第12話 僕らなら
海沿いの遊歩道を、シアとカナタは並んで歩いていた。
セミの声が遠くで鳴いている。
潮風が髪を揺らし、陽に照らされた舗道には2人の影が細長く伸びていた。
空には入道雲
白く、もくもくとした雲が、青空のキャンバスに堂々と浮かんでいる
カナタ「聞いてよ、今日から好きなだけ寄り道して帰っていいって!」
そう言って、カナタは嬉しそうに笑った
その瞳には、以前にはなかった自由の光が宿っていた。
シア「おお、マジか!よかったじゃん!いや〜もう言い訳のレパートリー尽きてたから助かったわ!」
シアが笑いながら髪をかき上げる。
その瞬間、潮風が吹いて、彼のシアン色の髪がふわりと揺れた
――いつからだろう。
最初は奇抜で、どこか近づきがたく感じていたあの髪色が、今ではすっかり心に馴染んでいる
カナタはふと立ち止まり、シアの横顔を見つめた
まっすぐで、どこまでも自由で
そして優しい――そんな人だと思った
カナタ「シア……」
シアが首をかしげて、こちらを振り向く
カナタ「僕、君のおかげで変われたんだ
いろんなこと、教えてくれて…本当にありがとう」
シア「へっ、何言ってんだよ
お前が自分で変わったんだろ?
俺は、ちょっと背中押しただけだって」
カナタ「でも、その“一歩”が僕にはすごく大きかったんだ」
カナタの視線が、ゆっくりと海のほうへ向く
夕陽の光が水面に反射して、世界が金色に染まっていく
カナタ「“僕は何処へでも行ける”って……“行ってもいいんだ”って、そう思えた」
言葉には希望と決意が込められていた
それは、かつて閉じ込められていた心が、自由になった証だった
カナタ「将来、色んな場所を冒険してみたい。
世界のいろんなとこに行って、まだ見たことのない景色をこの目で見てみたいんだ」
シア「いいねそれ!」
目を輝かせて、シアがうなずく。
シア「俺も行ってみたいとこ山ほどあるんだ!だからその時は俺も連れてってくれよな!」
カナタは笑って、大きく頷いた
カナタ「もちろん!」
カナタ「一緒にたくさん冒険しよう
どんな遠い場所でも、どんな高い壁でも――
僕らなら、きっと何処へでも行ける」