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黒き箱舟は月を抱く ~社畜の俺が、最強の船と家族になるまで~  作者: クロミロク
第一章:白き断罪、黒き救済
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黒の救済

 水面すれすれに、黒いとばりが広がる。


 風が止んでいるのに、そこだけが“流れる”。拡散ではない。意図がある。



「海面に黒い…霧?」


「違う、粒子だ。磁性体エアロゾル……鉄粉!」



 黒い帳の中心で、何かが“立ち上がった”。


 船の輪郭はない。窓も甲板も煙突も見えない。


 見えるのは、砂鉄の帳が渦を巻き、巨大な影を覆い隠す様子だけだ。


 しかし、その異様な大きさは、否応なく分かる。



 帳の内側が水平線を押し曲げる。


 そこだけ海面が沈み、周囲の凪いだ水が吸い込まれる。


 全体像は掴めないのに、とてつもない質量だけが、こちらへ急速に迫る。



「第二目標、…巨大! サイズ測定不能、反射が飽和してる!」

「敵が増えたのか……終わった……」



 これが味方の増援だとは思えない。

不気味な黒が来た。それだけが分かる。



 だが黒は、いきなり攻撃をしなかった。


 海面に散ったオレンジ色 ――固定翼とヘリの乗員を示すマーカーだ。

損傷艦周辺の落水者。


 彼らの周囲へ、黒い“束”がいくつも滑り出した。

ワイヤではない。 砂鉄が束になり、輪になり、浮力体のように働く。



沈ませない。


引き裂かない。


乱暴に掴まない。



ただ、確実に“生かす”。



 多数の黒い円筒が落ち、瞬時に膨張し、漂流者を優しく誘導する。


 それは、救助筏 ――しかし艦隊が知るどの型とも違う。

波も風もない海面で、その動きだけが異様に正確だ。



「救助筏が…自律航行してる…?」


「要救助者に向かってる。拾う気だ…!」



 そして白の槍が、次の一撃を落とす。 狙いは損傷艦。

その延長線上には、救助筏の集団がある。



「来る――!」



 艦隊が身構えるより早く、黒が動いた。


 砂鉄の帳が一瞬で濃くなる。

霧ではない、幕だ。盾だ。 

空と海の境目に、薄い帷が立つ。



 白い槍が触れた瞬間、黒い粒子が白く灼けて火花のように散る。

光が鈍る。刃が欠ける。


 次の瞬間――黒い“塊”が、損傷艦の前へ身を入れた。



 かばった…!


 全体像は見えない。

だが黒が損傷艦の盾になったことだけは、誰の目にも分かる。


 白の裁きが黒い帳を削り、金属が軋む唸りをあげ、黒が“痩せる”ように薄れる。

削れた粒子が、戻らない。


――減っていく。



 それでも黒は退かない。 同時に救助も止めない。


 黒い筏が漂流者を集め、体温を守り、連絡灯を絶やさない。



 艦隊はその光を見て、ようやく理解する。



 敵が増えたのではない。 


 不気味な黒が来て ――我々の命を救っている。



 白の青空がざらついた。

雲ではないノイズが、円窓の縁を侵食する。


 空が砂嵐みたいに揺らぎ、そこに裂け目が走った。



「上空、空間が歪曲…裂け目!?」


「目標、虚空に切れ目を作ってる!」



 白は裂け目へ滑り込む。 

ある程度侵入したところで ―― スパッ――と、刃物で空を切ったような閃光が走る。



 裂け目の内側は消え、そこには普通の青空が残る。

そしてすぐに青空は閉じ始める。


 退いていた雲が戻り、曇天が元の重さを取り戻す。



 ――音が戻る。



 雨音。風の唸り。波の砕ける音。

遅れて、さっきの恐怖が“音”になって胸へ落ちてくる。


 豪雨が再開し、風が横殴りに吹きつけ、海は一気に荒れた。

視界が奪われる。嵐が戦場を覆い隠す。


 その混乱の中で、黒は“仕事”だけを残した。


 海面に救助筏が広がり、点灯し、漂流者を集める。

艦隊側が救難を再開できる“間”を、黒は黙って作っている。



 最後に、砂鉄の帳が薄れる。


 巨大な影は、嵐の壁の向こうで輪郭を失い――幻影のように、消えた。



 これが現実なのか、それとも幻だったのか、誰にも分からなかった。


 残ったのは、点滅する救助灯と、雨の匂いと、手の震え。

そして、白の荘厳さと非道の記憶。



 報告の結論だけが、異様なほど静かに確定する。



 ――死傷者、ゼロ。



 不時着水した航空機の乗員も、落水者も、全員生還。



 理解できない。


 国家が用意した最精鋭の艦隊が、あっという間に白に“無力化”され、それでも誰も死なず、そして最後に、不気味な黒が命を拾って消えた。



 海に残ったのは、救助筏の点滅と、鉄の匂いだけだった。



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