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第6話 初めての出会い 初めてのドギマギ

カナタは、不良たちを前にして足をすくませる


カナタ「(う…うわ…!こういうの本当にあるんだ…!)」


対するシアは、いつもの調子で一歩前に出た


シア「え〜っと…俺たちちょっと急いでるんで、ここ通してもらえます?」


だがその瞬間、不良の一人がニヤリと笑い、一歩前に出てきた


不良2「おいおい、逃げようとしてんじゃねぇだろうな?」

言葉の端に静かに滲む威圧感


さらに他の不良たちも動き出し、四方からじりじりと距離を詰めてくる

気づけば2人は完全に囲まれていた


カナタ「(あかん…囲まれた……!詰んだ!)」


焦りと恐怖で頭が真っ白になりそうになる中、シアが小声で囁いた


シア「こいつら、あの有名な“不良高校”でもトップクラスにヤバい奴らだぞ…台風の日、靴下だけ履いて登校した事あるらしいぜ」


カナタ「パンイチじゃなくてクツイチ…?そういう意味でヤバい奴らなの?喧嘩強いとかじゃなくて?」


不良の一人が苛立ちを隠さず、声を荒げる。


不良1「おい聞こえてんだろコラ!さっさと金出せって言ってんだよ!!」

不良3「そうそう、財布置いてけや〜!」


シア「……利息つくけど、いい?」


不良1「はぁ!?誰がそんなもん払うかよ!バカにしてんのか!?」

不良3「そうそう、ナメてんのかテメェ!」


怒号が飛び交い、不良たちの圧力が増していく。

カナタの喉は乾き、手は汗でじっとりと濡れていた。


カナタ「(ダメだ…お金渡したら、シアにお礼のジュースも買えない…でもこのままじゃまずい…!)」


そのとき、ふと脳裏に浮かんだのは

昔観た映画のワンシーン

敵の注意をそらすために、主人公が遠くに石を投げた場面…


カナタ「(…あれだ!あれなら今の僕にもできる!)」


カナタは震える手で財布からお金を取り出す

だが、取り出せたのはたったの2円

それでも、カナタは覚悟を決めた


カナタ「欲しいなら……あげるよ!」


そして、思いきりその2円を不良たちの向こうに投げようとした


……が、狙いが思いっきりズレて

カッという乾いた音と共に、2円が見事に不良の両目に直撃した。


不良3「ぐああああああああ!!!目がぁぁぁ!!」


不良は目を押さえて地面に転げ回る


不良4「おい大丈夫か!?」

不良2「お前なんて事を!!」

カナタは転げ回る情けない不良を見て

申し訳ない気持ちになる

カナタ「あああああ!?ちがっ、ごめんなさい!当てるつもりじゃなかったんです!!」


シアは一瞬呆気に取られたが、すぐに腹を抱えて笑い出した。


シア「はははっ!なにそれ最高じゃんカナタ!」


シアは笑いながらカナタの手を掴み、叫ぶ


シア「今だ、逃げるぞ!!」


カナタ「えちょ待っ…うわぁ!!」


2人は全力で走り出した

後ろから不良たちの怒声が響く


不良3「目があああああああ!!!」

不良1「ちくしょう!追いかけるぞ!!!」


夕暮れの街を、2人の足音と、後方から響く怒号が追いかけてくる。

すれ違う人々がぎょっとした目で2人を見送る中、シアは振り返りもせず、笑って叫んだ。


シア「全力で走れカナタ!あいつらより遅かったら、今夜は苔風呂だぞ!!」


カナタ「そんなお風呂ぜったい嫌だ!!」


シアの目に、前方に置かれたバケツが映った。

シア「いいこと思いついた」

ニヤリと笑い、すかさず手に取ると

振り返って後方に向かって転がす


バケツは勢いよく転がり不良の足元へ突撃


不良達「うわっ!?」「ぎゃあああああ!!」


ガッシャーンッ!!

