第39話 強過ぎるキャラは使い所に困るね
ナオの氷魔法により足が床に固定された大魔王ルイ。
「こんなもの!」
氷を叩き割ろうとする大魔王ルイ。
「させないよ!」
「何っ⁉︎」
いつの間にか間合いに入っていたノアが、しゃがんだ体勢から飛び上がりながら大魔王ルイを斬りつける。
「グアア! お、おのれ! いくら娘とはいえ容赦せんぞ!」
飛び上がった状態のノアの足を掴もうとする大魔王ルイ。
「ノアちゃんをいじめたら許さないよ! ガアアアアー!」
ジアが龍鳴風烈を放ちノアを援護する。
「グウッ!」
ジアの咆哮によりノアを手放してしまう大魔王ルイ。
その間に間合いに入っていたウルとニーナが同時に大魔王ルイを斬りつける。
「グハァッ!」
ノア達の連撃によろける大魔王ルイ。
「ち、調子に乗るなぁー!」
ニーナを剣で斬りつける大魔王ルイ。
『絶対防御!』
先程投げ飛ばされたクラフトがニーナの前に立ち、固有能力で防御する。
「おのれ!」
「こっちだよー!」
「何っ⁉︎」
先程飛び上がったノアがようやく落下して来て、着地ぎわに再び大魔王ルイを斬りつける。
「グアアアア!」
そのまま倒れ込む大魔王ルイ。
「やったか⁉︎」
「あーあ。それ言っちゃったら絶対起きあがって来ますよ〜」
「定番よね」
ナオの言った通り、ダメージは負ったものの立ち上がって来る大魔王ルイ。
そんな大魔王ルイに声をかけるジア。
「父上! もうやめませんか? あたし達は別に父上を倒したい訳じゃ無いんです! ただあたし達を行かせてくれれば……」
「寝ぼけた事をぬかすな!」
どこからか500ミリサイズのペットボトルのようなものを取り出し、中に入った謎の赤い液体を飲み始めた大魔王ルイ。
「何あれ? 紅茶?」
ニーナの疑問にジアが答える。
「ルイボスティーよ。父上が好んでよく飲んでるわ」
「名前が似てるからか⁉︎」
「お前達は魔族で、この大魔王ルイの娘だ。確かに子供の頃は修行の為に人間界に送ったが、時が満ちた今、何故再び人間界に行かせる必要がある? ディアは我に変わり大魔王となりこの魔界を統治し、ノアはそれを助ける。お前達の道はそれ以外に無い!」
「勝手な事言わないで! そりゃああたしも一度はその運命を受け入れようとしたけど、こんな所にまでアイ君達が助けに来てくれて、戦ってアイ君の本心を知って、あたしの気持ちは完全に変わったわ! だからもう父上の言いなりにはなりません!」
ジアの言葉を聞き、怒り心頭の大魔王ルイ。
「ぐぬぬぬ、おのれー! どいつだ? 娘をたぶらかせたそのアイ君とやらはどいつだ?」
「アイ君、あの人何かアイ君探してるっぽいよ?」
「ぬ? では一応応えてみるか?」
能天気なユーキの言葉に、同じく能天気に手を挙げるアイバーン。
それを見て驚くジア。
「えっ⁉︎ ち、ちょっとアイ君? 何、能天気に手を挙げてんのよ?」
「貴様かあああー‼︎」
ジアの言葉でアイバーンを見つけた大魔王ルイが、アイバーン目がけて巨大な闇の球を放つ。
「ああ、アイ君ゴメン!」
だが闇の球はアイバーンの手前で弾けて消滅した。
ユーキが一瞬で張った魔法陣によるものである。
「んもう! 危ないな〜! 僕達はただ見学してるだけなんだから、仕掛けて来ないでよね〜!」
「済まないユーキ君、助かった」
「いやぁ。僕が余計なこと言っちゃったから、ゴメンね」
全く気にかけないユーキに反して、何故か怒りながらユーキ達の前に出るカオス。
「よお、シリス! 俺達に攻撃するたぁ、随分舐めたマネしてくれるじゃねぇか!」
「何だと? 貴様! 何故その名を……」
カオスをジッと見ていた大魔王ルイが驚きの声をあげる。
「き、貴様はまさか! アビスかっ⁉︎」
「ケッ! やっと気付きやがったか」
「貴様! 何故こんな所に居る⁉︎ ここは我の創った世界ぞ!」
状況が飲み込めないユーキが小声でカオスに訊ねる。
「ねえカオス、あの人知り合い?」
「ん? ああ、アイツはシリス。俺達と同じ神だ」
「ふぇっ! そうなんだ?」
「なん……だと? ではジアは、神の娘、という事になるのか? どおりで昔から戦闘センスがある訳だ……」
「カオス貴様! 何をしに来た⁉︎ まさか我の世界を乗っ取ろうと言うのではあるまいな⁉︎」
「馬鹿野郎が。こんな世界、興味無ぇよ。俺はただ退屈凌ぎについて来ただけだ。だが、もし俺達に仕掛けて来るってんなら、俺も黙って無ぇぜ?」
「ぐぬぅ。い、今は貴様と遊んでいる暇は無い。そこで黙って見ているがいい! そしてノアよ! ちゃんと分かっているぞ!」
「バレちゃった!」
コッソリと大魔王ルイの背後を取ろうとしていたノアだったが、あっさり見破られた。