決別する学生
「こんな所に連れてきて何?」
廃ビルの上だ、風が強い。
「よう、おにーさん。」
「どういうつもりだ、ミコト。」
にかぁっと笑ってスペードの紋章が空中に浮かぶ。
そして、ミコトは剣を手に取る。
「ミコト!?なん、え…!?」
「これから俺は、『決別』する。」
自殺した、例の男子生徒が立っている。
「お前、仕留め損ねたのか…?」
「わざと手加減したんだ、まぁ動かなかったしいいかなとは思った。」
完全なフェイズ2だ。
イザナは絶望的な顔で彼を見ていた。
…彼だったものを見ていた。
「イザナ、だからお前も決別しろ。」
ミコトが剣を地面において魔法陣を描いた。
(上手く、行くとは思えねぇ…だけどやってみるしか術は無い!)
その魔法陣を剣で叩き切った。
バラバラに砕けた魔法陣だったものが光ってミコトの剣を包む。
(力が強すぎる…!制御できなくなる前にっ…)
ミコトはニタニタと笑みを浮かべるフェイズ2を。…兄の、元友人を、斬った。
「チッ、群がるなゴミ共ォ!!」
淡い光に包まれたミコトは楽しそうに敵を斬っている。
イザナはただただ呆然としていた。
…それはそうだ、実の弟が目の前でよく分からないことをしているのだから。
「弟は、何を…?」
「あれは…死んだ時の思い残しが死体を支配した末路だ。
俺らはそれを倒す仕事をしている。」
「貴方が、ミコトを?」
「ああ、俺のせいだ。…あいつがあんな風になったのも。あんたはミコトの兄貴だろ?」
「はい、そうです…」
リュウがイザナにキラキラと光る何かを渡した。
ペンダントだ、イザナからすれば随分と懐かしい。
「ミコトが捨てようとしたのをいずれと思って持ってたんだ。」
「…」
「決別なんて言ってたけどな、要はあんたと仲良くなりたいんだよ。」
腰が抜けたのかイザナはリュウの手を借りてやっと立つと、ようやく終わったのかミコトが戻ってきていた。
「ミコト…」
「あー、まぁ、何だ…その……」
「ミコトぉお〜〜!!!」
「引っ付くな馬鹿兄貴!!」
リュウはミコトの頭をぽんと叩いて、「ごめんな」と言うとさっさと帰ってしまった。
嫌そうな顔でも、少し、嬉しそうだった。
くっそ可愛いな今回めっちゃ可愛いな無理