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第6話 敵は、左肩にあり

 ウルの案内で、街外れの大きな屋敷にやって来たノア。


「ここにその、打点王とやらがおるのか?」


『猛堕将だ! 奴らはこそこそ隠れたりはしない。身代金目的ならば以前と同じく、このアジトに居る筈だ』


「わざわざ目立つ場所に居るとは、バカな連中じゃのう」


『お前達魔王だって、ずっと同じ居城に居るではないか?』


「ハッ! 人間共に居場所を知られたからと言って、何の問題も無いからの」


『つまりはそういう事だよ。奴らは俺達冒険者を舐めきっているんだ』


「ほおー。ならば、この余を敵に回す恐怖を、思い知らせてくれようぞ」


『見た目には恐怖のカケラも無いがな』


「貴様もじゃろ!」


 物陰に隠れたりする事無く、堂々と正面からゆっくりと歩いて門をくぐるノア。


『オイ。作戦はあるのか?』


(正面突破じゃ)


『考え無しかっ⁉︎ まあ、これだけJPがあれば心配無いとは思うが、くれぐれも人質が居る事を忘れるんじゃないぞ?』


(心配いらんわい。とっくにソナーで小娘の位置は把握しとるわい)


『ホォ』


 1JP消費。

 ノアの残りJP、94。


 屋敷の入り口の前で見張りをしていた2人の男が、ノアに近付いて来る。


「何だガキ⁉︎ ここはテメェみてぇなガキの来るとこじゃねえ!」


「痛い目に合いたくなけりゃ、さっさと帰れ!」


「ハッ! いかにも小者が言いそうなセリフじゃのう?」


「何だとこのガキ!」


「捕まえてロリコンに売り飛ばしてやる!」


「ゔぇ。昨日の変態を思い出したではないか。貴様等雑魚に魔法を使うのは勿体ないんじゃ。さっさと誘拐した娘を連れて来い。そうすれば命だけは助けてやるぞい?」


 ノアの挑発に怒った門番が、剣を抜く。


「売るのはやめだ! ぶっ殺す‼︎」


 ノアに斬りかかる2人の男。


「はあ……せっかく余が情けをかけてやろうと言うのに、何故かかって来るかのう?」


『いや、お前が散々挑発したからだろう』


「死ね! ガキ!」


 先の男が振り下ろした剣を、身体を回転させてかわすと同時に、男の後頭部に手刀を当てて気絶させるノア。


「ガハッ!」


「テメェ!」


 後の男が横に剣を薙ぎ払うと、フワリと飛んでそのまま前方に回転しながらかかと落としを食らわせるノア。


「グフッ!」


 一瞬にして門番2人を倒したノアが、またゆっくりと屋敷の中に入って行く。


「魔法を使わないとは言っても乙女の柔肌じゃ。当然肉体強化魔法は使うとるがの」


『詐欺だな』


「駆け引きと言わんかい。それに、複数の雑魚を相手にするなら、単発で魔法を撃つよりこの方が効率がいいんじゃ」


『ホウ。人質さえ無事なら、何だっていいさ』


 残りJPは92。

 状況をみんなに知らせる為、影から見ていた数人の冒険者達が、ノアの強さに驚いていた。


「凄い! 門番2人をあっさり倒した!」


「あの娘、本当に強いぞ!」


 中に入ると、広いロビーに大勢の男達が居た。


「何だこいつ?」


「門番が中に入れたって事は、関係者じゃねぇのか?」


「ハハッ、もしかして誰かの子供か?」


 ノアの容姿を見て、まさか人質を取り返しに来たとは微塵も思っていない男達が、油断しまくっていた。


「愚か者共。人を見かけで判断するなど、だから貴様等は三流なんじゃ」


「何だとこのガキ!」


「まさかこいつ、冒険者か⁉︎」


 ようやく戦闘体勢をとる男達。


「構えるのが遅いわ!」


 ノアを中心にしてロビーに居る男達全員に、糸の様な物が床を伝い繋がっていた。

 男達はその糸に絡めとられたように身動き出来ずにいる。


