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#1-3

第一話その3です。ゆっくりとどうぞ。

  翌日。


 「響也君、おはよう」

 「あぁ、小夜さん。おはよう」


 教室でV・Rの電子書籍を読んでいると、不意に右の席から声が掛かった。

 V・Rのレンズ透過度設定を開いて透過率を上げると、元最高成績保持者のポニーテールが隣の椅子に座っているのが視界に入る。

 昨日はよく見ていなかったが、ちゃんと学校指定のネクタイをし、ブレザーもしっかりとしている。シャツも真っ白としか言い様がないくらい綺麗で、しっかりもののイメージがさらに固くなった気がする。

 日差しのおかげでより輝いて見え、少し見とれていると、小夜はクスッと笑った。


 「ボクの顔に何か付いてます?」

 「あぁ、いや……うん。なんでもないよ」


 指摘されて小っ恥ずかしくなり、視線を軽く横に流す。


 「ところで、貴方はボクの尊敬する方なんだから、ボクのことは呼び捨てでいいんです。逆にボクが敬語を使う立場なんですから」

 「よ、呼び捨て?」

 「小夜って呼んでください、是非」

 「え、え~っと」


 時刻は午前八時五十分、HRが始まるまであと十分。既にこの時間には、Aクラスほぼ全員が教室内にいた。勿論騒いでいる男女(今回は特に小夜)は目立ち、現に多人数の視線を受けていた。響也が視線を向けた途端に誰一人として視線が合わなかったのは、逆にそれを裏付けする素材となった。


 「どうしても?」

 「えぇ」


 視線を戻すと、期待の眼差しを向ける小夜。それに対し、響也には諦めの色が差した。心の中で深い溜息をつき、口を開いた。


 「分かったよ。小夜、これでいい?」

 「はいっ!」


 期待通りの返答に満足したのか、輝いているかのような満面の笑みで頷く小夜。ちょっとドキッとしたのは気にしない。そんな笑顔になる程、尊敬に値する人間がいなかったのかと響也は苦笑いの裏で思っていた。


 「よろしくお願いします、マスター」

 「いや、その呼び名はやめてほしいんだけど」

 「よう、なにやってんだ響也。クラスほぼ全員がお前らを見てるぞ?」


 二人の(傍から見れば)恋人同士のような会話の中に入ってきたのは見知った背の高い男子、要するにタケルだった。タケルの指摘に、クラスのほぼ全員の視線が反れた。気付いていない訳ではないが、響也は無視した。

 いやむしろ気にしたら負けだ、いろいろと。

 それからタケルがドカッと響也の席の後ろの席に座ったが、それは喋るためだけの行動ではない。なんの偶然か、タケルの席がそこだったのだ。


 「あぁタケル、おはよう」

 「誰ですかコイツ」

 「しょ、初対面の相手に向かってコイツだぁ!?  同じクラスの久米タケルだ!」

 「はぁ? マスターを気安く名前で呼ぶ奴はコイツで充分です!」

 「にゃにおう!?」

 「なによ!」

 「あー、はいはい。小夜もタケルも仲良く黙りなさい、皆さんの視線独り占めだよ。ってこの場合二人占めか」

 「「……」」


 身長差のある組み合わせの二人が、腕を組んでお互いに肩をぶつけて睨み合っていた。案外似合ってるなと思いつつ、これでは埒があかないと踏んだ響也に言われてふと視線を動かすと、確かに二人に視線が向いていたので、二人して目線を下げて黙り込んだ。

 静かになったせいで凄く居心地が悪い。折角のお天気だというのに。


 「で、タケルは何か用だったの?」

 「お、おぉ。今日の昼休みに購買で月一限定商品が出るんだけど、それで前に話した賭け事に挑戦してもらおうと思ってるんだ」


 タケルが嬉々として話しかけるも、出てきた単語に聞き覚えがなく、自然と疑問符が浮かぶ。少ししか首を動かしていなかったのだが、それに気付いたのか、小夜が気遣いからか横にひょこっと現れ、ジッとこちらを眺めてくる。


