第5話『Chat-G、レビュー星4.2依頼に突撃する』
【初任務、レビュー星4.2──運が良ければ勝てる!?】
王都での冒険者生活が始まったタクトとエリナ。
初めての討伐依頼は“廃屋に巣食うゴブリン退治”。
だが現場には、すでに倒された先行パーティの姿が……!?
Chat-Gの“レビュー至上主義”が今回も炸裂。
そして今回、まさかの《レビュー対象外》が出現――!
「よし、登録も終わったし……次は初依頼だな」
ギルドの掲示板には、これでもかと依頼書が並んでいる。
掃除、薬草採取、配達、討伐――異世界のはずなのに、バイト情報サイトみたいな空気がある。
「これなんてどう? “街外れの廃屋に巣くうゴブリン退治”。初心者向けって書いてあるし」
「ゴブリンって……スライムよりは強いよな?」
《レビュー星4.2。“倒せたら運がいい。倒されたら学びになる”との声。教育的です》
「レビューに“教育的”って要素いらないからな!?」
「でもまあ、最初の討伐としては王道だし、いいんじゃない?」
「エリナ、ポジティブすぎる……。いや、俺も行くけどさ!」
王都の外れへ向かう道すがら、俺たちは装備の確認をしていた。
……といっても、俺は相変わらずジャージで、武器は“そこらの石”だけだ。
「ちなみにこの依頼、成功率どのくらいなん?」
《参考値:フラグ発言の有無によって±7%変動します》
「そのフラグって今の俺のセリフじゃねぇよな!?」
《現在のあなたの精神傾向:ツッコミ7割、感情の安定度42%》
「なんで俺の情緒までレビュー対象に入ってんだよ!」
エリナが、笑いをかみ殺しながら小声で言う。
「こわいって言ってるくせに、いつの間にか前に出てるよね。変な人」
「え?」
「なんか、強がってるのかと思った」
「強がってるよ。今もお腹ちょっと痛いよ。でも……動かないと、何も始まらないからな」
「ふふ、そういうとこ、ちょっと好き」
「うおお! 今のレビュー対象外でお願いします!!」
現場は王都から歩いて30分ほどの廃屋だった。
壁は崩れ、屋根は抜け落ち、扉は歪んで開きっぱなし。まさに“廃”屋という名がふさわしい。
「なあ……なんか空気、重くない?」
「うん。魔素の流れが不自然。鳥も虫も鳴いてない」
俺の背筋に、ゾワッとしたものが走った。
《レビュー補足:無音環境は“死亡フラグの香り”と呼ばれています》
「比喩のクセが強いな!?」
と、そのとき。
ガサリ――と茂みが揺れた。
駆け寄ると、そこには男が倒れていた。冒険者風。防具は裂かれ、意識はない。
周囲にも仲間と思しき人影が複数。血が、地面に点々と広がっている。
「……これ、先にこの依頼を受けたパーティか……」
《レビュー発見。“気づいたときには遅かった”との体験談。星は4.2据え置きです》
「そこは星落とせよ!!!」
「タクト、奥……なにか来る」
エリナが静かに杖を構えた。
廃屋の奥から、ぬるっと小柄な影が現れる。
一体、二体、三体――いずれもナイフを持ち、牙を剥いた獰猛な顔つき。おそらくゴブリンだ。
いかにも、“雑魚モンスター”らしい風貌。
「……これならなんとか――」
そう思った瞬間、影の奥から、ひときわ異様な存在が現れた。
目は赤く光り、黒ずんだ肌。体表からは瘴気が漏れ出し、空気がぬめる。
「なにあれ……あきらかにヤバくない!?」
《魔素汚染個体。見た目の時点でレビュー対象外です。美観への配慮もありません》
「言い方のクセが出てるよ!!」
《参考レビュー:ゼロ件。“誰も帰ってきてないからレビューできませんでした”との解釈》
「もうレビューっていうか遺書だよそれ!!」
エリナが一歩前に出て、魔力を集中させる。
「タクト、私が魔法で援護する。あなたは――」
《現在の最適解:あなたが囮になってください》
「でたな、“最適解”の皮をかぶった地獄戦術!!」
俺はため息をついて、一歩前へ。
「逃げたくないんだよ。せっかくこっちの世界で生きてるんだしな!」
エリナがくすっと笑って、杖を構えた。
「じゃあ、私は“止める”魔法で援護する。タクトは、自由に動いて」
《あなたの囮行動によって、彼女の成功率は38.7%上昇します》
「生存率よりも数字低いのやめろぉおおおお!!」
ゴブリンたちの視線が、一斉に俺に集まる。
異常個体の赤い目が、じっとこちらを見据えていた――
つづく
ご覧いただきありがとうございました!
第5話では、ついにタクトたちが初めての実戦に挑みます。
ゴブリンといえば異世界モノの“基本の敵”ですが、そこにひとひねり加えて、
Chat-Gがまさかの“レビュー不能”とギブアップする展開にしてみました(笑)
次回はバトル本番。エリナの魔法も活躍予定!
そして異常個体の正体、そしてそれが物語の大きな伏線に――?
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次回もぜひよろしくお願いします!