第8話『Chat-G、過去と笑いで心をつなぐ』
セインとの戦いのあと、夜の王都でタクトとエリナは静かに歩く。
誰もいない石畳の小道で、エリナはついに自分の過去──ラフィーネ家の惨劇に触れる。
それは痛みと後悔に満ちた記憶だったが、タクトの“変な優しさ”と、Chat-Gの“空気読まないレビュー引用”が、ほんの少しだけ彼女の心を軽くする。
言葉にできないものを、笑いと絆で包む──ふたりの関係が、少しずつ前へと動き出す。
──夜。王都ギルドの裏手、風の通る石畳の小道。
タクトとエリナは無言で歩いていた。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った夜の空気が、かえってふたりの間に張り詰めた緊張を孕ませていた。
「……なんか、悪かったな」
タクトが先に口を開く。
「私のこと、気にしてるの?」
エリナは振り返らないまま、静かに問う。
「ああ。だってさ……あんな言われ方、普通、黙ってられないだろ」
昼間、演習場でのセインとの決闘。
セインは敗北の腹いせのように、エリナへ向けて嘲るように言い放った。
『汚れた血の一族の女め……魔族の封印を解いた呪われた家系だろ?』
その瞬間、エリナの目が凍りついたように見えた。
けれど彼女は何も言わず、ただ淡々とその場を離れた。
「……そう言われても仕方ないの。みんな、そう思ってるから」
エリナの声は、風に溶けるように弱々しかった。
「昔、私の家は貴族だった。ラフィーネ家。……でも、父が、とある魔族の封印を“研究目的で”解いてしまって……」
その場にいた研究者や守備隊が惨殺され、王国は大混乱に陥ったという。
そして、父も母も、姉も……“死んだ”。
「生き残ったのは、私だけだった」
《補足:王国記録における“ラフィーネ家の惨劇”は、十年前。『魔族との接触事故』『娘ひとり生存』と記されています》
「ちょ、そういうの今ぶっ込んでくるなって……本人目の前にいるんだぞ」
《星2.1の暴露系ノンフィクションに基づく引用です》
「なお悪いわ!」
エリナは、すっと足を止めた。
月の光が銀髪を照らし、その横顔を浮かび上がらせる。
「……でもね、私、信じてないの。あのときのこと。
お姉ちゃんが、最後に私を庇ってくれたの。……だから、本当は──」
そこまで言いかけて、彼女は言葉を飲み込む。
「ううん、ごめん。今はまだ……全部を話す勇気がない」
「それでも、聞かせてくれてありがとう」
タクトはそう言って、少し笑う。
「……君の家がどうだったとか、そんなの関係ないよ。
今のエリナを、俺はちゃんと見てる」
エリナの肩が、わずかに震えた。
「ほんと、変な人……でも、少しだけ、元気になった」
《補足:先ほどのタクトのセリフ、Amazon レビュー星3.2"SNS恋愛攻略本『彼女の心をつかむ“バズる一言”100選』"より。著:恋愛マーケターLeo。レビューでは「現実で言われたらちょっと重い」に類似しています。》
「毎回なんで俺の名シーンをレビューで殴ってくるんだよ……!」
沈黙が数秒流れたあと、エリナは少し顔を上げた。
「私ね、封印系の魔術が得意なの。
相手の動きを止めたり、魔力を鎮静化させたり……
ただ攻撃するだけじゃなくて、“抑える”ことができる」
「なんか、エリナらしいな」
「ふふっ、そう? ……でも、タクトの戦い、すごかった。
セインに対して本気で怒ってくれたとき、すっごく嬉しかった」
「えっ、そうだったの?」
「うん。普段はふざけてばっかりの人が、
私のために本気で戦ってくれた。
……しかも棒で」
「棒をバカにするなよ!? 星4.1の護身術本に書いてあったんだぞ!」
《引用元:Amazonレビュー星4.1“護身術のすべて” 著:ムロタニ玄兵衛。
レビューでは『読み終わる頃には近所の枝に戦慄する』と評されました》
「そのレビューどうなん!?」
エリナは、初めて心から笑ったように見えた。
「……この先、どんな依頼が来ても、私は一緒に行くから。
タクトも、ちゃんと隣にいてくれるよね?」
「“エリナ同行で生存率アップ”ってChat-Gが言ってるからな。……たぶん俺、エリナなしじゃ詰むわ」
「……うるさい」
(でも、その声はちょっとだけ嬉しそうだった)
《今の流れにぴったりのセリフが、“中2病でも恋がしたいときのマニュアル”に記載されています。著:シュバルツ・ノヴァ=闇風。第4章「心と心のリンク効果」で紹介された名文──『隣にいる、それだけで世界が救われる』》
「やめろっ! 今すぐその本を“電子の彼方”に封印してくれ!!」
「……その本、後で読んでみようかな」とエリナはニヤニヤしてカイトを見た
「やめろ、こっちが封印される!!」
つづく
ご覧いただきありがとうございました!今回は少しシリアスな過去回でしたが、Chat-Gの例によって空気をぶち壊すレビュー芸(恋愛本や護身術本)が、バランスを取ってくれました。
エリナの「お姉ちゃんを庇ってくれた記憶」や「まだ全部を語れない」という描写には、今後につながる大事な伏線が詰まっています。
そして、ついにタクトに「隣にいてくれるよね?」と小さく踏み出したエリナ。これ、ラブコメ的にもポイント高いです。
次回はついに、未知のダンジョンへ!セラの魔導具がまた反応する……?