反省と焦り
葉擦れの音が心地よく響く森の中、木漏れ日に顔を照らされ微睡から覚醒する。
「……っはぁ!!ここは!?」
覚醒と同時に自分が意識を失った事を思い出し、周囲を警戒し臨戦態勢に入る。
周囲には複数のブラックアントの死骸、数はそれほど多くない。
「これは……そうか!レイギ」
意識を失う直前俺はレイギに外敵の排除を頼んでいたっけ……
しかし周囲にレイギらしき姿は見えない。
「まさか、レイギッ……」
「ガサガサガサ――」
不安になり周囲の探索をしようとした所、生い茂る草陰から生物の気配がした。
「――ッ!?」
その草陰から現れたのはレイギと最後に使役したブラックアントだった。
「お前たちッ、無事だったか!!」
駆け寄ってくるレイギとブラックアントは嬉しそうにカチカチと顎を鳴らしている。
主である俺が無事に目覚めて喜んでいるようだった。
「これは、お前たちが倒してくれたのか?」
周囲の状況を見渡し問いかける。
すると二匹は俺と同じように周囲を見渡すようにその場で回って見せた。
「守ってくれたって訳か、ありがとうな」
「「カチカチ!!」」
この二匹は十センチ程度の小さな体ではあるが、今や俺なんかよりも圧倒的に高いステータスを持ち合わせている。
彼らの助けで無事に居られたことにほっとする一方で、先の戦いにおいて反省点もある。
作戦自体はドンピシャで有効だったとは思うが、自分の限界というものを考慮に入れられてなかったのも事実。
その場のアドリブにしては良くやった方だとは思うけど、今回は運が良かっただけで次同じ状況で生き残れるかはまた別の話だ。
まあ反省点は色々あるのだが、今は身の安全を考えて拠点に帰ることを優先しよう。
「とりあえずここから移動するぞ」
そう二匹の従魔に声をかけ家へと歩き出した。
昨日と同様、道中でリンゴを収穫しつつ拠点へと戻ってきた。
「ただいま――」
そう虚しく独り言ち少し寂しさを覚えるが、レイギ達が後ろで寛ぐような仕草を見て、たとえ魔物だとしても決して一人では無いんだと思い心がすーっと軽くなる。
装備を置き収穫物を仕舞っている時、戦闘後にステータスを確認していなかった事を思い出す。
「変化はあるかな?」
アスラ・カウス
Lv1
H 30
M 31
体 10
力 10
守 10
速 10
器 10
魔 10
スキル
操蟲Lv1 原始魔法Lv1
総合戦闘力 60P
称号
始祖
獲得経験値 33/2000EXP.
確認してみた所、流石にレベルは上がっていなかった。しかし以前に確認した時にはなかった項目が増えていた。
「獲得経験値が33/2000になっている……」
2000EXP、レベル2が遠く感じる……
先の戦いで俺自身は魔物に止めは刺していないのでレベルは上がるとは思っていなかったのだが、これはどこかで経験値を獲得するような行動を俺が起こしていたという事なのだろう。
スキルの使用はあった、だが魔法での止めは刺していない。
「思い当たる節は……魔蟲支配か」
この世界では「戦闘に参加するだけで経験値が入る仕組み」もあるかもしれないが、その可能性は低いと考えている。
レイギを魔蟲支配で支配下に置いた時は経験値が発生していなかったからだ。
まあ、あれを戦闘状態と言っていいのか分からないが……
そうなると他の生物を倒した時に経験値が入っているという説が濃厚になってくる。
そして先ほどの戦闘で俺はレイギに対して魔物に止めを刺すように指示した。つまり俺のスキルで魔物を討伐したという判定になっているのだと思う。
そう考えるとステータス画面の変化は、初めて経験値を獲得したから起こったものであるとも考えられる。
俺の考察が的外れの可能性もあるが、筋は通っているしそうであると思っている。
この項目の変化で重要な事は、支配下にある魔物に止めを刺させることによって俺に経験値が入ることである。
このシステムをうまく利用すれば絶えず経験値を稼ぐことが出来るという事だ。
今思いつく魔蟲支配の運用法としては、複数のグループに分かれてもらい一グループが狩りに出ている間、残りのグループは拠点で休憩してもらい、戻って来次第待機していたグループと交代する。と言ったような交代制勤務のような運用法だ。
それを実現するには圧倒的に従魔の数が足りないのだが、目標としてその組織形態を構築するのは非常に面白そうだ。
「何だかワクワクしてきちゃうな」
全て妄想だが、今後の可能性に顔がにやけてしまう。
ステータスに関してはこんな所……
「ん、あれ? 魔力量が増えてる……!?」
レベルアップしていなかったのでパラメーターの変化を見逃しそうになったが、魔力量が増えている事に気が付く。
「え、なんで?」
レベルは上がっていないのに何故? レベルアップ以外にもステータスを上昇させる条件がある?