「な、何だこりゃ⁉︎」


「う、動けねぇ!」


「こいつがやったのか⁉︎」


「スパイダーネットじゃ。貴様等が油断しとる間に、仕掛けさせてもらったぞい」


 5JP消費。


「オイ! 遠距離魔法が使える奴はあのガキを撃て!」


「オウッ!」


 数人の男が魔法を撃とうと構えた瞬間、糸を伝い男達全員に電撃が走る。


「ギャアアア‼︎」


「ぐわあああ‼︎」


「いちいち行動が遅いんじゃよ。余の糸に捕まった瞬間に、貴様等の敗北は決まっておったのじゃ」


 3JP消費。

 ストレングスの消費分も差し引いて、残りJPは82となった。


「こやつ等が余りに隙だらけじゃったから、つい魔法を使ってしもうたではないか」


『まとめて倒せたんだからいいじゃないか』


「それはそうじゃが、節約して行かんとな」


 そんなノアが、ふと疑問に思いウルに質問する。


「そういえばウルよ?」


『ホッ? 何だ?』


「さっきあやつ等、魔法を撃てとか何とか言うとったよな?」


『言ってたな』


「貴様確か、魔法を使うには正のオーラを魔力に変換すると言うとったよな?」


『言ったな』


「ならば、こんな悪事を働くあやつ等は、どうやってJPを溜めとるんじゃ? 人に感謝されるような事をしとるとは、到底思えんのじゃが?」


『ホウ。結論から言うとJPを集める方法は、感謝のオーラだけではない』


「な、何じゃと⁉︎ 他にどんな方法があると言うんじゃ?」


『その方法は……」


「その方法は?」


『……お前が人助けをしなくなるから言わんっ!』


「何じゃと⁉︎ この性悪フクロウめがああー痛たたた‼︎ 強化魔法をかけとるのに、何故痛いんじゃああ⁉︎」


『簡単な事だ。俺も強化魔法をかけているからだ』


「なっ⁉︎ 肩に乗ってるだけなのに、何故強化魔法をかける必要があるのじゃ⁉︎」


『当然。お前に制裁を加える為だ』


「こ、この腐れ外道おおぅにゃあああー‼︎」


 敵ではなく、味方の制裁によりダメージを負ったノアが、上下に分かれた階段の前に辿り着く。


『人質はどっちに居るんだ?』


「反応は上にある。おそらく、3階あたりじゃろう」


『よし、行こう。人質を盾にされる恐れもある。ここからは慎重に行けよ』


「ケッ! 何もしとらんくせに、偉そうにい痛ああー‼︎」

 


 ノアが制裁を受けながら上の階へ向かった頃、どこからともなく現れた人影が、ノアの後を追って屋敷の中に入って行く。


 2階に上がったノア。

 真っ直ぐな廊下があり、その左右にそれぞれ部屋がある。


『待ち伏せにはもってこいだな』


「フッ」


 全く意に介せず、平然と廊下を歩いて行くノア。


『オイ! 少しは警戒し……』


 ウルが喋り終わる前に、音を立てずに部屋から飛び出して来た男の武器をさらりとかわし、顔面パンチを食らわせるノア。


「ぐあっ‼︎」


 次の部屋からも男が飛び出して来るが、フルスイングした武器をしゃがんでかわした後、下から男の顎目がけて掌底を突き上げる。


「ぐふっ‼︎」


 そしてまた、悠々と廊下を進むノア。


「居るのが分かっているのに、何を警戒する必要があるのじゃ?」


『ホホウ』



 その頃、ノアの後を追って屋敷の中に入った人影は。


「誰も居ないじゃないですか⁉︎ 暗くてよく見えないじゃないですか⁉︎ 灯りはどこですか⁉︎ 人質はどこですか⁉︎ 人質を助けに行ったって言う娘はどこですか⁉︎ 何より、上に戻る階段はどこですかー‼︎ あ痛っ‼︎ 頭を打ちましたー‼︎」


 間違って地下に降りてしまい、道に迷っていた。



 



明智光秀とは関係ございません。

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