絵画の母子
初めまして!僕は…そうだね、レオとでも名乗っておくとしようかな。
今から僕がある話をしようと思うんだ。面白い話?ファンタジー?
君たちは何を言ってるんだい?夏だよ?夏と言えばぁ…怪談しかないでしょ!
まあ気を取り直して話の本題にはいるよ?
いいかい?…まあ勝手に進めるけどね!
これはね、僕がまだ可愛いい可愛いい小学6年生だったときの話なんだ
1日目 昼
長野県山間部 三鳥市営 某宿泊施設
まだ夏の暑さが残っていたあの日、僕らは宿に到着してすぐにあの絵を目にしたんだ。
その絵は普通に見たら何でもない絵だったんだ。
美しい草原とそこで放牧されている牛をバックにして、すやすや眠る可愛いい赤ちゃんを抱いて微笑むお母さんが描かれている絵なんだ。
ただね、僕や僕の友達にはたまたま霊感の強いヤツが集まっていた、それがもしかすると"あれ"を呼んでしまったのかも知れない。―――
「おーい、あの絵見てみろよ!」
「なんだよレオ。うわ、なんか怖いなあれ…てかトイレの横かよ、夜トイレ行けねーじゃん」
「何々?おぉ!これは肝試しが盛り上がるんじゃないのか!」
「おいレオ!お前確かカメラ持ってきてたよな?今撮ろうぜー到着記念にさ」
「おっいい…「男子~、なにしてんの?早くしてよ、オリエンテーションはじまるよ!」
「やべぇ、急げ!」
この時僕は写真を撮っておくべきだったのか、今になってもわからない。撮ればもっと早く動けたかも知れないし、そのせいで"あれ"がもっと早く起きていたかも知れない。でも一つだけわかることがあるんだ。それはあの恐ろしい自然教室が、この時幕を開けたってことだよ…
「…では以上で説明を終わりたいんだけど、質問はあるかな?」
オリエンテーションも終盤に差し掛かり施設長の人からの説明も終わり、質問なんてあるわけないし早く終わってよって空気が流れ始めていたわけだが、よくも悪くも空気が読めないお年頃の僕は当然―――
「直接関係は無いんですけど、ロビーの絵について聞きたいです!」
「ああ、あの親子の絵かい?あれはね私がオークションで買ったものなんだが、第二次世界大戦の時にあるイギリスの画家が書いたものらしくてね。出征も決まりいよいよ帰れないかも知れないと思ったその画家は、奥さんと産まれたばかりの子供に絵を描こうと思った。しかしその絵は完成しなかった。戦局の悪化で出征が早まってしまったんだね。何も残せなかったその画家はなんとしても奥さんの元へ帰らなくてはならないと思った、そして戦争が終わりその画家は故郷へ帰ることができた。しかし奥さんと子供はドイツ軍の空襲で亡くなっていたんだ。失意のなか画家は書きかけの絵を完成させる決意をし、ついには完成させることができた。それがここにある絵なんだそうだよ。」
1日目 深夜
初日ということもあって、あの絵のことなんか忘れてしまって僕らは夜遅くまで部屋でしゃべっていた、皆だってやってただろ?先生が来たら「ばっ!」と寝たふりするやつ。
でもさ、しゃべってるだけとはいえやっぱり起きてるとトイレしたくなるだろ?僕もトイレにいきたくなっちゃったんだ――――
「あ!」
「どうし…「やべぇ。…トイレ!」
「…脅かすなよレオ~、なんか思い出したかと思ったじゃん」
「ごめんごめん。でも思い出しちまったこともあるぜ?」
「なに?」
「あの絵。あそこ通らないとトイレ行けないんだよな」
「嫌なこと思い出させるなよ~、俺らまでトイレ行きたくなってきたじゃん!」
「これは~。皆で行くか!」
こうして部屋の10人くらいでトイレ行ったわけなんだが、トイレ自体そんなに広くないし半分ずつ入ってもう半分は外で待ってたのさ。そしたら絵を見ていてふと違和感を感じたんだ――――
「あれ?池ピー、あの絵さ昼間見たときお母さん顔上げてたよな?何で赤ちゃん笑いながら髪引っ張ってんだろ…」
「怖いこと言うなよレオ!…でもそういわれるとそうかも…そもそも赤ちゃん起きてたっけ?」
「うーん…さっき写真撮っとけば良かったな。今日から写真撮っていってみる?気のせいだったらいいし、気のせいじゃなかったら先生に報告するのに証拠があったほうがいいかも知れないし…」
「そうしようぜ!でも肩とかに手があったりしたら嫌だし、絵単体で撮ろうぜ!」
カシャッ!
