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#5-3

どうも、長らくぶりです。


今回はちょっと長く書いてしまいました。


なまっちゃったかなぁ……?


あ、とりあえずごゆっくりどうぞー。

 ――同時刻、セキュリティー・オールマイティ社もといJ・EWSP本部研究室にて、二人の研究員が悩んでいた。その内の一人はチーフ、つまり小泉京太郎である。 


 「エリィの調子はどうだ」

 「相変わらず、どうも不自然に容量が増えています。おかしいですね、自然に増える量ではないですよ?」

 「分かった、ありがとう」


 研究部の一部では、妙な情報が流れていた。最新のエリィの定期通信から出てきた自身の構成情報量が大幅に上昇しているという結果が出てきたのだ。ちなみに定期通信とは、エリィが自身の意思で送る手動送信(ただし人間が行うものではないので自動でも間違いではない)ではなく、勝手に情報を通達するシステムのことである。


 「チーフ、エリィは現在起動していないようなので一旦置いてもらいまして、こちらのデータですが、やはり現段階ではどちらも実装不可能域を脱しない結果となりました」

 「エリィはまだ仕方ない、彼女は未完成なのだから。しかしもう片方はなぜだ」

 「理由は分かりませんが、二機同時接続実験は、完成された二丁のベック間での情報の食い違いによる接続不良か拒絶反応を起こしているものと推測されます」

 「同じベックをフルコピーして作成はできないのか?」

 「はい。最悪の場合、時間はかかりますが、ベック自体最初からこの『モデルチェンジ』使用の形式で作っていくことになるかと」

 「そうか。早く仕上げなければな、市民や響也君、そして――上層部の方々のためにも」


 二人の研究員が目の前のデータを眺めながら会話をする。その視線の先には、何やら二つの物体が接続、分離を繰り返すグラフィックが展開されていた。


    ◇ ◇ ◇


 おかしい、すごくおかしい。


 なんでこんなに嬉しいのだろう。


 胸の奥がじんわりと温かくなってくる。


 ここまで他人に感情を表したことなんてなかった。


 目の前に等身大で映るその人物が、ここまで自分に影響を与えていたなんて気付かなかった。


 その人物は微笑んでいる。


 今までの無表情とは打って変わって、薄くても伝わる優しい笑顔に、安心感に似た何かを私に与えてくれる。


 嬉しいから笑っているのに、なぜだろう。


 涙が、止まらない。


 『ソフィ、どうした?』

 「きょ、響也ぁ」

 『いや、だから僕だって。頼むから泣かないでくれ』

 「だって、だって……ッ!」


 通信に響也の全身が映った瞬間、反射的に抱きつこうとするぐらいにまでソフィは喜んでいた。実体のないものに抱きつこうとするとどうなるかは想像に難くないが、結果盛大に転んだわけだ。響也が驚くのも無理はないだろう。


 「響也、無事なのですか?」

 『お、エリィ! よかった、やっぱりそっちにいたんだな』

 「……エリィちゃんには随分と明るく接するんだね」


 ソフィに対しあまり大きな反応はしなかったのに、エリィに対しては嬉しそうに声を掛ける。そんな姿がソフィには面白くなかった――いや、正直これは軽い嫉妬のレベルだった。


 『いや、ちょっとエリィにしか頼めないことがあってだな。ついでにソフィ、このあと家に来るか?』

 「え――もっかい」


 そんな嫉妬なんていうものをソフィが知覚していない内に、響也が突拍子もないことを言い出した。耳がおかしくなったのだろうかともう一度聞きなおす。


 『だから、家に来ないか?』

 「ふむふむ、響也の家にお邪魔、放課後の遅くにお邪魔……」

 『なんか、よからぬことを考えてないか?』


 今までで一切考えつかないことが現在起こっている。確実に放課後から向かうとなると、夕方も終わり頃といったところだ。そして二人は大人。

 ソフィは真っ赤になって困惑ばかりしており、頭がショートしそうだった。

 そんなソフィに対してエリィは、なんだか異様に冷たい目線を響也に送っていた。


 「響也、随分積極的なのね」

 『何言ってるんだ、エリィ。 今回お前を呼び出す必要のあるものは、ソフィにも関わっている、ただそれだけだ』

 「ふ~ん……照れちゃって、可愛い」

 『照れてない、というかお前早く僕のV・Rに戻ってこいよ』

 「はーい」


 平然と言葉を返す響也に対し、エリィはいつもと違ってそこいらの情報体のように無感情に言葉を返した。いや、無感情よりもまだ少しは(マイナスな意味で)感情が見て取れたのでぶっきらぼうに答えた、というのが最適だろう。ソフィに少し感化されているようだ。


