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◇面影

宰相・がウリ―視点

 そんな筈はない。

 そんな筈はないのだ。


 それなのに、何故・・・。



 白銀に近い金髪の長い髪に、菫色の瞳。



 ふらふらとした足取りで役宅に帰れば、妹のクレアが能面の様な顔立ちで私を出迎えた。

 これでもこの妹は、嘗ては現国王の王弟殿下に仕え、誠心誠意に支えていた。

 その妹が蒼い顔色をして帰ってきた日には驚いた。


 元々は妾腹腹の半分しか血の繋がっていない妹。

 それでも妹は妹。

 愛情はあるし、愛おしくもあった。


 並々ならぬその顔色に何があったかと問い詰めれば還ってきたのは、懺悔にも近い願いだった。


『お兄様、私は死んだ事にして下さい・・・。後生です・・・お願い致します。』


 泣き崩れ、その細い肢体を震わせ、腹を庇う様にする妹に一つの疑問が湧き、それを確かめる為に顔を合わせれば。


『お兄様、私は罪深い女です。愛してはいけなかったのに、求めてはいけなかったのに、私は、私は…っ』


 興奮した妹をなんとか宥め、事情を聞けば、婚約者に裏切られた殿下を慰める為、一度だけ重ねた身体。

 その行為の末、身籠ってしまったと言う。


『お兄様、私はどうすれば・・・、』


 妹は悩んでいた。

 このまま産んでもいいのか、それとも、腹に宿る子と共に、真実、この世から去るか。

 私からしてみれば、妹には生きていて欲しかった。

 だから。


『いいか、クレア。お前はその子を産むことだけ考えていなさい。産まれた子は、私と妻のセリーヌで育てる。だから決して早まるな。』


 妻にも同意を求めれば、妻も快く引き受け、同意してくれた。


 そして生まれたのは。


 一人はクレア譲りの金色の髪に、緑色の瞳の男児。

 そしてもう一人は、王族の血を引いていると一目でわかる美しい女児だった。


 これには父や母も大層驚きはしたものの、妹の判断を良くやったと褒めた。


 

 王族の子を孕み、なおかつ勝手に産んでしまった上に、その生まれた子が双子。



 これが表沙汰になれば我が家は終わりだった。

 だからこそ、妹は死んだ事にし、(これは王弟殿下に伏せたまま。)妹のクレアは私の愛妾とした。

 妻もそれが良いと賛成し、賑やかにも楽しく暮らしていた。


 でも、その幸せな暮らしも長くは続かなかった。


 それは子供たちの一歳の誕生日前日。


 真夜中に突然侵入してきた賊に、ありったけの貴金属が盗まれたのだ。それだけなら大した問題ではなかった。貴金属は聞こえは悪いが、欲しければまた買ってしまえばいいのだ。


 問題となったのは双子の片割れが、その賊に攫われた事だった。


 捜そうにも、誰にも言えなかった。

 

 クレアは自分を激しく責め、遂には感情を失ってしまい、今では笑いもしなけば、泣きもしなくなった。

 なのになぜ、今になって・・・。


「クレア、落ち着いて聞きなさい・・・。」


 もし、見間違いでなければ、あの子は・・・。


「クランシーアが、生きていたんだよ。見つかったんだよ。クランが、あのクランシーアが。」


「・・・、クラン?」


「そうだ。あのクランだ。」


 急な事に信じられないのか、妹は何度か口の中でクランと呟き、そして両手で顔を覆い、涙を流した。

 

 妹のクレアが数年ぶりに流した涙。

 それを嬉しくも思いながら、私はこれからどうすべきか迷っていた。



 

久しぶりに更新。

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