神に選ばれし一族
掲載日:2026/04/24
村に住む彼らは特別な一族だ。
「お前らはこんなに良いものを食べたことはないだろ? こんなに良い家に住んだことはないだろ? こんなに豪勢な暮らしをしたことがないだろ?」
暇さえあれば一族はそう言って村人達を馬鹿にする。
村人達は何も言い返せずに無言で俯く。
「俺ら一族はお前たちと違うんだ。選ばれた一族なんだ」
そう言って一族はふんぞり返る。
村人達を戯れに殴ることもあった。
しかし、村人達はやはり無言で耐えている。
「羨ましいだろう。俺ら一族が」
一族はそう言う。
暇さあれば。
「変わりたいだろう。俺たちと」
そう言い続ける。
事実、一族はこの村で村長よりも強い権限を持つ。
「変わりたいと言えよ」
けれど、村人達は変わりたいなどと思わなかった。
いや、思うはずもないのだ。
「さぁ、神のもとへ参ろう。俺らはお前たちと違うから」
そう言って。
一族の一人が堂々たる足取りで神のもとへ向かう。
三年に一人。
生け贄をよこせと口にする悪神のもとへ。
その背を村人達は見送った。
彼らの存在に感謝をしながら――。