 子犬か。


 取り敢えず、結局知らないことには変わりないので質問を振ることにしてみた。


 「えっと、月一限定商品って何?」

 「は~い、私が言葉足らずのコイツに代わって説明致しましょう!」

 「あ゛?」


 すると、待ってましたと言わんばかりに胸を叩き、さりげなくひどいことを言って続けた。


 「こほん。月一限定商品とは、月に一度だけしか出ない珍しいものが購買に出る購買の仕組みです」

 「今回は複数で楽しむパーティ系の商品があるから、響也の歓迎会含めで楽しもうぜ」

 「なるほど、それは嬉しいね」

 「なんだ、案外考えてるじゃない」

 「バカにすんじゃねぇよ」


 要約すると、複数でパーティしようというタケルの気遣い込みの誘いだった訳だ。響也はクラスに馴染めるかが不安、というよりかは課題としていたので、こういう気遣いはちょっとばかし嬉しかった。

 作り笑顔でなく、素直に笑って承諾した。


 「是非参加しよう。複数って言ってたけど、実際何人?」

 「十人」

 「ず、随分集めたね。あぁそうだ」

 「「どうしました(した)?」」

 「僕とV・Rのアドレス交換しない?」


 二人は一瞬ぽかんとしたが、すぐに笑って承諾してくれた。ただし響也はあまり気分は良くなかった。響也が教えたのは、擬似アドレスだったからだ。


 擬似アドレスとは、EWSPの兵士が持つ特殊アドレスで、民間人専用とされている。なんでそんなものを作ったのか。それは至って簡単、民間人に重要機密を漏らさないためだ。EWSPの本当のアドレスは、部外者には絶対に知られてはいけない代物なのだ。


 「あ、そうそう忘れてたんだけど」

 「どうかした?」

 「この賭け事は、参加料代わりに商品を割り勘してもらうからな」

 「……げ」


 小夜がいかにもまずそうな顔をしているのでなんとなく質問をする。


 「小夜、どうした?」

 「あのぉ、最近ちょっとお金を使っちゃって、そんなに残ってないんです」

 「そうなの? じゃあ僕が払うよ」

 「そんな、悪いですよマスター!」

 「いやいや、小夜が参加できないのは寂しいからさ」

 「……!」


 急に黙って顔をほんのり朱に染めた小夜、その感情が読めない響也は違うことを思った。


 「小夜、風邪でも引いた? 顔赤いけど」

 「だ、大丈夫です」

 「……へぇ」

 「???」


 そっぽを向いてしまった小夜に、ニヤニヤしながらこっちを見るタケル。響也は少し居心地が悪かった。


 「タケル、どうしてニヤニヤしてるんだ?」

 「ん~、なんかさ、響也って――やば、先生来た!んじゃ昼休みに!」

 「ちょ、その省略した部分を教えて」

『はい黙れー、HR始めるぞー』

 「ちくしょうっ!」


 丁度良く現れた担任により、響也の知りたい情報を聞き出せなかった。


    ◇ ◇ ◇


 「流石に」

 「四時間ぶっ通しで」

 「V・Rを使った授業は」

 「「「辛い」」」


 まるでどこぞのコントのように三人で息の合った会話、しかもその三人揃って目を抑えていた。因みに響也はかつて受けた筆記とは違う授業に対応しづらく、他の生徒共々苦戦したから疲れているのだ。その疲れたおかげで、実は今朝タケルの言いかけたことを聞き出すことを忘れていた。