 『ほらソフィ、どうするんだ……ソフィ?』

 「はひっ!? ななな何かな!?」

 『はぁ、もういいや。お前来い』

 「り、了解でし!」

 「まずは落ち着くべきですね」


 しっかり熟れたトマトのように真っ赤になった顔で響也の自宅に上がることに敬礼付きで賛同するソフィ。とりあえずソフィはまともな判断ができないと響也は判断したようで、半強制的にだがソフィを家に招くことにした。いつの間にかしっかりとエリィがデータを響也の元に移し終えたことを確認し、お互いに通信を切断した。


 「う、うわぁ……今すっごい真っ赤だよぅ。でもな、なんだか……」


 通信を切断した途端、両手を顔に当てながら赤面するソフィ。その姿はまさに恋する乙女だ。


 「し、幸せっていうのかな? こうして響也から連絡もらったのって初めてだし、それにお、お部屋にまでお呼ばれして……ッ!」


 きゃーっと完全に眼前を抑え、赤面したまま頭を振るソフィ。感情任せに体を動かすことのないソフィにとってはとても気分が悪くて、とても居心地が悪くて――とても、幸せだった。


 「チョッと暗いところはあるけど、ちゃんと男らしい面もあるのよね、響也って。でも私とおんなじ過去があって、私以上に悲しい他の過去も持っていて……だから、誰かが支えてあげるべきなんだ」


 幸せな気分になりながらも、普段の冷静な頭が何かを導き出そうとしている。ソフィは特に考えようなどとは思っていなかったのに考えてしまう、たまに出るクセであった。


 「決めた。響也にちゃんともう一回告白する。そして夫婦水入らずの幸せを掴むのよ……ッ!」


 ただし、完全には冷静になれていないようで、付き合いのあとに来るはずの関係まで頭に浮かんでいた。きっとエリィがいたら『まずは恋人からでしょうが』と呆れられそうであった。


 あるいは、真っ赤になりながら幸せそうに笑いつつ拳を作っている姿を見て、微笑みながら声にならない祝福の言葉を述べていたのかもしれない。多分悲しんだりもするだろう。情報体としてでなく――『人間』として。


 




 通信を切ったあと、ソフィは会長たちの元へ戻った。

 ソフィのV・Rの中には、既に自立思考型AIの姿はない。

 言うまでもなく、本来あるべきところへ戻っていったのだ。


 (チョッと寂しい感じはあるけど、またすぐに会えるよね)


 妙に帰宅時が楽しみになって、真っ赤な顔とニヤケが収まらない(収める気もない)ソフィに、周囲の生徒会メンバーは何があったのかの判断に困り、結局放っておくことに決めたのだった。


    ◇ ◇ ◇


 「で、いつまでいるつもりなんだよ親父」

 「一生」

 「包丁がいい? それとも出刃包丁がいい? それとも――身おろし包丁がいい?」

 「わ、悪かった! というか、全部包丁じゃないか!? 種類豊富だなオイ!」


 通信を切った後の響也宅にて、親子の仲睦まじい(?)光景があった。一見犯行現場になりそうな雰囲気だが、実際にそんな光景にならないのは、やはり仲睦まじいと言うべきであろう。


 「いい加減にしてくれ、ずっと寝ていた病院から退院したばかりで体調が万全じゃないんだから」

 「う、うむ。渡すものは渡したから、実質すぐに本部に戻るだけだ」

 「じゃあ帰れよ……ッ!」


 いい加減にしてほしい、というのが響也の本音であった。そもそもこの家に入られた時点で何だか嫌な感じがしているのに。許可なく入られること、これは響也に限ったことではないだろう。考えてみてほしい、誰も呼んでいないのに部屋に誰かいることの恐怖を。ワンルームという狭さがその恐怖を倍増させていることがどれだけ恐ろしいことか。


