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ふぁでぃす・ばでんでぃん! ~バッドエンドからはじまるループもの~  作者: 作一生一
ミズコガエシ編

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*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 7月8日(木曜日)

 8時1分、ナナマート北店付近

*━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━*

 

 ……どれだけ前の世界の再現を心がけても、中にはどーしようもないことだってある。

 

 生理現象なんて、その最たるモノだ。

 

 だから昨日の件は――結果的にだが、ケイジ叔父さんたちの話を盗み聞きしてしまったのは、本当にただの偶然である。トイレで下に降りた際、たまたま二人の会話が耳に入ってきたのだ。

 

【俺】

(学校に……泥(・)棒(・)?)

 

 いや、この言葉は不適切かもしれない。

 

 カホ叔母さんいわく、何も盗(と)られてなかったのだから。

 

【俺】

(だから泥棒っつーより……不審者、か)

 

 いずれにせよ、この情報もまたn=0の俺では知り得なかったことだ。

 

 察するに、やはり叔父さんたちが気を遣(つか)ってくれたのだろう。

 

 昨日の会話では、ソレらしき発言もあった。

 

【俺】

(問題なのは――)

 

 その不審者。

 

 はたして連続失踪に関係しているのだろうか?

 

 ……これについてはわからない。

 

 一晩かけ考えてはみたものの、答えは分厚い灰色の雲の中である。

 

 現時点ではあまりに情報が少ない。

 

 なので結局この件に関しては〈気になること〉への追記にとどまった。

 

【俺】

(あと……藤代(フジシロ)の名前も出てきた、よな……)

(弐波(ニナミ)家が疑ってるって……)

 

 弐波。レイコの家のことである。

 

 別の言い方をすれば、代々の村長を輩出(はいしゅつ)している家系だ。

 

 この島にだって当然、日本の法律が定めた首長選挙があるワケだが、実質的にはほとんど世襲制である。

 

 そんな弐波家から睨(にら)まれていたとなると、藤代家の断絶は相当に根深いモノらしい。

 

 もしかしたら、ほとんど村八分のような状況かもしれない。

 

【俺】

(けど、一番気になるのは――)

 

 ケイジ叔父さんは言っていた。

 

【ケイジ叔父さん】

『よりにもよってこの時期に、またそ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)が起こるなんて……』

 

 カホ叔母さんはこうも言っていた。

 

【カホ叔母さん】

「今年の〝瑞古還(ミズコガエ)シ〟は――何(・)も(・)起(・)こ(・)ら(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)ん(・)だ(・)け(・)ど(・)」 

 

 二人の話をあわせると、こうなる。

 

 去(・)年(・)の(・)瑞(・)古(・)還(・)シ(・)で(・)何(・)か(・)が(・)起(・)き(・)た(・)――。

 

 俺はその〝何か〟について、ひとつだけ思い当たることがある。

 

【俺】

(失踪だ……! 藤代結(フジシロユイ)の……!)

 

 そうとしか思えない。

 

 藤代結の失踪。

 

 これまで、ソレがいつ起きたかとする決め手はなかった。

 

 だが、今回の叔父さんたちの話で確信を得る。

 

【俺】

(藤代結も……瑞(・)古(・)還(・)シ(・)の(・)時(・)期(・)に(・)失(・)踪(・)し(・)て(・)た(・)ん(・)だ(・)……!)

(ア(・)ツ(・)シ(・)た(・)ち(・)と(・)同(・)じ(・)よ(・)う(・)に(・)……!)

 

 こうなるとますます藤代結の重みが増してくるが、現状では手が打てないのが歯がゆい――

 

【ミコト】

「よ。おはよ」

 

 そこにミコトがやってきた。

 

 やはり、いつも通りのこの時間である。

 

 そのまま俺たちはキタテンの前を通り、学校へと向かった。

 

 道中、

 

【ミコト】

「〝瑞古還(ミズコガエ)シ〟?」

 俺は前の世界と同じ話題を振る。

「ああうん。あるよ、今年も。例年通り一九日に」

 

【俺】

「ってことは、あと一〇日ちょいか」

 

【ミコト】

「そうだな……てゆーかどうしたんだ、突然? そんなこと聞いてくるなんて」

 

 瑞古還シの話題。

 

 前の世界で俺は、この話をした途端、叔父さんたちが妙な雰囲気になったのを気にしていた。

 

 今ならわかる。

 

 アレはやはり、そういうことだったのだろう。

 

 ケイジ叔父さんたちは、藤代結の失踪を思い返していたのだ――

 

【俺】

「たしか祭りの最後に……ヘンな人形を流すんだよな。川から」

 

【ミコト】

「ヘンな人形って……オマエなぁ、バチがあたるぞ。〝八尾姫(ヤオヒメ)さま〟のバチが」

 

 そこから俺は前の世界の会話を再現し、ミコトから再び八尾姫伝説の話を聞く。

 

【ミコト】

「興味があるんなら今度また教えてやるよ」

 

【俺】

「おう、じゃあ頼むわ」

 そして頭の後ろに手をやり、神社のある還津山(かえづやま)の方へと視線を移した。

「にしても、そうか……もうすぐ夏祭りなんだな」

 

【ミコト】

「……うん」

「………。」

「………。………………。」

「………。………………。………………………。」

 

【俺】

「ん? おい、ミコト?」

 

 あらかじめ覚悟していたとはいえ――胸(・)が(・)痛(・)ん(・)だ(・)。

 

 急に黙り込むミコト。

 

 何かを言いづらそうにモジモジしながらそっぽを向くミコト。

 

 俺は……この世界の俺は、そ(・)の(・)理(・)由(・)を(・)理(・)解(・)し(・)て(・)い(・)る(・)。

 

 100%、この上なく正しく理解している。

 

 ミコトは、俺と一緒に祭りに行きたいのだと。

 

 その上で、

 

【俺】

「ああ。せっかくこーして島に戻ったんだからな。せいぜいがんばらせてもらうよ……で? 何時くらいに行きゃあいい」

 

【ミコト】

「じゃ、じゃあ……六時くらいに。〝キタテン〟の前で……待ち合わせ、しよ」

 

 こうして、シ(・)ラ(・)を(・)切(・)ら(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)。

 

【俺】

「おいおい、朝の六時ってことか? そんなに早《はえ》えのかよ」

 

【ミコト】

「は? ナニ言ってんだよ。夕方の六時に決まってんじゃん」

 

【俺】

「夕方⁉ いやいやいや、それじゃあ逆に遅すぎんだろ。ヘタしたら間にあわねーじゃねえか」

 

【ミコト】

「……え、だからナニ言ってんだオマエ。間に合うもなにも、」

 

【俺】

「祭りの準備の話だろ? 前日の」

 

 こ(・)う(・)し(・)て(・)、拒(・)絶(・)し(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)。

 

 しかもソレは――今(・)日(・)に(・)限(・)っ(・)た(・)話(・)で(・)は(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 むしろ〝今日から〟だ。

 

 今日から俺は、少しずつ未(・)来(・)を(・)変(・)え(・)て(・)い(・)か(・)な(・)け(・)れ(・)ば(・)な(・)ら(・)な(・)い(・)。

 

 そしてその変えていった未来では……俺がミコトと二人で祭りに行くことは、絶(・)対(・)に(・)あ(・)り(・)え(・)な(・)い(・)こ(・)と(・)だ(・)っ(・)た(・)――

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