戦闘時、普段とは違う特別な何かが起こっていたはずだ。
「魔力の消費はあった、スキル、魔法、枯渇……あぁ、魔力枯渇か!」
それ以外に特殊な状態に陥った覚えがない、なので魔力枯渇が魔力量上昇に関係していると予想する。
当然魔力を限界まで使うのはかなり危険な行為だと今では反省しているが、ステータスが上がるとなれば話は変わってくる。
そこで俺はある疑問が浮かぶ。
これは魔力量に対してだけ起こる現象なのだろうか? それ以外のパラメーターにもこの法則が当てはまるとすれば……。
「鍛錬次第でステータスを上げることが出来る?」
体の仕組みを考えてみれば単純な事ではあるが、有酸素運動をすれば持久力が上がるし、筋力トレーニングをすれば当然持ち上げられる重量は重くなっていく。
守、速、器のパラメーターに関しても同様鍛えれば強くなる、肉体作りの基本だろう。
まだまだ検証の余地があるし仮説にすぎないのだが、レベルアップに大量の経験値が必要だと分かったいま、自身の強化手段がレベルアップ以外にも確立されるのならば時間を掛けてでも検証する価値があるだろう。
経験値取得やステータス強化の条件は今後しっかり調べていきたいと思う。
かなり脱線してしまったが、気を取り直し従魔たちのステータスも確認していく。
-レイギ-
Lv5 ブラックアント
状態:使役中
H 27
M 7
体 14
力 25
守 15
速 14
器 11
魔 9
スキル
噛みつきLv2(+1) 蟻酸Lv1 超個体Lv5
総合戦闘力 88P
獲得経験値 3/25
レイギはレベルが2も上がっており、ステータスもかなり強化されていた。スキルについても噛みつき攻撃のスキルレベルも2に上がっている。
「俺よりも強い……」
体長十センチ程の昆虫が俺よりも高ステータスなのだ。森で気を抜いたら一瞬で魔物の餌食だろう。
改めて考えると恐ろしい世界だ。
そしてもう一匹の新入りのステータスは……
-no name-
Lv4 ブラックソルジャーアント
状態:使役中
H 28
M 4
体 18
力 26
守 18
速 14
器 9
魔 4
スキル
噛みつきLv1 蟻酸Lv1 超個体Lv4
総合戦闘力 89P
獲得経験値 12/25
「やはり普通のブラックアントじゃなかったか! しかもレイギよりもステータスが高い!!」
スキル構成はレイギと同じであったが、よく見ればスキルレベルが低い。補正込みならばレイギの方が強いだろう。
それでも今の俺よりも断然強い事には変わりない。良い仲間を迎えられて気分が高まる。
新たに使役したブラックソルジャーアントのお陰で、これからは超個体を考慮して作戦を練ることが出来るしな。
どんどん魔物を使役していきたいところだ。
だけど今回、魔力限界により意識を失ったこともあり自分の限界を知ることの大切さを学んだ。
「多分、焦りが有ったんだな」
言葉にしてみると腑に落ちる部分があった。
まあこちらの世界に来てまだ二日目、仕方ない事ではある。次は気を付けよう。
今日の反省もそこそこに、新たな仲間の名前について考え始めた。
さて、どんな名前がいいだろうか?
お読み頂きありがとうございます。
ゲームのステータスみたいなのを考えるのが好きで設定を考えるのに時間がかかっていますが、続きも読んでいただけたら嬉しいです。




