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#6-3

低クオリティですが、まあなんとか修正して形にして行きますね~。

では、どうぞ。

 「「……」」


 なんとなく気まずい雰囲気が、帰路についている小夜とタケルの間に漂っている。

 普通に目が開けなくなるほど眩しく輝く夕日と対照的に、タケルの表情は暗めであった。


 「あのさ、大丈夫?」

 「……」

 「おーい」

 「お? あぁ悪い、聞いてなかった。どうした」


 暗い表情をしていたにも関わらず、小夜に反応する際は明るい顔をしていた。もしかしたら考えているだけなのかもしれない。


 「元気なさそうだけど、大丈夫?」

 「――おう、勿論! 郁美に負けたくらいじゃあへこたれねぇぜ!」

 「そ、それならいいんだけど」


 明るい顔。

 近くにいるからこそ分かる、と言いたいのだが、これは流石に誰でも分かる。


 明らかに無理している、(ある)いは悩み事があるということが。


 「やべ、ちょっと用事があるから急ぐわ。またな!」

 「うん、またね」


 勢いよく手を振るタケルに、笑顔で手を振り返すのが小夜の精一杯だった。妙に詮索するのは逆効果になることを知っていたからだ。


 夕日に向かうかの如くまっすぐ駆けてゆくタケルの後ろ姿をジッと見つめながら、小夜は溜息をついた。


 「私も、何か力になれたらなぁ」


 そんな小さな願望も満たせない現実に、ちょっとばかり悲しくなる小夜であった。




 「はぁ……はぁ……」


 負けた。


 「ハァ……ハァ……ハァ……ッ!」


 負けた、負けた、負けた。


 「ハァ……ぐ――ゲホッ!?」


 むせる。

 いつまで走ったのだろうか、息が苦しい。肩の上下が激しい。喉は乾きのせいで傷みを伴いながら接触と剥離を繰り返す。身体も疲れて立っているのも面倒だ。


 「ゴホッ――う、うぅ……」


 とても疲れた。

 それだけならいいが、どうも悔しさが残ってしょうがない。


 「クッソ、あの試合に勝てたら俺は……俺はアイツに……」


 また走る。

 息はまだ整っていない。

 おかげで肺と喉は冷えたような感覚に襲われ、余計に苦しく感じる。

 それでも構わず、あかね色に染まったアスファルトの上を一心不乱に走り続ける。


 「もっと……もっと強くなりたい……!」


 彼は今我を忘れている。

 それほどの思いが、先の試合にあったからだ。

 彼は、思いを果たすことができなかったことを相当悔しく思っていたのだった。


    ◇ ◇ ◇


 「これが、あんたに渡せと言われたブツさね、さっさと受け取って帰っておくれ」

 「校長、質問いいスかね」

 「なんだい?」

 「コレってまさか、最新の“モノ”じゃあないでしょうね」

 「知らん。私ァただの仲介人、渡されたものがどういうものかは知らんよ」


 渡良瀬と校長が、見慣れないコンクリートで固められたある小さな一室に立っていた。

 ちょっと窮屈すぎな気がするくらいのこの部屋には特に特筆すべきものはなく、精々ちょっとした立体画像展開モジュールが中心にあるくらいだ。

 渡良瀬が言っているのは、この立体画像展開モジュールによって展開されているある画像のことを指している。

 ちなみにこの立体画像展開モジュール(一般にモジュールと言われている)というものは、二次元にある情報を、E,W,を介さずに、肉眼で立体的に画像を確認できる機械のことだ。


 本来モジュールとは尺度、測定基準、規範の意。つまり建築物でいう、各部分を一定の大きさの倍数で統一するとき、その基準となる大きさを指すというものである。

 しかし、この立体画像展開モジュールは元々建築士用に作られたものであり、それがキッカケで作られた、言わば副産物のようなモノなのだ。


 正直なところ、これはVRで代用できてしまうため、最早なくなったも同然の失われた技術、技術者から言わせればロスト・テクノロジー、またはヴァニッシュ・アドヴァンサー(消えゆくもの)というものである。


