表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/12

もう一つの心霊スポット

太田さんの家の肝試し被害について説明した俺は、バツの悪さも重なって相当困った顔をしていたらしい。それを見てか宮内さんも樹さんも真剣に考えてくれた。


「その荒しに来る輩を退治したいのだな?」

「い、いえ退治だなんてそんな…あっでも、ここで肝試しをしていた人達が来なくなった理由を知りたいんです。噂では精神がおかしくなった人も居るとかで。」


「うーん精神ですか?それは単なる噂かも知れませんね。きっと大袈裟に話したのでしょう。ただ…。」

「ただ?」

「はい。過去ここもそういった輩に荒らされた事があるのは事実なんです。ただし、ご覧の通りここは神聖な場所。罰が当たった可能性があります。」

「罰ですか?でっでもそれは、ここだから起きた訳ですよね?じゃあ…。」


「そうですね…もし他所にある心霊スポットを調査したいというのであれば、ちょうど今ここから少し行った場所に皆さんが集まっていますよ?何でも取材があるとかで。」


「えっこの辺りにまだ他の心霊スポットが?」


「この周辺は、かつて多くの人々が暮らしていた土地ですから曰くの一つや二つ位あるかも知れませんね。」

「うむ。綺麗事だけで済まぬのが人の世の理なれば穢れた土地もあろうて。ただし先程も言うたがこの周囲は神聖であるが故、左様な事も起こらなんだが。」


「あの…なんか発言に矛盾ありません?」


とりあえず俺はその取材が来ているという場所、安明(あぎら)山の位置を教えて貰い行ってみる事にした。

樹さんの持って来た古地図が地図というよりはイラストみたいでまるで役に立たなかったのだが、その気持ちはありがたい。


最後にあのアパートや管理人さんについて話すと、二人は何かしら知っていたらしくやや驚いた表情をしていた。

そして俺が出発する間際に小さな布袋を一つ渡してくれたのだが、触った感触からすると中身は種らしい。

必ず役に立つと言うのだが本当なのだろうか?


再びスクーターを走らせ、その取材中の場書にやって来た。

ここの心霊スポットというのは、古いトンネルの事の様だ。

トンネルの手前には小型バスや数台の乗用車が停められ多くの人達で賑わっていて、設置された照明がまるで真っ昼間の様に辺りを煌々と照らし出している。


これが心霊スポットの取材?こんなんで怖い映像を撮影しようっていうのか?だいたいこんなに人が多くちゃ雰囲気もへったくれも…あれっ?

撮影スタッフにしては人数が多過ぎるし、もし近隣の住民が見に来たとしても何故か子供の姿もある?じゃあこれって霊か?


「おおーあんちゃんも見物に来たんかい?これからオモロイもんが始まるで。」


お、オモロイもん?

辺りを見回して俺は驚いた。

撮影スタッフが多分十数名、他に進行役と霊能者らしい人、女性タレントが二名。

その他に居る約二十名、存在感の薄さからしてこれ全て霊だ!


楽しそうに車を見ている男の子の霊や出演者に混じって遊んでいるおっさんの霊。更には車内に置いてある荷物に興味津々な感じのおばちゃんの霊などなど…。


「では皆さん位置に付いて下さい!本番始めますー。」


照明が落とされてカウント開始。撮影が始まる!?


「ええーっ私達は今この辺りでも特に有名な心霊スポットの安明、その問題のトンネルに来ています。」

「昼なお暗いこの場所で、果たして心霊現象を撮影出来るのか?これから調査したいと思います。」


周囲から野次やクスクス笑い声が聞こえ始めた。


「おーいおーい!」

「いいぞー待ってましたぁ。」

「ぷっ…ここに居るのにね。」


トンネルに入る取材陣。その後をぞろぞろ付いて行く霊の集団は俺からしてもかなり異様な光景だ。


その内タレントの一人が騒ぎ出した。

「きゃあぁぁぁぁ!あそこっ今あそこに何か居た!!」

「霊感の強いリナちゃんが何か見たらしいですっ!」

すかさずそこに割って入る進行役と霊能者。

「いや、あそこに女性の霊が居ますねぇ!これは危険ですから一旦下がりましょう。」


またも周囲から笑い声がして、ざわつき始めた。

「そこには何も無いのにねー?うふふ。」

「だからお前らの真後ろに居るっての!」


何だこりゃ?心霊番組をやっていると霊が集まるって言うけど、こういう事だったのか…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