 情けない!」
「だ、だから王位を譲ろうと!」
「違うわよ! そりゃあ漏らしたのも情けないけど、そんなのあたしだって龍双連武使う度に吐いてるし、おあいこよ!」
「お前は上だからまだ良いが我は下だぞ⁉︎」
「だから! 上だろうが下だろうが、そんな事は大した問題じゃ無いのよ!」
「なんだと⁉︎」
「あたしが情けないって言ったのは、そんなくだらない理由で王位を譲ろうとした事よ!」
「く、くだらないだと⁉︎ 王である我がお漏らしをしたんだぞ?」
「そんなもん、子供の頃には誰だってするわよ!」
「我は立派な大人ぞ!」
「どこが立派な大人よ? そんな理由で無責任に王位を譲ろうとしたり、あたし達が人間界に行こうとしたら駄々をこねたり、十分子供よ!」
「ウグゥ」
「とにかく! 父上が引退するにはまだ早いし、そんな理由なら尚更認められません! そりゃああたしだっていずれはここに帰って来て王位を継ぐかもしれないけど、今はまだ自由でいさせて……お願い!」
「むう……分かった……今はまだ時期尚早という事だな? ならばディア、そしてノアよ、お前達は今一度人間界へ行き、更なる力を付けるのだ」
「「ハイ」」
「で、でもたまには顔を見せに帰って来てね?」
「分かってるわよ」
「ゲートが繋がるなら、いつでも会いに来れるからね」
「勇者ウルよ。そして異界の戦士アイ君よ。どうか娘達をよろしく頼む」
「ああ、任せてほしい」
「うむ……ジアは私が必ず守ってみせる」
「ん。話はついたみたいだからゲート繋げるね〜」
「よろしく頼む」
そしてユーキによりウル達の世界、ユーキ達の世界、そしてこの魔界をそれぞれ自由に行き来出来るようにゲートが繋げられた。
一段落ついたので、変身を解こうとするノア。
「うん。何とか丸くおさまったから、私も帰るね。ウル! こっちのノアちゃんをどうかよろしくね」
「ああ! ノアは俺が責任をもって面倒を見る」
「うん。それじゃあみんな、バイバーイ!」
そうして召喚されたノアは、元のノアに戻った。
「ん? 終わった、か?」
「ああ、全て上手くいった。ノア、お前のおかげだ」
「そ、そうか? あまりちゃんとは覚えておらぬが、上手く行ったのなら良しとするかの」
「それじゃあ父上……行って来ます」
「ば、晩御飯までには帰って来るんだぞ〜」
「お出かけかっ!」
そうして、城の外に居たパティ達と合流した後、一旦全員でウル達の世界に移動したノア達。
少しの話し合いがあり、ノアはウル達と共に、そしてジアはアイバーンと共に帰る事になった。
そして、とりあえずの別れの時が来た。
「んじゃあ僕達は帰るね」
ユーキ達に礼を言うウル。
「ユーキさん。そしてみなさん。助けて頂き本当にありがとうございました。みなさんの助力があったおかげで、こうしてノアを連れ戻せたし、俺も人間に戻る事が出来ました」
「良いの良いの! こっちはこっちでジアちゃんを連れ戻すって目的があったしさ。ジアちゃんはせっかく再会したノアちゃんとまた離れ離れになっちゃうけど、ゲートが繋がってるからまたいつでも遊びにおいでよ!」
「ハイ! 是非!」
「それじゃあね〜!」
大団円になりかけた時、突如としてナオがユーキを引き止める。
「あ! ユーキさん! ちょっと待ってくださいよ!」
「ん? どしたの? ナオちゃん」
「いや、自分はまだ元の姿に戻してもらって無いですよ!」
「え⁉︎ 元の姿って……ちゃんとドラゴンから可愛い女の子に戻ってるじゃない?」
「イヤイヤイヤ! 自分は男ですから! この少女の姿はウルのリジェネレーションの影響を少し受けたせいですから!」
「え、そうなの? 全然違和感無かったから普通に女の子とばかり……それじゃあ……」
ユーキがナオに魔法無効化の結界を張ろうとすると、ナオの背後でウル達勇者パーティーのみんなが、手を合わせて懇願する様に首を横にブンブンと振っていた。
「ん〜⁉︎」
ウル達の意図を察したユーキが、ナオの肩に手を置く。
「ああ〜。えっとぉ、うん。ナ、ナオちゃん? 自分が女である事を受け入れたら、案外気持ちが楽になるよ」
「え⁉︎ いや何の話ですか? 受け入れるも何も、自分は男なんですって!」
「ま、まあせっかくそんな可愛くなれたんだから、もっと女の子の自分を楽しんだら〜? じゃあね〜!」
逃げるようにゲートに入って行くユーキ達。
「ええ⁉︎ ち、ちょっと待ってくださいよ! この魔法を解いてくださいって〜!」
「女の子に飽きたら、いつでもおいで〜!」
そしてユーキ達BL隊は、自分達の世界へ帰って行った。
「そ、そんな……」
落胆するナオの背後で、無音でガッツポーズをするウル達に気付いたナオ。
「も、もしかしてあなた達が何か言ったんですか〜⁉︎」
怒り心頭のナオがウル達を追いかけ回す。
「そのままの方が可愛いんだから良いじゃねぇか〜!」
「男が可愛くてどうするんですか⁉︎」
「男になりたかったらまたメイド喫茶で、JP稼げば良いじゃないの〜!」
「JPなんて設定、誰も覚えてませんよ!」
「フクロウよりはマシだろう?」
「じゃあウルも女の子になってくださいよ!」
「女である自分を受け入れるんじゃ!」
「だから自分は男なんですってば〜!」
その後も何度かユーキの元に行こうとしたナオだったが、ことごとくウル達の妨害に合い、殆ど諦めたナオは徐々に少女の姿を受け入れるようになっていった。
「イヤ、受け入れてませんから〜!」