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第3話 ハンバーガーはマカロンサイズだったら食べやすいのになって考えたことある人いる?

カナタたちはこっそり学校を抜け出した。

教室の窓の向こうに背を向けるだけで

心臓がバクバクと音を立てる


カナタ「塀を…よじ登るの!?制服が汚れるよ!」


シア「言ってる場合か!早く!先生来るぞ!!」


シアは迷いもなく壁に手をかけ、するすると登っていく

カナタは少し戸惑いながらも後に続いた

足元はぐらつき、制服の裾には土がついたけれど、不思議とそれが気にならなかった。


街へ出た二人は、ひときわネオンの明るいジャンクフード店に入った。

カナタにとっては、普段なら絶対に近づかない場所

けれど今日は違った


ガラス扉の向こうの空間に足を踏み入れた瞬間、カナタの肩は思わず強ばる


店員「いらっしゃいませ!ご注文は?」


カナタ「ヒッ!ごめんなさい!!」


突然の声にビクつくカナタ

その様子を見て、シアは吹き出した


シア「お前指名手配犯かよ!そこまでビビらなくていいって!」


そう言って、笑いながらメニュー表を指さす。


シア「何が食べたい?」


カナタはメニュー表を見つめてフリーズした

カラフルな写真と値段、聞き慣れない名前の数々が、まるで暗号のように並んでいる。


カナタ「どれがいいのか…全然分からない…」


シア「マジ?じゃあ俺が代わりに注文してやるよ、えーっと10段バーガー野菜抜きでポテトはXLドリンクは炭酸で……」


カナタ「待って待って待って!!!」


結局、カナタは無難な大きさの普通のハンバーガーセットを選んだ

だけど、初めてのことばかりでどうやって食べればいいのかも分からなかった


カナタ「えっと…フォークとナイフは?」


シア「無ぇよ!手で食べるんだよ手で!」


カナタ「わ、分かった……」


恐る恐るハンバーガーを両手で持ち

どこから食べようか迷って、とりあえず上のパンだけを取って食べようとした。


シア「おいバカ違ぇって!一気にかぶりつけよ一気に!!」


カナタ「え…えぇ……?(初めて誰かにバカって言われた…)」


戸惑いながらも、カナタはシアの言う通りにハンバーガーにかぶりついた。


カナタ「…!おいしい……」


こんなに美味しい食べ物、知らなかった


カナタ「……初めて食べたよ、こんなに美味しかったんだね」


シア「嘘だろ…?今まで食ったことなかったのかよ?」


カナタ「……親に、体に悪いからダメって言われててさ」


シア「マジかよ」


シアは驚いた顔をして、自分のバーガーをちらっと見る


シア「…俺の分も食うか?」


カナタ「い…いいよ!さすがにお腹いっぱいになるし!」


カナタは目の前のハンバーガーを見つめた

自分がいま、いつもとは違う場所にいて、いつもと違うものを食べてる

まるで夢の中にいるみたいな気がした。


カナタ「なんか変な気持ち…いつもなら学校にいて、こんな食べ物も知らなくて…でも今はそれを全部やってる」


シア「なんか分かるぜ、非日常感ってやつだよな…

たまにはこういうのも悪くねぇよ」


シアはポテトをつまみながら言った。


シア「てかさ、ハンバーガーまで禁止されてるって…お前の親、相当厳しいんだな」


カナタ「…うん」


シア「さっきテストの点でビビってたのも、親に怒られるから……って感じか?」


カナタ「うっ!」


シア「図星かよ」


シアはからかうように笑いながら、唐突に手を差し出してきた


シア「さっきのテストの用紙、よこせよ」


カナタ「……え?なんで?」


不思議に思いながらも、カナタはポケットからクシャクシャになった答案を取り出し、シアに渡した


シアはそれを受け取ると、何のためらいもなく丸めて、近くのゴミ箱にシュートした


シア「ダンクシュート!!」


カナタ「えぇぇえ!?ちょっと何してんの!!全然ダンクじゃないし!!!」


シア「親にテストの事聞かれたら『シアに捨てられた』って言っとけ」


カナタ「で…でも、それじゃシアが……」


シア「いーって 俺怒られるの慣れてっから」


何気ない調子でそう言って

シアはポテトを一本口に放り込んだ


カナタは申し訳なさそうに首を振る


カナタ「で…でも、それじゃシアが……」


シア「いーって 俺怒られるの慣れてっから」


そう言って笑うシアの顔を見て

カナタは胸の奥がチクリと痛んだ


カナタ「(僕…シアのこと勘違いしてた)」


自由気ままで自分勝手で、周りに迷惑ばかりかける人間だと思っていた

でもシアは、僕のために叱られることすら引き受けようとしてくれた

僕は…シアの外見や態度だけで判断してたんだ


知らないふりをして、見ようともしなかった

そんな自分が、急に恥ずかしくなる


シア「よし、そろそろ帰るか」


そう言って立ち上がったシアの声が、やけに優しく聞こえた


カナタ「…うん」


歩き出した背中を追いながら、カナタはそっと心の中で決めた


ちゃんと、シアに謝ろう

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