 「ソフィちゃんが来るのだろう?」

 「……だからどうした」

 「お前たち、付き合ってるんだろ?」

 「なッ!? あれはあっちが勝手に言っているだけで」

 「あ、付き合ってたんだ」

 「――Do you want to die,don't you?(訳:死にたいのですか?)」

 「引っ掛けられたからって殺さないでくれよ……」


 そんなことを思っている内に話題がソフィに転換される。正直なんでも知っているという雰囲気を持たれるとなんだか腹立たしく思う。人間関係にあまり干渉してほしくないものだと響也は感じた。


 「まぁとりあえずだ、親として息子の成長を見届けなくてはな!」

 「ったく、勝手にしろ。夕飯の用意してくる」

 「おい、データについての話は?」

 「ソフィが来たら一緒に聞けばいいだろう、二回も説明する必要はないしな」

 「そうか、分かった」


 響也が玄関すぐ横の小さなキッチンに立った。それと同時にベッドの上から足だけを投げ出し、貞喜はVRを装着した。


 (そう、私は響也とソフィの関係を監視しなくてはならないのだ。EWSPの情報は常に機密がつきものだ。そもそも私は、本名を私生活で利用するなんて方向は間違っていると思うのだ。たとい情報社会が二十一世紀よりも進んでいる現在が情報を重視するとはいえ、現実は疎かにしてはならないのだ)


 貞喜は心で現在の世界を否定しつつ、電話の回線を繋いだ。


 『おや、貞喜さんじゃないですか。どうしました?』

 「京太郎、今電話はOKか?」

 『問題ありません、何か御用でしょうか』

 「あぁ、私なりに少し考えたことがあってな。メモとしてそちらにデータを送るから参考程度に頼む」

 『メモですか、了解です』

 「以上だ。簡単なことでわざわざ電話してすまないな」

 『いえいえ、では』


 通信を切断するとともに、J・EWSP本部研究室宛にメモを送信する。


 「ふぅ……」

 「どうした親父、本部にお呼ばれでもしたか?」

 「いや、なんでもない。ところでなにを作っているんだ?」


 軽く香ばしい香りとともに、食材が油の上を踊る音が聞こえてくる。コンロではなくクッキングヒーターを使っているために本格的にはフライパンを動かしてはいないが、代わりに響也の腕がせわしなく動いている。


 「ん~? 簡単に済ませようかと思ってね、E,W,で拾ったレシピを元に特製チャーハンを作ってる」

 「チャーハンか。レシピを使っている分、まだまだだな」

 「うるさいなぁ、しょうがないだろ? 母さんに教わらなかったんだから。そういえばさ」

 「ん?」

 「母さんがどうして死んだのか、教えてもらってないよな。ソフィが来ない今の内に教えてくれよ」

 「そうか」


 響也が目の前のフライパンに集中しているおかげで分からなかったが、明らかに貞喜に影が差した。彼は妻が死んだ要因を『知らずに』使用している響也の姿と、今まで貞喜が隠し続けている過去の事実を知りたがっている現状が、貞喜の普段の能天気を少しだけ崩していた。


 「――単なる事故死だ。高速道路での大型トラックとの衝突、即死だったそうだ。おかげで私は恐れをなして車に乗れなくなったワケだが」

 「そうだったのか。悪かったな、思い出させちまって。まぁその、教えてくれてありがとう」

 「なに、気にすることはない」

 (なぜなら嘘でしかないからな)


 それからというもの、お互いに言葉は続かなかった。響也はなんともなかったが、貞喜は実に居心地の悪い状況であった。


 (俺はいつまで、響也を――実の息子を、欺くつもりだろうか。思ったより……辛いな)


 自身の過去の覚悟が揺らぐ。響也に向って『自分が殺した』などとは、どうしても言えなかったのだ。


 部屋には、ジュウジュウという乾いた音だけが響いていた。

お疲れ様でした。


どうでしたか?


少しだけシリアス多めにしたのですが……内容軽かったかな、読みづらかったかな?


うぅ、久しぶりというのは不安ですね。


ではまた次の投稿で。

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