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第4話 君が教えてくれた事

帰り道

いつもと同じ道なのに、今日はどこか違って見えた。

空は茜色に染まり、ビルの隙間から漏れる夕陽が長い影を作っていた

風も、心なしか優しかった


カナタ「……あのさ、シア」


シア「ん?」


カナタ「今日、君のこと自分勝手だとか…馬鹿だとか…色々ひどいこと言ってごめん」


シア「どうしたんだよ急に」


カナタ「君は僕のために色々してくれた

学校抜け出す勇気もくれたし……色んな事いっぱい教えてくれた」


カナタは、シアの顔をまっすぐ見て

ゆっくりと言葉を続けた


カナタ「……シアって、本当に良い奴だね」


シアは一瞬黙った

それから、目を逸らしながら照れたように笑った


シア「…別に俺もサボりたかっただけだし!カナタに付き合わせただけだって!それを言うなら俺も…」


その時だった。


――怒鳴り声が空気を切り裂いた


「カナタ!!こんな時間までどこに行ってたの!!」


カナタ「っ……!」


カナタの身体がピクリと強ばった

夕陽に照らされた影の先から現れたのはカナタの母親だった。

怒りに染まった顔がカナタにまっすぐ向かってくる


母親「学校から連絡があったのよ!あなたが授業を抜け出したって……!」


怒鳴り声が響いたその瞬間、カナタの肩が強く掴まれた。

指が食い込むほどの強さに思わず体が揺れる


カナタ「痛っ……!」


母親「一体どういうつもりなの!?なんで“いい子”でいてくれないの!?どうして期待を裏切るようなことをするの!」


その声は怒りというより、呪いのように耳にこびりついた、繰り返し何度も聞いてきた台詞

もう慣れたはずだった

うまくやれてると思ってたのに


俯いたまま、カナタは唇を噛みしめた

言葉は喉元でつかえて出てこない

胸の奥がきゅっと締めつけられる


そんなカナタの様子にすぐ隣にいたシアが気づいた。

その目が、じっとカナタの表情を捉える


そして―


シア「……カナタは悪くねぇ!!」


鋭く、空気を切り裂くような声が響いた

母親もカナタも、驚いてシアの方を向く


シア「俺が!俺が無理やり連れ出したんだ!」

カナタ「(な…なんで僕を庇ってそんな嘘を…!)」

シア「一緒に来ないとロッカーに苔詰めるぞって脅したんだ!」

カナタ「(どうしてそんな嘘を!!?!)」


シアの言葉に、カナタの母親の顔が険しくなる。


母親「……あなたのせいなのね」


カナタ「違っ…!シアは……!!」


母親はカナタの言葉を無視して、シアに近づく

その視線は鋭く、冷たかった


母親「もう、カナタに関わるのはやめて

あなたは、カナタにとって悪影響よ」


シアは、少し驚いたような顔をした。

でもすぐに、口角を上げてにやりと笑った。


シア「……いやでーす、関わりまくりまーす」


母親「な……っ!?悪影響って言ってるのよ!!」


シアはカナタをちらりと見てから、ニッと笑って言った。


シア「だってさ、カナタって面白い奴だし

関わらないなんて、勿体ねぇじゃん」


カナタ「(面白いって……僕のこと、そう思ってくれたんだ……)」


シアの言葉は、まるで魔法みたいに、カナタの中の何かを溶かしていった。

「真面目」に押し込められていた自分が少しだけ自由になる感覚


シア「っていうかさぁ、そんなふうに怒鳴るあなたが、いっちばん悪影響でーす」


そう言って、シアはくるりと身を翻し走って逃げた。


「なっ……!?何てことを言うのよ!!戻ってきなさい!!!」


シア「むーりー」


遠ざかっていくシアの背中

その途中でシアが一瞬だけ振り返り、口パクで言った。


――「またな」


カナタは、言葉は出せなかったけれど、力強くうなずいた

自然と笑みがこぼれていた


夕焼け空の下

何かが少しだけ変わった気がした

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