「うわ!ビックリしたなぁ、なにしてんの?」
「なんかこの絵に違和感感じてさ、俺と池ピーで毎日この絵の写真を撮ることにしたんだ!」
「へぇ~、案外施設長が毎日入れ替えてるだけだっりしてな」
この時は本当に違和感しか感じなかったんだ。思い違いしているかもしれないし、そもそも絵が変わるはず無いっていう思い込みがあったのは間違いないしね。でも次の日に絵が変わった事をいろんな人に聞いてみたけど、誰も気づかなかったんだ。同級生も先生も…―――
2日目 夜
初日の夜決めたように写真を撮っておこうと思ってこの日の夜も親友の池ピーと一緒にあの絵の前に行ったんだ。明日の夜は館内で肝試しをやる予定だったから、もしこの絵が本当に危ないのなら中止も考慮してもらはなくちゃいけないし。そしたらやっぱり…変わっていたんだ―――
「なぁ池ピー、これって…」
「ああ、本格的にヤバいんじゃ…」
「写真だけとって、走って帰るぞ!」
カシャッ!
シャッター音がスタートの合図だったよ。二人してダッシュさ、本当に危ないと思ったからね。
もちろん前日の写真と比べたよ、確かに変わっていた。
…まず背景が変わってた、牛じゃなくなって子供達が手を繋いでその親子をぐるっと囲んでいたんだ。それに昨日は笑っていた赤ちゃんがこっちを睨んでいたんだ。ちびっちゃうところだったよ、本当に。でもおかげで確信に変わったんだ。
そしてこの写真のおかげで肝試しは屋外でやることになった。なんたって絵の変化は施設長ですら把握できてなかったようだからね。
当然この事は肝試しまでは秘密にしなくてはならなくなったけどね。でもただでさえ肝試しは霊を呼ぶんだ、なかなか楽しめたよ…―――
3日目 夜
「じゃあこれからルール説明とこの地にまつわる怪談を紹介するからな、しっかり聞くように。では…」
ルールは省かせて貰うよ?まあ基本的には絶対に振り向くな!だけだけどね。本当は怪談も省こうと思ったんだけど、せっかくだから紹介することにしたよ…―――
「これは少し前にこの施設を利用した人達の話なんだけど、とりあえずAさんBさんCさんとするよ。この人達は君たちがこの後やるのと同じルートで神社まで行くことにしたんだ。この人達にも当然何があっても振り向いてはいけないってさんざん言っていたんだけど、当時は振り向くと災いが降りかかるぐらいにしか伝わってなかったおかげでね、後ろから声をかけられた気がして全員振り向いてしまったらしいんだ。
するとAさんは右腕、Bさんは左足、Cさんは頭に風があたった気がしたんだって。あとは何事もなく神社について、記念撮影をしたんだが、この写真は変だった。風のあたった所が写っていなかったんだ。気味が悪くなったらしくてね、その写真Cさん以外捨ててしまった。
そして肝試しから2ヶ月が経過した頃、Aさんが右腕を電車のドアに挟まれたんだけど、運転手は気づかないままトンネルに入って右腕を切断してしまった。
さらに2ヶ月が経過した頃、今度はBさんが車の事故で左足を切断しなくてはならなくなった。
いよいよおかしいと感じたCさんは写真のことを思い出した、あれがすべての原因だと。そしてCさんはある心霊番組に応募した、除霊なんて調べたってわからないし、専門家に聞こうにも誰が本物かわからないと思ったからだ。
そしていよいよ収録の日がやって来た、Cさんはいつ頭をとられるか気が気ではなかった。そりゃそうだ、他の2人とちがって死ぬのは免れないからな。でもそれは唐突に、最悪のタイミングでやって来た。Cさんの出番になり、ステージに上がった瞬間…照明がおちてきてCさんの頭に直撃した…」
てな感じの怪談だったんだが、僕はこの時それどころではななかったんだね。
だって声をかけられる以前にもう、子供達に囲まれていたんだから…
でも本当にヤバいのはこれからだった―――
最終日 朝
「「…」」
この時班員は、誰も声を出すことができなかった。
美しい草原が燃えていたんだから…
意味がわからない、何で絵が変わる?なぜ赤ちゃんは髪を引っ張る?どこへ牛は消えた?この子供達は?…何で草原が燃えている?
