破顔させた学生
ミコト君だって笑えるもんね。
「うぇ……。」
「大丈夫?ミコト君。」
「カ、カズヤさん…水ちょうだい……。」
ミコトは受け取ったペットボトルの水を半分ほど飲み干した。
「大丈夫かマジで。」
「おにーさん何あれ…新種のフェイズ2?」
「お前な。」
ミコトは人生で初めて乗ったジェットコースターにビビりまくっていたので観覧車に乗る時もビクビクしていた。
「大丈夫だから、見ろゆっくりだろ。」
「急に早くなるかもしれねぇじゃん。」
「ならねぇよお前。」
乗ってしまうとミコトは楽しそうに見下ろしていた。
「見てみておにーさん!あそこ!リトさん達じゃない?
………おにーさん?」
「あー、嗚呼。うん。そうだな、うん、多分そうだろ。」
「何してるのおにーさん。」
リュウは真っ直ぐミコトを見ている。
そんなに見られても…といった顔で見つめ返すミコトの目付きはやはり鋭い。
リュウは一向に下や上を見ようとしない。
「…もしかして、おにーさんて…。」
「悪いか。」
「いや、意外だなって。」
「俺も意外だった、こんなゆっくりで高いとは思わなかった。予想外に無理。」
ミコトは少し笑いそうになった。
いつもクールで冷静で、苦手なものが無さそうなリュウが高所恐怖症だとは思ってもいなかったのだ。
何故自分に付き合って乗ってくれたんだとミコトは申し訳なくもなった。
「あ、リトさん達手振ってる。」
「楽しそうだな。」
「………俺、そんなに楽しそう?」
「?…楽しくないのか?」
楽しい、と感じたことはあまりない。
虚無を倒す時にあるのは【快感】、狂喜的な感情。
勉強をするのも起きるのも全部【怠惰】、拒否反応。
……楽しい、そんな感情を感じたことはあるだろうか?
無い、昔から何一つ無い。
手元にあったのはただ強いだけの力と本だった。
(そっか、楽しいのか。俺。)
破顔させたミコトの顔にリュウはドキリとする。
「ありがとう。」
「…お前もちゃんと笑えたんだな。」
「そう?結構笑ってるけどな。…おにーさん達の前じゃ。」
地面に足を着くとリュウはホッとしたようで1つ大きな伸びをした。
ミコトも破顔させたままリト達に手を振った。
てっきり笑えないかと。




