表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

第10話 決戦

2人は静まり返った廊下を忍ぶように歩きながら、そっと出口へと向かっていた。

廊下には風の音も、蛍光灯の微かな唸りもなく、ただ2人の靴音だけがコツ…コツ…と響いていた


そんなときだった


――ガシャアアアン!!


突如、前方の廊下にある窓ガラスが粉々に砕け、甲高い破裂音が校舎全体に響き渡った

まるで銃声のようなその音に、2人の体がピクリと硬直する


シア&カナタ「!?」


思わず反射的に、互いの腕をがっしと掴み合い、身を寄せた


シア「な……何だ今の……!?」


カナタ「まさか……本物の不審者……!?」


声は震え、心臓がドクドクと音を立てて暴れている

2人は足を止めたまま、割れた窓の方をじっと見る


すると、その割れた窓の外から、影がいくつも侵入してきた。


不良1「へっへっへ……マジで忍び込むの楽勝だったな」


不良2「よーし、中をめちゃくちゃに荒らしてやろうぜ!」


その姿を見た瞬間、2人は同時に息を呑んだ。

見覚えのある顔、見覚えのある声

絶対に忘れるわけがない…


シア「……あいつら……前にカナタが三角コーン投げつけた奴らじゃね?」


カナタ「シアがストライク決めた人たちだよね……?」


シア「やば……バレたらぶっ殺されるよな……?」


カナタ「と、とにかく今は見つからないように、ここから静かに離れ――」


不良3「……おい!? 誰かいるぞ!!!」


パッ!!


突然、強い光がこちらを照らす

懐中電灯の白い光が、容赦なく2人を照らし出した


シア「うわやべっ!!」


不良3「あ?……あ……あぁぁぁあああ!!?!」


不良のひとりが震える指で2人を指差す。


不良3「お前ら……あのとき!! 俺の目に一円玉ぶち当ててきたガキ共じゃねぇか!!!」


カナタ「バ……バレた……ッ!!」


不良1「まさかこんなところで再会するとはな……運がなかったなァ……?」


不良たちはニヤリと笑いながら、指をポキポキと鳴らしつつ、じわじわと2人に迫ってくる


不良1「今度は逃がさねぇぞ…お前らの骨、一本一本砕いてやる!」


シア「…とりあえず…逃げろ!!!!」

2人は一斉に、全速力で逃げ出す


「待てコラァアアア!!!!」


怒声と足音が、夜の校舎に響き渡った


カナタ「金属バット持ってるよ!? 捕まったら絶対終わる!!」


シア「こっちはプールで体力使い果たしてるっつーの!!マジ限界なんだけど!!」


廊下に響く足音と怒声、照明の明かりが

迫る影のシルエットを床に落とす


シア「何処から逃げる!?」

カナタ「非常出口!! 非常出口からなら外に出られる!たぶん!!」

シア「たぶんて!でもそれしかないな!!」


シア「ここ曲がるぞ!!」


シアは勢いよく角を飛び込むようにして曲がり、瞬時に視界に入ったロッカーの扉を力任せに開け放つ

直後、猛スピードで曲がってきた不良の1人が、開いた扉に顔面から突っ込んだ


不良4「グエーーーー!!!」


激しい鈍い音が廊下に鳴り響き、彼は崩れるようにその場に倒れ込んだ


シア「1ダウン!」


その隣でカナタは、壁際に積まれた古びた掃除用具の山に目をとめる

少し錆びついたバケツが、床に無造作に置かれていた。


カナタ「僕もボーリングやりたい!!」


バケツを2つ手に取り、振り返って勢いよく床に転がす

…が大きく逸れて不良たちの横を転がっていく


不良3「ははっ!なんだよ、ガターじゃねぇか!」


不良が嘲笑った次の瞬間

カナタが残りのバケツを真正面から投げつける


不良3「イデーーーーッ!!!」


顔面に炸裂したバケツの直撃音とともに、不良はその場でのけぞって崩れ落ちる


その隙を逃さず、カナタとシアは走り出した。

非常出口まで、あと数メートル――


――ガシッ!


突然、背後からシアの腕が荒々しくつかまれた


不良2「追いついたぜ……今度は逃がさねぇ!」


シア「しまっ――!」


カナタ「シア!!」


カナタが助けに向かおうとした、その一瞬の隙を狙って――

背後から襟を掴まれ、壁に叩きつけられた


カナタ「うっ……!!」


乾いた音が廊下に響く、ネクタイを掴み上げられ、無理やり顔を上げさせられた


不良1「やっと捕まえたぜ……今度こそ逃がさねぇ、お前の顔面どう飾ってやろうか……?」


シアは床に押し倒されながらも暴れる


不良2「ちょ、こいつマジで暴れすぎ!!」


シア「離せカス!触んなクソ!ダンゴムシ食ってろよ!!」


カナタ(こんな奴らにやられてたまるか……僕は――)

不良1「歯ぁ食いしばれ!!」

カナタ(僕は……自由になるんだ!!)


拳が振り上げられたその瞬間

カナタはネクタイを手早く引き抜き、自らの首元からスルリと外すと、素早くしゃがみ込んだ


不良のからぶった手は壁に激突

手「ペキョッ」

カナタは低い姿勢のまま反動を利用して

下から渾身の力で不良の股間を思いきり蹴り上げた

不良1「オ゛ッ!!!?!?」


悲鳴とも呻きともつかない声を上げて、不良がゆっくりと膝をつき、そのまま床に崩れ落ちた


その隙に立ち上がったカナタだったが、すぐ目の前で


不良2「覚悟しやがれ!」


シアに馬乗りになった不良が、金属バットを振り上げている

光を反射してギラリと光るバットが、シアの頭上に振り下ろされようとしていた。

シア「おいやめろ!グロいことになる!!」


カナタは思考よりも先に体が動いていた

全力で助走をつけ、不良に体当たりで突っ込む


カナタ「シアから離れろ!!」


衝撃音と共に不良の体が空中に飛び、背後のロッカーに激突し、大きな音が廊下に響き渡る


不良2「グアーーーーーッ!!!」


ロッカーにもたれかかるようにして、ズルズルと床に崩れ落ちる不良

カナタは肩で息をしながら、ふらつく足を踏みしめてシアのもとへ駆け寄る


カナタ「大丈夫!?ケガは!?」


シア「っは〜助かった!!マジでサンキュー!!!」


カナタ「こっちは心臓止まるかと思ったよ……でも無事でよかった!」


床にはまだ呻き声を上げる不良たちが横たわっている

不良1「コロス…マジデコロス…」


カナタは顔を上げ、シアと目を合わせた


カナタ「よし、行こう!!」


シア「うん!!」


2人は再び非常口へと全速力で駆け出した


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