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◇偽りの領主①

愛って、なんですか・・・?

 私の傲慢な命令で、セドリックによって即座に即座に集められた女達は、私の予想していた通り、日焼けの一つもしていなかった。


 それどころか。


(これで良く今まで持ったな・・・。)


 白く生っ白い、生気の感じられない女もいれば、明かに肥え過ぎた女も数人いた。


 いくら見かけだけで人を判断してはならないと言われてはいても、こうも違いが出ているとは。


 思わず重い溜息が出てしまう。


「貴女達は今まで何をしてきたの?子育て?家事?いいえ、違うわ」


 いつの間にか傍に控えていた侍女(馬車で追いかけてきたともいう)に、答えるように促せば、私のその横柄な態度に憤りながらも、侍女は答えた。


 その隣では、シュリが珍しく嘲笑の笑みをアイスブルーの瞳に浮かべていた。


 シュリには判っていたのだろう。

 侍女が述べた言葉が、私が求めている答えではない事を。


「貴女達は何もしようとしなかった。いえ、しなかったのよ。耳を閉ざし、口を閉ざし、目をも閉ざし、何もしようとしなかった。料理と掃除、洗濯、子育てさえしていれば女と言える?」


 コツリと、女達の前に歩を進める。


 決して見縊られない様に、侮られないように。

 それどころか、憎まれるかのように、高飛車で、高慢な支配者を演じるかのように。


「笑わせてくれるわ。そんなの男だって出来るわよ。ねぇ、セドリック」


「はい。」


 私に忠誠を誓ったばかりだと言うのに、老執事は私の言葉にすぐさま頷いてくれた。


 私はそれに勇気を得て、びゅんっと、鞭を撓らせ、女達に命じた。


「昨日からここイルファドールの領主は私です。よって、貴女達はおろか、ここの領民は全て昨日からこの私に従う義務が発生しました。」


 私はこれから修羅の道を歩むことになるのだろう。


 だけど、もうこれは決めたことなのだから。


「本日ただ今を持ち、貴女方女性陣にも外で働いて貰います。逆らうのは許しません。今やイルファドールは破綻寸前。働かない者には飢えて死んで貰います。」


 私の命令に、女達は惑い、逆らう人間もいた。


 当然私はその者には一切の情けも掛けず、結果、その女は呆気なく死んだ。


「土地を修めるのは慈善では出来やしないのよ。貴方達の税金を貰う代わりに、私達は自分の身を売り、望んでもない家に入り、子を成し、平和を勝ち取る為、腹を探り合っているのよ。命を削りながらね。」


 涙を流し、悲しみに暮れる家族を前にしても、私は感情を表には出さなかった。


 その代りにその家族には三日の休日を許可した。


「判りにくい優しさですね・・・。」


 その私の判断に、セドリックはそう苦笑を洩らした。



 後日、私の打ち出した計画がその当時としては非常に異端だったらしく、それと共に、命令に逆らった者に情けを掛けなかった事が一緒になり、イルファドールには一つの噂が実しやかに流れた。


 セドリック曰く。


 ――あの女領主は、血も涙もない、恐ろしい魔女の様な血を好む独裁者だ・・・。


 と。


 当然このような醜聞は、即座に王都にいる王家や、名前だけの夫の耳にも届いた。


 そしてそれが切っ掛けとなったのか、その召喚状が届いたのは、丁度イルファドールの新しい収支報告書が出来上がり、軍規を整え終えた日だった。


「ふん、何処にもネズミはいるんだな・・・。」


「そのネズミはどうなされます・・・?」


 シュリのねっとりとした甘い声に、私は嗤った。


 その笑みを見た哀れな羊は蒼くなり、その場に倒れた。

 

 倒れたのは、国と国王を守るべく名誉ある近衛騎士。


(これがこの国を守っている騎士か・・・。)


 情けないのも程がある。

 このような人間が強いというのなら、この国は案外脆いのかも知れない。

 

 でも今はそのような事を案じている暇はない。


 私は召喚状が届いたその日の内に、セドリックとすっかり傷の癒えた獅子とシュリだけを連れ、僅かな金子と報告書だけを持ち、10日を掛け、王都へと戻った。


 そこで、あの人と再会する事も知らずに・・・。


  

 だけどこの事が無ければ、私は恋を知らずに死んでいたのかもしれない。


 そう思ったのは、恋心を知った日の翌朝の事・・・。

だいぶ変わりましたね。


でも、こうでもしなきゃ、話は繋がらないので。

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