 「あと、これは随分古い機械ですね。それもヴァニッシュ・アドヴァンサーですか……イタッ」

 「私の前で二度とそういう名前を言わないで頂戴」

 「ってことはつまり、校長は元――」

 「それ以上言ったら、どうなるか分かっていますか?」

 「――ワタシ、ナニモイッテナイヨ」

 「賢明な判断です」


 これは市販の粋から捨てられた電子機器。

 EFM社(プロローグ参照)の作り上げたVRによって消え去った工業系の会社は数知れず。

 既にEFM社が出現してから相当な時間が経っている現在、段々とそれを実際に体験した人間は減少している。

 今となっては少人数となってしまった生き残りが語り継ぐことがある。


 「“終わりの始まり”ねぇ……どうしてそんなことを言うんだかねぇ」

 「私ァ知らんと言っている、全く。でもまぁ確かに、変ではある。普通に言えば“終わりと始まり”だろうに」

 「お、これに食らいつくってことはやっぱり」

 「いい加減にしないとクビにするよ」

 「――ワタシ、ナニモイッテナイヨ」

 「初めからそうしてればいいのにねぇ」


 校長は溜息混じりで目の前のグラフィックに目をやる。


 「JEWSPは一体、何を考えてるんだろうねぇ」

 「あー、どうでもいいけどさっさともらいますねーっと」

 「どうした、結構急いでるようじゃないか」

 「あはは……意外にも教え子が成長していてね、身体が痛くて」

 「なんだい、あんたの方が年食ってるじゃないか」

 「いや、さすがにあなたほど酷く年食っては」

 「渡良瀬は殉職か、残念だねぇ」

 「――ワタシ、ナニモイッテナイヨ」

 「もうそりゃあいいから……」


 渡良瀬と話している間に、謎に包まれた校長の一部に明確な事柄が浮かび上がった。

 それは、過去にEFM社と何かしらの関係があった、ということだ。

 一体どういう関係があるのかはまだまだ分からないままだが、なかなかに不穏な影が見えた気がした。


 少なくとも、渡良瀬には。


    ◇ ◇ ◇


 「なぁ、今このタイミングで言うのもなんだけどさ」

 「どうした、急に真顔になって」


 ここは響也の自室、正式には貸出しているアパートの一室。

 現在日差しが赤から段々と暗くなってきている最中。そんな中、貞喜、ソフィ、響也の三人はテーブルを囲みながら雑談していた。


 賃貸と言わないのは、料金に理由がある。

 本来料金を払うことで部屋を借りるが、このアパートではほぼ料金を払わずに住むことができる。勿論条件は幾つかある。例を挙げれば、特定の任務の最中、階級が規定以上(これは場所によって異なる)、EWSPとしてある程度の功績を残していることなどだ。

 響也たちはその条件下にあるのでほぼ無料、というわけだ。

 ちなみにある一定料金を超過した場合、その月の料金を“まるごと”本部に払わなくてはいけない。超過したか否かは、本部から直接送られてくる。アパートは管理人に関係なく、その部屋のデータをプライバシーを侵害しない程度に電脳世界を通して管理されている。

 いっそのこと、直轄(ちょっかつ)のアパートでも作ってしまえばと思うのだが、今回の場合は潜入任務であり、少しでも一般の空気に溶け込むことが第一優先として考えられることによる、当然といえば当然の結果なのである。

 あくまでJEWSP内での規定事項だが。


 「うーん、今更感タラタラなんだが」

 「婚約的な告白!? も~、早く言ってよ! 期待しちゃうじゃない」

 「違う、そうじゃない。僕たちの敵の話だ」

 「なんだ、ウィルスだけだろう」

 「あ~、そうじゃないんだよ」


 貞喜が何を当たり前なことをといった風に腕を組み、背中を反らせながらながら答えると、それと同時進行するかのように響也が前屈みになって眉間にシワを寄せて腕組みをする。


 「ウィルスは支配者(マスター)が人体を操作できるように脳波に干渉するものだろ?」

 「あぁ、そうだな」

 「イコール、初期の雲形を除いたウィルスは全て支配者がいるってことになる」

 「うんうん。それで?」

 「これは最近思ったことなんだが、人型の装甲が複雑化して厚くなったり、自己再生――というよりかは換装か。そんなことをやってみせたり。どうも人間が単独で行えるような性能と進化じゃあない気がするんだ」

 「――つまり?」

 「うぅ、確証はないんだけど……」


 響也が息を軽く吸ってから、吐き出すように自然に、冷静に口を開く。




 「故意にウィルスを製造し、何かを企んでいる組織がいる。それも視覚的な意味で常に間近にいるかのようなね」




 吐き出された推測は、他の二人の顔を強ばらせるには十分な意味を有していた。


 「どうして間近にいるなんて言えるの?」

 「だから確証はないって。でもな、ウィルスの出没する場所が妙にタイムリーで近すぎやしないか? 現に私やソフィがいない間、生徒に対しての被害がない」

 「偶然じゃないのか?」

 「いや、それはないと思う。生徒のみんなは全く触れていないが、僕らが来るまでの間に高嶺学園内の男子生徒が襲われて傀儡化したのは事実。なら、普通はもっと多発してウィルスが来てもいいんじゃないか?」