 この三人が行く先は購買、例のパーティ用商品目当てで向かっている。


 「ところで、今回はどんなんだ?」

 「えーっと、あった。今回は《十個中激辛からし入り焼売しゅうまいを選ぶのは誰だッ!?》だそうです、マスター」

 「なんだそのふざけたタイトルは……って、V・Rで確認できるのか」

 「えぇ、後でこの開き方を教えますね!」


 小夜が嬉々として答える。可愛らしい満面の笑みに、響也はなんと言えばいいか分からず、目線を外してしまった。


 「あのよ、値段は分かるか?」

 「あー、千円だってさ」

 「なんだその投げやりな回答!響也みたく心を込めて言わねぇのかよ!?」

 「うるさい! アンタなんかに好感持ってもらおうなんざ考えてないわよ!」

 「にゃにおう!?」

 「なによ!」

 「二度も言わせる気?」

 「「……」」


 またもや道を通りすがる生徒の視線を集める二人に、二度目の注意をする響也。二人はまた視線を下に移した。


 「ほら、さっさと購買行こう。賭け事する時間も減るからな」

 「お、おう」

 「了解です」




 「今からルールを説明する!」


 場所は変わって屋上。長方形の両端に階段のある、約十五メートルくらいの広さを持つその会場で、気を取り直したタケルが九人の生徒を前に、賭け事のルールを説明していた。


 「皆、VTSはダウンロードしてあるな?」


 全員に確認を取る。誰一人として首を横には振らなかった。


 「よし、それじゃあ俺が親になってメンバーを募るから、それに個々登録してくれ。あと、今回は転入生、静内 響也の歓迎会でもある。制限時間は一分、楽しく行こうぜ!」

 「「「おう!」」」

 「それと使用武器は自由、各自慣れた武器を使って構わない。ライフが無くなったらフェンスのところで待機すること。最後に、焼売の選択はこのゲームの順位の順番とする。んじゃ、メンバーを募るぜ!」


 待ってましたと言わんばかりにV・Rを取り出す皆。響也も一緒になってV・RのVTSを起動させ、親データのタケルを探し、登録した。


 《ゲームスタート》




 (旧日本国軍がモデルみたいだな)


 二丁の『ベックを』構え、ターゲットを落としてゆく響也の睨む先には、ライフルと軍刀を携えた、カーキの軍服とヘルメットで身を固めたデザインの動く的(ターゲット)だった。技術も進歩したようで、案外似たような顔をした敵は見当たらなかった、というよりそんな暇は特になく、ちらっと見えた程度のレベルだった。十人で動くスペースに複数の敵、正直狭いくらいだった。


 一歩下がった途端に、視界の左端にライフルを構える兵士が。響也は即座に左の拳銃で先手を打つが、ライフルを弾いただけになってしまった。兵士は獲物を軍刀に変え、響也に正面から斬りかかる。それを右ステップで避け、横を通り抜けた兵士の刀を振り抜くタイムロスの内に、右の拳銃のトリガーを引いた。


 そのままバックステップを踏んでフェンス近くに逃げて背後の安全を確保した後、あるアプリを起動させた。


 「エリィ、センサーを起動」

 「了解」


 そう、周りに聞こえない程度の声でAIのエリィを起動させたのだ。このVTSは、過去にウィルスの発見が見られた。今回だけ無いとは限らないため、わざわざベックを使って挑んだのだ。因みに参加者全員はこれがベックとは気付いてはおらず、どうやら剣さえ使わなければバレる心配はないようだった。


 『危ないマスター!』

 「ぅわっと!?」


 右横に不意に現れた軍刀を構えた兵士、それが一瞬で消えた。兵士の後ろには小夜の姿が。


 「ありがとう、助かったよ小夜!」

 『いえいえ!』


 ゲームをしながらウィルスの危険性も考慮する、響也の精神は少しグラついていた。それに心で喝を入れて気を引き締めた。


 階段のドアあたりにしゃがんでライフルを構える兵士。響也はその兵士に銃口を向けた。その瞬間、背中を数箇所の違和感が襲う。このゲームでは、脳波を使ってダメージを受けた時にその箇所に違和感を反映する機能がついている。それが現れたということは、言うまでもなくダメージを受けたのだ。瞬時にライフを確認すると、まだ3/4は残っていた。安心して視線を後ろに向けると、銃口を向けた兵士が一人。ふとしゃがんだ兵士のことを思い出し、前に倒れるように伏せる。兵士が倒れると共に響也は横になり、銃口をしゃがんでいる兵士に向けて打ち込んだ。


 起き上がりつつ時間と今の順位を確認する。残り約二十秒、順位はタケルが一位、僅差で響也が二位となっていた。


 「なんだコイツ!?」


 確認を終えたところでタケルの驚きの声が、反対側のドア付近で上がった。その方向に走って向かいながらエリィに話しかける。


 「レーダーに反応は!?」

 「一応あるけど表示されない!」

 「そっか、じゃあ今から倒す奴のデータを取れよ!」

 「了解」


 響也はある程度少なくなった敵を縫うように避けていった。


 ドア付近では、明らかに他とは違う格好をした軍服兵士が日本刀を片手に響也の方を向いて立っていた。その兵士の腹部には薄くノイズがかかっていた。


 「なんで、コイツの腹、切ったのに、消えない!?」


 その兵士の後ろで、タケルが屈みながら兵士を恨めしそうに睨んでいた。その兵士が反転して、自身の獲物を振りかぶる。反射的に両腕で頭部を庇うタケル。V・Rのダメージ反映が来ない代わりに、複数の銃声が鳴り響く。何事かと思って腕をどけて正面を見ると、先程の兵士が砂のように崩れ、上に気化するように消えていった。その後ろに、片手を突き出したままの青年が目に入った。


