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第3話 ラーメンと履歴書と、王都の午後

王都レイヴァン、ついに到着!

……だったんだけど、いきなり滞在登録だの履歴書だの、まさかの“異世界就活”スタート!?

Chat-Gのレビュー節と、タクトの迷走が止まらない。

さらに今回は、まさかの“異世界ラーメン構想”まで飛び出す王都観光編です。

――着いた!

森を抜け、丘を越えた先に広がっていたのは、巨大な石造りの城壁と、門の向こうに連なる壮麗な建物群。

尖塔がそびえ、商人や冒険者が行き交い、衛兵が忙しなく巡回している。

まさに“王都”だ。思ってた3倍はファンタジーしてる。

「ここが……レイヴァン王都よ。物資の補給も、情報も、人の流れも集まる場所」

「観光地っぽいけど……入場料とかないよね?」

「観光地じゃなくて、首都です」


 《この都市は、“ハウルの動く城とサンシャインシティを融合させた雰囲気”に分類されます。レビュー星3.8》

「例えのセンスどこで学んだんだよ!」


石造りの巨大な城壁、空に向かって突き刺さる尖塔群。門の前には、長い行列ができている。

旅人、商人、冒険者、ローブ姿の魔術師──そして中には、耳の長いエルフや、しっぽを揺らす獣人、肌の青い亜人まで。

「……え、異世界って種族バリエーションこんなに豊富なの……?」

《参考までに:この都市の住民構成比は、人間72%、獣人12%、エルフ8%、その他異種族8%。多様性指数:高》

「多様性指数ってなんだよ。あと、“その他”の定義が雑!」


 門前では衛兵が行列をさばいていた。順番に滞在者の登録を行っているらしい。

「旅の者か。滞在登録を頼む。中央広場の登記所へ行ってくれ」

「了解です! ……って、登録所!?」


 《王都の滞在登録=身元保証+簡易就労登録+職歴申告の3点が基本と予測》

「絶対そんなややこしくないだろ!」


 《では、“異世界用職務経歴書”を自動生成します》

「やめろって!“インターン経験なし・資格ゼロ・大学サークルはボードゲーム部”とか、この世界で評価されるわけないだろ!」


 エリナは吹き出しそうになりながらも、ちゃんと付き合ってくれた。

登録所では、意外にもシンプルな紙が手渡された。

名前、出身地、滞在予定期間、職種(任意)

「ふつうに履歴書みたいなやつだったわ……」

「なんて書いたの?」

「“とくになし”って」


《“とくになし”は就職成功率を平均14.3%下げる表現として知られています》

「だから就活じゃないっての!」


滞在登録を済ませて、ようやく城門を通過。

その瞬間、目の前に広がったのは、まるで映画のセットのような世界だった。


馬車が行き交い、路地では大道芸人が火を吹いている。空を見上げれば、飛行石っぽい何かがフワフワ浮いてる。どう見ても魔法の所産だ。

「観光名所すぎる……俺、ガイドブック持ってないぞ……?」


──そんな俺の目を奪ったのは、屋台通りだった。

剣、魔導具、薬草、魔法のスクロール、さらには“精霊の手作りパン”なるものまで並んでいる。

それを見ていた俺はピンとくるものがあった。

「……これって異世界でラーメン出したら、バカ売れするやつじゃね? スープは魔導石で温めて、麺は現地小麦でローカライズして──」

俺は思わずつぶやいていた。

あっつあつのスープに、もちもちの麺。チャーシューに味玉、海苔にメンマ──

ファンタジー世界であんな“完全食”が出てきたら、屋台どころか王族の食卓にまで進出だろ。

エリナがきょとんとした顔でこちらを見る。

「……ラーメンって、魔道具? それとも……召喚獣の名前?」

「料理だよ!? どんなジャンルの誤解だよ!?」


《補足:すでに存在します。“転移者系飲食店・麺屋リュウジ”が王都に5店舗展開中。主力商品:異界醤油ラーメン》

「……うそだろ!? もう先越されてんの!? 夢の異世界グルメ起業、終わってた……」

「“ラーメン”って、その……すするやつ? 王都の西の通りに、長蛇の列ができてるお店があるけど……あれ?」

「マジかよ……異世界ですら、競合過多か……! Chat-G、お前、その情報もっと早く出せよ!!」

《タイミングの最適化を検討します》

《ちなみに“麺屋リュウジ”のレビュー評価は──星4.3。“異世界なのに本格すぎて意味がわからない”との声多数。名物は“呪符付き煮卵”》

「意味わかんねぇよ!! なんで煮卵に呪符貼ってんだよ!!」


ふたりで屋台を回りながら、串焼きを一本ずつ買う。

ひと口かじると、香ばしい肉の味が広がった。


「うまっ! これ、レビュー星いくつ?」

《3.9。“美味いけど、たまに骨が刺さる”との指摘あり》

「またネガティブ情報!! もう噛んじゃったからね!? 今さら遅いからね!?」


そんなツッコミを返しながらも、どこか楽しい。

自分が知らない常識に翻弄されて、笑ってる。


──それが、この異世界の第一歩なんだろう。


つづく

最初の戦いを終えて、少しだけ日常へ。

でもこの異世界、“普通の街歩き”ですら、タクトにはイベント続き。

Chat-Gの変なレビュー、エリナの淡々とした天然ぶり、そしてタクトの暴走──

次回はいよいよ、ギルドと“本格的な冒険者生活”の扉が開きます!

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