 「「う~ん……」」


 響也の言葉に、ソフィと貞喜が唸る。


 「確かに一理あるかも知れん。だが、証拠は?」

 「証拠とまでは言えないけど、少なくとも学園で出没したってことは、その付近に支配者がいる可能性が高いだろうと思う。仮に遠ければ、操作できたとしても、コントロールを奪った相手がどんな人間かは直ぐに確認できないだろうしな」

 「残念だったな、それはない」

 「どうして? 説明してほしい」


 勝ち誇ったように腕を組み直し、胸を張る貞喜。響也はその態度には反応せず、素直に理由を尋ねていた。


 「今現在の時点では、市販自体されてはいないものの、VRを使って狙った場所にアバターの視界を置いてそこから固定望遠鏡的な見渡しが可能だ」

 「……分かりやすく頼む」

 「つまり好きなところに遠隔操作の眼球を置けるんだ」

 「なにそれグロイ」

 「例えだ、例え」


 まぁとりあえずは納得。要するに座標さえ分かっていれば、どんなところも見ることができる訳だ。


 「しかも厄介なことに、フィルタを回避するものまで出回っているらしい」

 「なんだって?」

 「とりあえず、注意しろ。未だ音声まで拾うまでには至っていないようだが、逆にそれは今の内なんだからな」

 「了解した」


 この潜入任務に就く前に聞いた、相当な手練(てだれ)。これは本当に強力な敵であることを実感した響也であった。


 「んじゃ、私はそろそろお(いとま)しようかね」

 「ん、帰るのか」

 「だって、ホラ」

 「む」


 指を指された方向に目をやると、腕を組んだまま寝ているソフィ。コックリコックリと船を漕いでいる。


 「疲れてんのかね」

 「まぁ、そうだろ。お前が倒れている間、一人でずっと学校の番をしていたんだからな」

 「……そうか。あぁ、ちょっと待って」


 響也は静かに立ち上がり、キッチンの上にある小さな収納からタッパーを取り出し、何かを詰めた。そしてそれを更に袋に詰めて貞喜に差し出す。


 「ほら、僕特製のシチューさ。今父さんがどこ住んでるかは知らないけど、これならむしろ時間が経った方が美味しいだろ?」

 「……」

 「どうした、嫌いだった?」

 「いや、ありがとう。それじゃあ、帰ったらありがたく食べさせてもらう」

 「あぁ、味わって食えよな」

 「……うむ」


 受け取った貞喜の顔は、至って真面目であった。まるで、考え事に浸っているかのような、別に無視されている感じでない表情で。そしてそのままロクな反応をせず、響也のアパートをあとにした。


 「一人でずっと、か。そりゃあ疲れるよな。だいの大人が秘密を隠しつつ敵と戦っているんだから、無理もないか」


 そう呟いて、響也はソフィを抱きかかえる。


 「んぅ……」

 「……もうちょっと腕鍛えないとな」


 女の子を抱きかかえている感動よりも自分の腕の力を気にする響也は、多分真面目――というよりは大人らしくなったように見える。こういう部分がもっと分かりやすければ。


 「童顔に見合った力量じゃあ、ソフィに見劣りするからなぁ……」


 そもそも童顔などと言われるようなこともなかったであろうに。そうすると潜入任務を与えられることはなかったかもしれないというのはここでの話。


 「ソフィって案外軽いんだな。こんな体でよく学校を支えていたんだなぁ」


 両腕に乗せているたった一人の女の子のその姿に、華奢なイメージが追加される。

 柔らかい肉、軽い身体全体、女の子らしい可愛い寝息、そしてなんとなく漂う女の子の香り。


 「女の子に頼りっぱなしじゃあいけないな。ソフィはちゃんと僕が守れるようにならないと。彼氏として――かな」


 なんだか妙に照れくさい感じがするが、ソフィの彼氏であることに不思議と幸福を感じていた。

 ついでにその女の子を抱きかかえていられることを。


 「って、なにやっているんだ僕は……さっさとベッドに入れてあげなきゃ」


 正気を取り戻し、言った通りサッサとさっきまで座っていたベッドにソフィを寝かせる。


 「お休み、そしてこれからもよろしくな」


 額を撫でる。手が通り抜ける際にサラサラと流れる白い髪がとても綺麗で、ついもう一周してしまう。




 「……やべ、飯食わねぇと」


 彼が夕御飯を食べていないことに気付いたのは、数十分撫でたあとのことであった。

ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。

今回は特に目立って面白くないかもです。

まぁ今後に期待ってことで、ひとつ。


あ、あとですね、今回は他と比べて文章量が増加しています。

多分今後もこうやって増加していくかもしれないので、どうぞよろしくお願いします。


ではでは次の章で~。

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