 「響……也? これは一体……」

 「なに、単純に僕の勝利が決定しただけだよ。っと、終わったね」


 青年は腕を下ろして、ゲームが終わると共にスコアボードを確認し始めた。


 「そうじゃない、どうしてアイツが倒せたんだ!」

 「どうやら複数回攻撃しなくちゃいけないみたいだ」


 無表情で淡々と返事をする響也に対し、タケルは訳の分からない虚無感に襲われた。


 「そんな奴……聞いたことねぇよ」


 去ってゆく響也の背中に、そう呟くのがやっとだった。




 「すっげぇなお前!」

 「初参戦なのに!」

 「い、いやいや。単純に運が良かっただけですよ」


 ゲームが終わるなり、スコアボードを確認した周りの生徒に褒めちぎられ、響也は少し戦いとは違った焦りを覚えた。そんな響也を眺めていた小夜は、何だか拗ねていた。


 「ほ、ほら! ささっと焼売選ぼう!」


 響也が催促すると、一人の女子生徒があのふざけたタイトルの商品を持ってきた。


 「はい、どれがいい?」

 「適当に……これで」


 本当に適当に選んだ焼売は、一切他と変わらない色彩なので、響也は安心した。


 「あー、一応みんなで一気に食べよう」

 「了解」


 そう言い残して女子生徒は他の面子に配り回っていった。


 「んじゃ、行くぜ!」

 「「「頂きます!」」」


 みんなで一気に頬張る。響也は口に違和感を覚えた。


 「かっ辛ぁ!?」

 「一番に選んだ奴がハズレかよ!」


 どこからか野次馬が飛ぶが、響也はそれも聞こえないくらいに口が大変なことになっていた。


 「ごめん、ちょっと購買行ってくる!」


 青年は爆笑している集団を抜け出して購買に向かって走り出した。




 「……ふぅ、あれは殺人的な辛さだ」


 響也は購買にて冷えた炭酸飲料を購入し、一気に飲み干して一息つく。今は多少時間が経っているせいか、生徒の数が減っていた。これはチャンスだと思い、V・Rを取り出してAIを起動させる。


 「エリィ、データは?」

 「バッチシです。読み通り奴はウィルスでした。あとはセンサーの文句も添えて送信するだけです」

 「オッケー、親父に自動送信を頼む」

 「了解」


 そういえばウィルスに反応しづらかったなと思いつつ、V・Rをしまって空っぽになった缶をゴミ箱に入れ、青年は昼食を置いてきた屋上目指して再度走り出した。V・Rをしていたからか、彼を観察していた人物がいた事に気付かなかった。




 その後は特に何もなく、響也はいつものワンルームマンションに帰宅した。ブレザーを脱ぎ、ネクタイを外してテーブルに投げ捨て、ベッドに転がった。念のためと仰向きでV・Rを付けてEWSPに連絡を取る。


 「今帰宅しました。メールは読んで頂けましたか」

 「読んだぞ。私ではなく、研究部の奴らが熱心に読んでいたがな」


 がっはっはと貞喜は笑う。口調が仕事風でないということは、現在EWSP本部にはいないらしい。


 「おい親父、今どこだ」

 「……さぁ、どこでしょう」


 この問いかけに、表情を変えずにそっぽを向く貞喜。V・Rで縮小されているとはいえ、顔が赤いということは響也にバレバレだった。


 「このエロ親父」

 「な、親に向かってなんだその言い方は!?」

 「うるさい、たかが女や酒ごときに大量の金使い込みやがって! 金が底ついても貸してやらねぇからな!」

 「たかがだと!? どうせお前がまだ若いからそんなこと――」


 一方的に接続を切る。貞喜は少々女癖が悪い。EWSPの配属人数が少ないがために、給料が高めに設定されているのだが、それの大半を女と酒に使われるのは響也にとって信じられない行為だった。


