表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/33

第26話『Chat-G、神獣の咆哮にフラグ認定しました』

神の封印が破られ、怒りと共に目覚めた神獣ライグルヴァン

それは、神でありながら人に裏切られ、力だけの存在へと堕ちた者──。

セラの神威が炸裂し、ヴァルトとの戦術バトルが激化する中、ついに訪れる“代償”。

Chat-Gは叫ぶ。「フラグ、回収完了です」と──。

──雷鳴が、時空を裂いた。

神獣ライグルヴァンの咆哮が轟いた直後、空間に歪みが生じる。祭壇の奥──封印の裂け目から、黒い靄のような魔力が這い出すように広がった。

「おい……な、なんだこの霧……!」

タクトが剣を構えながら周囲を見回す。視界が歪み、色彩がゆっくりと崩れていく。

「ふふ……お困りかな、“継承者”ども」

霧の向こうから、低く歪んだ声が響く。

「これは私の自信作──《虚幻迷界ラビリンス・ファントム》。

見えるもの、聞こえるもの、感じるもの……すべてが欺きに満ちている」

《幻景術式反応:視覚・聴覚・空間認識に異常。ヴァルトによる干渉型奇襲魔術と推定》

「チッ、また厄介なのを……!」

タクトが苦々しく呟く。


その叫びに応じるように、幻術の影が裂けた。

ヴァルトの姿が揺らめく霧の中から浮かび上がる。

「──“神”が暴れる前に、片をつけさせてもらうぞ」

彼は腕をひと振りし、漆黒の鎖を幻影の中から蛇のように解き放つ。

それは音もなくうねり、セラ、タクト、エリナたちへと襲いかかろうとしていた。


「来るっ!」

セラの目が鋭く光を帯びる。

一瞬の静寂の後、彼女は静かに右手を天へ掲げた。


「──神威継承式、第二階層。展開──」

言葉と同時に、空間に光の紋が走る。

その中心にセラが立ち、彼女の足元から広がる神威の陣が輝きを増していく。

背に宿る“神の加護”が実体化し、光の槍が彼女の周囲に展開する。


「《閃槍陣・ラディウススパーク》!」

次の瞬間、十数本の光槍が空間を裂くように出現し、漆黒の鎖に向けて一斉に射出された。

その閃光はまるで雷光が地を撃つかのように鋭く、速度も視認すら困難なほど。


一筋──槍の一本が、霧の奥で鈍く輝く“黒金の魔導具”をかすめた。

術式がわずかに軋み、地面の封印陣が一瞬だけ乱れる。


セラの意図は明白だった──

奇襲を放ったヴァルトの“手”を、一瞬で断ち切ると同時に、《禍壊の楔(イビル=スパイク)》の破壊を狙っていた。

「ふん、狙うと思った」

ヴァルトが口元を歪めた。


「──起動、《鏡界転移陣ミラージュ・オーバーラップ》」

ヴァルトが足元に仕込んでいた魔導刻印を踏み砕くと、その術式は鈍く反転し、地面に光の“合わせ鏡”が広がっていく。

その瞬間、ヴァルトの身体がまるで“もう一枚の空間”に引き込まれるようにして、すうっと消えた。


──光槍が放たれる。

だが、貫かれたのはヴァルトの“虚像”だった。残像が霧散し、砕けた破片のように宙を漂う。

「今のは……“鏡の向こう側”に……!?」


セラが眼を見開く。

だが、直後──

「残念でしたね」

ヴァルトの声が、光の“合わせ鏡”の外縁から響く。

空間が反転するように歪み、彼は実体を戻して現れた。

まるで最初からそこにいたかのように、自然な足取りで。


「これは、“空間の裏側”を歩むための魔術です。あなたの神威、見事でしたが……残念ながら、届きませんよ」

彼の笑みには確かな自信と、“逃げ足だけは一流”という皮肉な誇りが滲んでいた。


《警告:ヴァルト、完全に“セラ弱点ルート”を事前に攻略済みです》

「ズルいって!そんなん攻略済みなら勝てるわけないやん!」


だがその瞬間──

空気が、ピン、と張り詰めた。

「っ……!?」

セラが顔を上げた。


ライグルヴァンの体が、淡く光を帯び始める。

闇と雷が脈動し、その体内から“異質な力”がせり上がってきた。


《警告:神格エネルギーの再構築反応──》

Chat-Gの声と同時に、世界が“引き裂かれる”感覚が襲った。

次の刹那、ライグルヴァンの咆哮が空間そのものを焼き裂く──!