見事に数人の不良たちがバランスを崩し

ドミノのように転んだ


シア「っしゃあ!ストライク!!」


しかし、後ろを振り返って調子に乗っていたシアは

足元の段差に気づかず派手に転倒した


シア「ギャバーーーーッ!!」


カナタ「シア!?大丈夫!?」


思わず振り返ったカナタの足が止まりかける


カナタ「(どうする…!今戻っても勝ち目はない……ここはこうするしか…!)」


カナタはそのまま走り続けた。


シア「いててて……」


地面に倒れたまま顔をしかめるシア

背後から不良たちがゆっくりと近づいてくる


不良1「あ〜あ、お友達に見捨てられちゃったな」


シアは地面に座りながら、肩をすくめて苦笑した。


シア「へっ…あいつだけでも逃げられりゃそれでいいよ、財布が一個逃げて残念だったな」


不良2「カッコつけてんじゃねぇよ……次こそ、キッチリ金出してもらうぜ」


その時――


遠くからカナタの叫び声が響いた


カナタ「シア!しゃがんでっ!!」


そこには三角コーンを担ぐカナタの姿があった


シア「カナタ!?」


シアは咄嗟にしゃがむ

それと同時に、空気を切る音と共に三角コーンが飛んできて、不良たちの顔面にヒット!


不良達「うわあああああ!!」


不良たちはまたも転倒。


シア「ナイスカナタ!!!」


カナタ「こっち!早く曲がって!!」


シアの手をぐっと引き、二人は角を勢いよく駆け抜ける


不良1「くっそ、絶対に許さねぇ……!」

不良2「ぶっ殺してやる!!」


だが――その先に待っていたのは、交番だった


カナタとシアは、互いに目を合わせてニヤッと笑う


カナタ&シア「「うわーん!!」


泣き叫ぶような声を上げながら、交番前の警察官に全力で駆け寄る


警察官「ど、どうしたんだ君たち!?」


カナタ「ぼ、僕たち……何もしてないのにぃ……!」


シア「カツアゲされたし三角コーン壊してたしバケツも蹴っ飛ばしてたしぃ……!」


カナタ「シアは僕を庇って、ボコボコに殴られたんですぅ!!(※転んだだけ)」


シア「あっ!あいつらです!あいつらがやったんです!!」


振り返って、シアが背後の不良グループをビシッと指差す


不良達「ゲッ!?」


警察官は素早く反応し、表情を引き締めると

不良たちの方へと向かっていった


警官「君たち、ちょっと話を聞かせてもらえるか?」


慌てた不良たちは、必死に弁解しようとする。


不良3「ち、違う!カツアゲは…まぁちょっとしたが、

そいつらが目にコイン投げたり三角コーン投げてきたんだよ!!」

不良4「殴ったんじゃないんだ!勝手にコケただけで!」


シアは余裕の笑みを浮かべながら、隣のカナタを指差す


シア「コイツ、成績トップの優等生で先生からの信頼もバリ高、警察はどっちを信じると思う?」


不良はぐっと歯を食いしばり、拳を震わせる。


不良1「くっそぉ……!覚えてろよ!いつか倍返ししてやるからなぁぁぁああ!!!」


警官「はいはい脅迫罪ね」


シア「ふっ……正義はいつも勝つのさ」

ドヤ顔で胸を張るシアの横で、カナタはへたりと地面に座り込む。

カナタ「…もうムリ…今日一日で寿命縮んだ気がする……」


――


その後、ようやく買えたジュースを手に

2人は夕焼けの空を背に、並んで腰を下ろした

沈みゆく太陽が、ビルの輪郭や電線をやわらかなオレンジ色に染めていく。


2人「乾杯!」


カナタとシアはカップをそっと合わせ、恐る恐るジュースを口に運んだ


シア「お、この虹色レモネード……見た目のわりに意外とイケる!」


カナタ「たこ焼きジュースも……うん、思ったより悪くないかも」


シア「マジかよ!?お前の味覚どうなってんだよ!」


2人で笑い合いながら、紙カップを手の中で揺らす。


シア「……なんだかんだ今日はいい1日だったな

2円ショットと三角コーン作戦、マジでセンス抜群だったぞ!」


カナタ「君のバケツストライクも完璧だったよ、あれで完全に流れが来たもん」


二人は顔を見合わせ、笑い合った


シア「俺たちもしかして…最強コンビじゃね?」


カナタ「…ふふっ、そうかもね」


涼しくなり始めた夕暮れの風が

そっと2人の頬を撫でる

笑い声がオレンジ色の空へ静かに溶けていった。

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