 「響也、少し精神に乱れがあるです。大丈夫ですか?」

 「それ、昨日も聞いた……いやまぁ平気だけど」


 エリィがかつて聞いたフレーズをそのまま使って心配してきた。響也はこの時久しぶりにエリィがAIであることを実感した。


 「それじゃあ役立たずの親父は置いといて、研究部に連絡を取りますか」




 研究部の話がマニアック過ぎたために響也が思考をショートしかけたのはここだけの話。


    ◇ ◇ ◇


 それから数日後、V・Rの授業にも慣れ、学校生活においても慣れた響也は、小夜やタケルたちと見事に打ち解けていた。年齢を隠しながらの生活にも慣れてきていた。因みに賭け事については独占記録更新中と、意外にエンジョイしていた。


 そんなある朝のHRのこと――


 『本日、このAクラスにまたもや転入生が入ってくる』

 「――ッ!」


 クラス中がざわめき出す。席を立つようなことはなかったが、明らかに響也に何かが走った。隣の小夜は担任に視線を固定していたために響也の強ばった顔を見られることはなかった。


 『響也と同じ日に来る予定が、たまたま交通トラブルに巻き込まれて今日まで延びたそうだ』


 担任のこの一言で、響也は確信した。今から入ってくるのは――


 『ソフィーヤ・ネストロヴナ・コンドラショヴァさん、入りなさい』

 「はい」


 気品のある態度でAクラスの皆の前に出るソフィ。男女関係無しに感嘆の声が上がる。白く長い髪が、朝日の差し込む教室内で輝いているようにも見えた。


 「皆さん初めまして、ソフィーヤです。先生の紹介の通り、少々交通トラブルに引っかかってしまい、今日まで転入日が伸びてしまいましたが、以後お見知りおきを」


 Aクラスの皆を魅了するソフィ、その彼女は響也を見つけるなり微笑んだ。


 (おいおい、ただでさえ目立ってる君が僕を目立たせるような真似しないでくれ……)


 響也は少し焦っていたが、意外と視線は感じなかった。外国人にしては流暢な口調、それだというのにクラス全員は一切気にしない様子で、彼女の魅力に駆られていた。


 『因みに成績は響也より少し下だが、それでも充分好成績だ。皆負けないよう勉学に励むように。あとクラスの人数が増えすぎのため、近いうちにクラスの人数調整――つまり誰かがBクラスに落ちるから注意しろよ』


 Aクラスの盛り上がっていた空気が一瞬で冷める。正直二人増えただけなら問題ないんじゃないか、と響也は疑問に感じた。


 『それじゃソフィーヤは響也の隣に座ってくれ。で、渡辺は自分の机と椅子を準備室から持ってくること、以上!』


 渡辺と呼ばれた男子生徒が文句を垂れながら教室を出る。それを皮切りに男子勢がソフィに群がる。


 「あっきれた、これが男ってヤツ?」

 「あはは……まぁまぁ」

 「全員がマスターみたいだったらいいのに」

 「いや、それはどうかと思う」

 「おい」


 小夜が呟いたことに口を出し雑談し始めると、不意に後ろから声がかかった。


 「タケルか。どうした?」

 「いや、あのソフィーヤさんがお前に微笑んだ気がしてな」

 「あ、それボクも思った」

 「そうか、気のせいじゃないか?」


 心なしか殺気に似た感情が小夜から放たれた気がした響也は、知らんぷりを決め込もうとした――が。


 「響也、一週間ぶり!」

 「ぅわっと!?」


 急に抱きついてきたソフィによって水泡と帰した。


 「だ、抱きついッ!?」

 「一週間ぶりって……?」

 「あー……」


 抱きついて響也の胸に頬を擦りつけるソフィと、Aクラス全員の視線を独り占めさせられた響也は、現実に頭を抱えた。


 (こりゃ、いろいろ面倒なことになりそうだ……)


 椅子ごと倒れて後頭部を軽く打った響也は、今後の不安感を打ち付けられた気分だった。

今回はバトルを入れてみました。やっと出せましたソフィちゃん。今後は天然キャラとして暴そ……もとい、奮闘していきます。


実はこれ、一回保存失敗して約三時間分のデータが消えてしまったんです。いやはや、よく頑張った私……。


個人的には頑張りました。次回は第二話です。さぁ、今後の展開はどうなるでしょうか!乞うご期待!

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