第6話:Chat-G、擬似演算+支援モードで生き延びる
タクトとエリナ、はじめての依頼は廃屋のゴブリン討伐。
だが、そこに待ち構えていたのは、レビューにも載ってない“異常な存在”で――!?
Chat-Gが新モードを起動!? そして王都の騎士団と魔術師、ふたたび登場!
緊迫とギャグの狭間を突き進む第6話です。
廃屋の奥。
空気が湿って、息が詰まる。
そこにいたのは、異常に膨れたゴブリンだった。
皮膚は黒ずみ、目は血走り、全身から黒煙のような魔素が漏れ出している。
「……エリナ、あれ、マズいやつだよな?」
「間違いなく“魔族汚染”。私が止める」
彼女が杖を構え、詠唱を始める。
<古の理に従い、汝の動きを静止せよ――リゼ・アレスト!>
空間が震え、魔法陣が敵の足元に走る。
ゴブリンの動きが一瞬、止まった。
「今よ、タクト!」
《レビュー該当なし。対象外個体を検出。擬似演算モードに移行します》
《構築中……現地資源分析……使用可能物体:“石”》
「また石かよ!!」
《この状況、身体スペックでは突破困難。戦術支援モードを開放します》
《反応速度+26%、注意力集中、可動域拡張モード展開》
「勝手に俺の脳をカスタマイズすんなよ!!」
一瞬で景色が研ぎ澄まされ、敵の筋肉のこわばりや呼吸すら感じ取れる。
気持ち悪いくらいに“動ける”感覚。
俺は床に転がっていた石を掴み、敵の横に飛び込んだ――!
「食らえぇぇぇぇっ!!」
石を全力で振り抜く。
異形ゴブリンの脇腹にクリーンヒットした瞬間、何かが弾けた。
「よしっ!」
だがその直後――
「がはっ!?」
反撃の腕で吹き飛ばされ、壁に背中を叩きつけられる。
《被ダメージ:肋骨1本ヒビ。痛覚レベル7》
「もうちょい感情に寄り添った通知にしろよ! 痛いって言ってんだろ!!」
「タクト!!」
エリナが次の術の詠唱を始める。けれど、敵の動きが速い。
詠唱が間に合わない。
――終わった、そう思った瞬間。
カツッ!
金属のブーツ音が響き、視界を横切る黒影。
「――退け」
金髪の女性騎士が、そのまま一直線に敵へ踏み込み、
一閃。
青く光る剣が異形の腕を断ち、魔素が四散した。
「……制圧完了」
その人は、王都第三騎士団団長――セラ=ノワールだった。
「魔導反応の異常。お前らの仕業か?」
「……いや、違うと思うけど……助かりました」
「お前は、確かタクトだったな」
「そうです。めっちゃ強いですね……」
セラは少しだけ目を細めると、背後に視線をやった。
「……ゼクト、魔素を見ろ」
そこにいたのは、蒼衣の男――王国魔術省の術査官、ゼクト=レイン。
彼は床に漂う魔素を指先でなぞると、皮肉な声を放った。
「やっぱりだ。“魔族汚染”。それも初期段階じゃないな」
《補足:ゼクト=レイン、レビュー星3.1。“上から目線でマウント取りたがり”との評価》
「レビュー、悪口ばっかじゃねーか!」
ゼクトが、俺をちらと見た。
「で、そのスキル……レビュー信仰型とやらでしたね? なぜ生きてる?」
「こっちだって聞きたいわ!」
セラはそんなやり取りを聞き流しながら、俺を見下ろす。
「お前のスキル、“王国登録外”か……なるほど」
《補足:魔術省による監視対象に入る可能性、上昇中》
「ほんといちいちフラグ立ててくるな!!」
エリナが、魔素の痕を見て顔を曇らせた。
「やっぱり……魔族が、本格的に動き出してる」
――レビューも最適解も通じない脅威が、
この世界には確かに存在している。
《戦術支援モード、終了。次回使用には冷却期間が必要です》
「冷却って……お前、まさかバッテリー制限あるの!?」
こうして、俺たちの初めての依頼は、なんとか終わった。
でも――終わったはずの物語の向こうで、
何かが、静かに動き出していた。
つづく
適解が見つからなくても、動くしかない――。
今回はタクトの成長と、“Chat-Gの意外な性能”が垣間見える戦闘回でした。
セラやゼクトとの再会も含め、伏線と火種が少しずつ動き始めています。
次回は、戦いを終えたふたりがどう進むか。ちょっとした“転機”が訪れるかも……?
引き続きよろしくお願いします!