「来る……ッ!」

セラがそう叫んだ瞬間にはもう遅かった。

口元から放たれたのは、雷と闇を帯びた、破壊そのものの奔流。

──神獣技《黒雷咆哮・ヴォルティカノン》


その軌跡は直線ではなかった。

雷のように跳ね、闇のように蠢きながら、最も“抗う者”へと牙を剥く。

セラがタクトたちの前に跳び出す。

「下がって! これは──防げるか、分からない……っ!」


《補足:セラ=ノワールの神威・第二階層展開にはチャージ時間が必要。現在、詠唱準備中──即時発動は不可能です》

「おい……それ、もっと早く言えよ!」

タクトが叫ぶ。


──その瞬間、ライグルヴァンの瞳がわずかに揺れた。

神威の光に、かすかな“記憶の残響”が呼び起こされたかのように。

だが、次の瞬間には怒りが再燃し、全てをかき消した。

ライグルヴァンの咆哮が空を裂き、大地を穿つ。

“間に合わない”──そう認識するより先に、破壊の奔流がセラへと襲いかかった。


──ズドォン!!!

大地が裂け、風が爆ぜ、空間が軋む。

視界が光に包まれ、数秒後、静寂が戻った時──


「……せ、セラ……?」

エリナの声がかすれた。震えを帯びたその一言が届いた時──

セラ=ノワールの身体は、地面に膝をついていた。


そして──左腕が、なかった。

肩口から先が、まるで“吹き飛ばされたように”消えていた。

焼け焦げた服と肉の断面から、血が滲み出し、音を立てて黒く染まった地面へと滴る。

焦げた肉の匂いが、風に混じって漂い、誰もが言葉を失った。


「う、ああ……ああああ……ッ!」

タクトがその場に崩れ落ちた。目の前の現実に、声が裏返る。

隣でエリナが息を呑み、口元を震わせる。


それでも──

セラの瞳だけは、決して伏せることなく、

ただまっすぐに、ライグルヴァンを見据えていた。

震える体を、ひと筋の意志が貫いている。

神であろうと、怒れる獣であろうと──彼女は、逃げなかった。

倒れ伏すセラの姿を、ヴァルトは静かに見下ろしていた。

その目に、冷徹な光が宿る。


「……なるほど。神威継承者といえど、やはり“無敵”ではないのですね」

唇の端が、じわりと歪む。

「左腕を失ってなお視線を逸らさない……見事です。

ですが、もうお終いです。神の力など、所詮は不完全な幻想。

“神の矜持”などというものが、現実の前でどれほど脆いか──

こうして証明されましたね、セラ=ノワール殿」


彼は一歩、ゆっくりとセラに近づく。

セラの体は血にまみれ、左肩から先が完全に失われていた。

黒焦げた布と焼けた肉の匂いが、空間を支配していた。


「おや、これは……ふふ。これは素晴らしい“戦果”です。

この結果をご覧に入れれば、あの方も、さぞお喜びになるでしょう」

その瞳に映るのは、歓喜でも達成感でもなく、

──“誰かの称賛”をひたすらに欲する従属の色だった。


「さあ……あと一押しです。

あなたをここで仕留めれば、“あの方”の計画も、さらに前進します」

ヴァルトの指先が、再び詠唱の構えを取る。


──その瞬間、地鳴りと共に神獣ライグルヴァンが再び咆哮を上げる。

だが、ヴァルトは振り返りもせず、ただ前だけを見ていた。


「おっと……少し、急がねばなりませんね」


──つづく

ついに、セラが本格的なダメージを受ける展開となりました。

ただの“かっこいいお姉さん”で終わらせたくなかったので、ここからどう立ち上がるかもぜひ見守ってください。


ヴァルトも「ただの嫌な奴」ではなく、“誰かの承認を求めて動いている男”として、今後さらに掘り下げていく予定です。


次回はいよいよ、セラの“覚悟”が問われる回になります。

ご感想やブクマ、とても励みになります。ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