目を瞑る学生
インターホンが再度鳴る。
ミコトは布団に潜った重い体を動かしてさっとパーカーを羽織る。
「うち新聞はとってな……、」
「よう、ミコト。」
一瞬ドアを閉めてやろうかとも思った。
しかし相手が友人であり尊敬する先輩でもあり、
『人間』なのだ。
まぁ普通の、とは言い難いが。
それ相手に刻印を解錠するわけにもいかないが、解錠していないミコトは1男子高校生に過ぎない。
ただのモブだ。
となると分かることは1つ、力でこの人に勝てる訳がない。
諦めてため息をついてからチェーンを外した。
「何しに来たの、おにーさん。」
リュウはとりあえず上がってもいいか?と聞いた。
ミコトはどうぞ、と言って珈琲を探し始めた。
「はい、珈琲。」
「急に来てごめんな。」
「別にいいよ、どうせ今日も眠れないんだし。」
ミコトも珈琲を啜る。
相変わらずミコトが入れると濃い。
一口飲んで砂糖を大量に入れ始めたミコトをリュウは苦笑いで見た。
「それで?どうしたの?」
「明日、仕事頼まれてくれないか?」
仕事、虚無【ブランク】狩りだろう。
ミコトはいいよ、とだけいってまた珈琲を啜った。
まだ苦いのかミルクも足し始めた。
そして猫舌なのでちびちび飲んでいる。
「それでよ…」
「あっづァ!!」
ミコトがマグカップから凄い勢いで首を逸らす。
猫舌もここまでくると首を痛めそうでハラハラする。
「…」
「ご、ごめ…」
「冷ましてから飲め。」
「うん…」
余程熱かったのか少し涙目だ。
マグカップを物が散らばった机の上に置く。
小説、眼鏡、体温計、はさみ、カッター、リモコン、ゲーム機…
置いてあるものはバラバラで統一感が無い。
「仕事ってのはこれ。」
渡された資料を酷い顔で受け取って目を通す。
「………何これ。」
「リトが行きたいだそうだ。お前が来てから丁度1年だからな。」
渡された資料にビッシリと書かれた遊園地の詳細。
一年も経っている事と遊園地に行った記憶があるかミコトはぼーっと考えた。
思えば、行ったことなんて…
「でもリトさん未だに俺のこと苦手じゃん。」
「親睦を深めるためにも、だ。」
「おにーさんが言うと裏があるように聞こえるよ。」
「お前なぁ…!」
「ふふっ。行く、行くよ。遊園地なんて、行ったことないからね。」
ミコトは冷めた珈琲を飲み干してキッチンのシンクへと置いた。
「てか、これ伝えるためだけに来たの?」
「そんな訳ないだろ、仕事の帰りだ。」
興味無さそうに相槌を返したミコトはリビングへと戻った。
リュウが帰り支度を始めている。
「帰るの?」
「リトから催促がきた。」
「それは早く帰らないとね。」
玄関でリュウを見送るとミコトは再度布団に潜った。
…眠れもしないのに
これは酷い、おにーさんとミコト君のキャラがブレブレじゃないか…




