第1話 正反対な2人
カナタの性別は、お好きな方で自由に想像してくださいね
僕の名前はカナタ
自分で言うのもなんだけど、真面目な学生だ
服装はいつも校則どおり
ネクタイの締め方ひとつにだって気を抜かない
遅刻も欠席もゼロ
スマホの利用規約だって、最初から最後までしっかり読む
「すごい!また90点台じゃん!」
「さっすがガリ勉だなー」
そんなふうにクラスメイトに
褒められたり、からかわれることもあるけど
別に嬉しくも悔しくもない
だって僕は好きで勉強しているわけじゃない
ただ、怒鳴られないためにやっているだけだ
うちの親は厳しくて、成績が悪ければすぐ怒鳴る
僕が“真面目”でいなきゃならなかったのはそういう理由だ
自由なんて僕には許されていなかった
……そんな僕とは正反対の存在がクラスにいる
彼の名前はシア、
髪は鮮やかなシアンに染められ、
教室の中でもひときわ目立つ
特別なことなんて何もしていないのに、
その存在感はいつも異質だった
ある日も――
先生「シアーッ!おいコラ!まだ補習終わってねぇぞ!!」
先生の怒鳴り声が廊下に響き渡る
シア「やだーっ!!どれだけ補習やっても分かんないもんは分かんねーんだよ!!」
そう叫んで、シアは笑いながら走り去っていった
教室には、笑い声とため息が交じる
「またアイツかよ」
「ほんと自由人だな」
でも、シアはそんな周囲の声を気にする様子もない
むしろ楽しんでいるみたいだった
自由で、明るくて、自分の色で毎日を塗っている
だからこそ
怒られることを恐れず、好きなように笑って
思いのままに生きているシアが
どうしようもなくまぶしくて
どうしようもなく憎らしかった
カナタ「コラーーーッ!!!」
勢いよく廊下に飛び出して逃げるシアに体当たり
いつものように、その逃走を阻止する
シア「ギャバーーーッ!!なんだよいきなりっ!?」
カナタ「また補習から逃げたのか!先生が迷惑するだろ!!」
シア「うっせーよ! なんでお前にまで文句言われなきゃなんねーんだよ!」
バチバチと火花を散らすような言葉の応酬
先生「コラァ!喧嘩するなーーー!!」
また先生の怒鳴り声が廊下に響き渡る
遠巻きに見ていたクラスメイトたちが
口々に呆れたように言う
「またやってるよ、あの2人」
「仲悪すぎでしょ……」
「まあ、真逆の性格だしな」
僕とシアがぶつかり合うのは
クラスの日常の一部になっていた
けれど、僕の胸の奥にはいつも
シアへの“羨望”が渦巻いていた。
それがどんなに否定しても消えないことに
僕はずっと気づかないふりをしていた。