囚われた学生
ミコトが次にリュウ達の前に顔を見せたのは、遊園地に行った2週間後だった。
フェイズ2戦も終わって報告をしに来たのだろうとリュウはまた確認もせずに開ける。
「相変わらず不用心だね。」
その姿を見た3人は驚いた、というより引いた。
長かった髪はバッサリ切られ、額や腕に包帯をグルグルと巻いた姿はどうしようもなく手遅れな気がした。
「ミコト君、髪…ってか、怪我!どうしたのそんなに。」
「カズヤさん、一旦ストップ。」
ミコトは数枚の紙をリュウの前へ叩き付けた。
その顔は憎悪でいっぱいだった。
「この仕事、俺には出来ない。」
そんな事をミコトが言うのは初めてだった。
カズヤもリトもオドオドとしてしまってリュウに視線を向ける。
「分かってて、俺にやらせるつもり?」
「……俺は、お前が適任だと、そう思ってお前に依頼したんだ。」
カズヤがミコトが叩き付けた書類を見る。
自殺した男子生徒______ミコトが以前、兄の友人だと言っていた人物。
「確かに短期間で虚無になる奴はフェイズ2になりやすいけど…(そんな設定ありません、俺が作りました。)でも、こんなの…」
「お前は過去に囚われすぎている。1回、『決別』してみたらどうだ?」
決別。
ミコトにとって耳が痛くなる程聞き飽きた言葉。
「…あぁ、そう……おにーさんがそう言うならいいよ、俺がやる。
決別なんて…もうずっと…!」
泣きそうな声でミコトは出ていった。
カズヤは心配そうにしていたがリュウは放っておけと言った。
リトも少し気にしていた。
「あいつはそんなヤワじゃない。あいつの兄貴がちょっとでも絡むとああなるだけだ。
あんま気にするな。」
リュウは半分ほど無くなった珈琲を啜った。