わけがわからなくなっていた。
何故?何故?何故?何故?何故?何故?何故?
…何故?
さらに池ピーの一言がこの空気にとどめをさした…
「ねぇ、出てこようとしてない?…」
僕や池ピーを含め数名の同級生には見えていた、絵の表面をのたうつ黒いもやみたいなのを…
理解が追い付かない、黒いもやはなんなのか、何故絵に憑いていたのか…
しかしそんなことはどうでもよくなった…
"あれ"が出て来る前にこの施設を出発しないと大変なことになる‼
僕らはバスに駆け込んだ、そして先生に訴えた
「先生っ!早く!早くバスを出して、急がないと!」
「お前らなぁ、早く帰りたい気持ちもわかるがな、早く出たって予定があるんだから直ぐには帰れないぞ?」
「先生、そんなこと言ってるんじゃない!急がないと"あれ"が出てきちゃう!早く!ねえ早く!先生っ!!」
「◯◯先生、予定よりは早いですが他の生徒も準備できたようですし、いいんじゃないですか?」
「校長先生がよろしいならば。でもお前ら、予定の変更はできないからそれだけは納得してくれよ。」
やっと出発できる、ここから逃げられる。
「…運転手さん!早く!早く!"あれ"が出てきた!追っかけてくる!」
「池田!変なこと言って運転手さんを困らせるな!そもそも"あれ"ってなんだ、いい加減にしないと怒るぞ!」
「"あれ"っていうのはあの絵のことですよ。」
「あの絵って親子の絵のことか?肝試しの場所は変えてやったが信じられないんだよな。」
どうやら先生方は信じていないみたいだった、そしてそんな中池ピーの安堵の声が聞こえてきた
「追い付けなかったのか?…良かったぁ」
…でも僕はこの時気づいてしまった、間に合わなかったことを、そして…
「違うよ池ピー、"あれ"は屋根にいる…間に合わなかった、付いてきてるんだよ!」
「おいレオ、お前までなに…」
おそらく「なにを言っているんだ」と担任は言おうとしたのだろう、だが口に出ることはなかった…
ドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタドタ
バスの屋根を走り回るかのような足音が響き渡り、バスの中はパニックに陥った
でもバスの運転手を含め何人かは聞こえていないようで、何が起きているかわからずにいた。
幸いなことに、この後は変なことも起きることなく予定通りの行動で、無事学校に到着した。
結局あの絵はなんだったのか、あの足音はあの母親だったのか、そして"あれ"はいつバスから降りたのか…
様々な疑問を残していった…
数週間後
「あれ、池ピーちょっとこれ見て、バックミラーの下」
「…!?えっこれ!」
それは宿舎を出て一番始めに寄った牧場で撮られた集合写真であったが、僕達の乗っていたバスのバックミラーで顔を隠すように立つ、身長3m近い白いワンピースを着た女性が写っていた…
最後まで読んでいただきありがとうございました!
あげてみようかなと思い立ち、何がいいか迷っていたところ、夏だ!ホラーだ!怪談だ!と、自分の実体験を書くことにしました。
初心者丸出しの拙い文で本当にごめんなさい‼
次回またお会いする機会があれば、そちらもお願いします‼
(全然そんな予定はないですが(^o^;))
追伸
女の写ってた写真、見える人と見えない人がいたのですが、心霊写真にも霊感いるんですかね?