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第19話『Chat-G、敵のビビり具合をレビューし始めました』

魔族召喚の痕跡を追って、王都北部の森へと踏み込んだタクトたち。

そこに現れたのは、久々の実戦相手──“舐めてかかってきた魔族たち”。

今回の見どころは、エリナの進化した魔法、そしてタクトとの連携強化。

もちろんChat-Gは、戦闘中でもレビューを忘れません(やめろって言ってるのに)。

成長とズレたAIとツッコミが交差する、レビュー戦闘回をお楽しみください。

──王都北部、灰の静域・外縁部。


淡い霧に包まれた森の入口。

タクト、エリナ、セラの三人は、魔族召喚の痕跡が観測された地点の調査を進めていた。


Chat-Gの音声が、ホログラムマップと共に表示される。

《演算誤差0.3%、魔力濃度の歪みを検出。該当区域、前例にない“座標ブレ”を記録中》

「それって、異端召喚と関係ありそうか?」


《可能性、極めて高いです。通常の魔力反応とは波形が異なります》

「なら、そろそろ“出てきそう”ってわけか……」


その言葉が終わるのと同時に、風の音が変わった。

シュウ……と何かが“擦れた”ような音が響いた次の瞬間、

木々の間から黒い影が滑るように姿を現した。


◇ 魔族の登場

3体。人間と同じ程度の体躯を持つが、皮膚は鈍く赤黒く、目だけが異様に光っている。

背には獣のような骨格の“羽”が小さく折り畳まれ、手には魔力の刃。

「……人間?」

「しかも子供か。片手で捻れるな」

その言葉に、セラが剣をわずかに抜く仕草を見せる。

「戦場で油断は、最も愚かな選択よ」

タクトが一歩前へ出る。

「でも、その前に……まずは、俺たちがどこまでやれるか見ててくれ」

セラがふと、口元を緩める。

「ええ。じゃあ、任せるわ」


魔族のひとりが前に出た。

「ほう。なかなか勇ましい。だが無駄だ。人間の身体じゃ、この力には──」


その瞬間、Chat-Gが冷静に声を発する。

《対象分析開始──魔族:下級個体タイプB。筋力依存型、突進傾向高め。反応速度は中〜やや早》

「ふむふむ……で、オチは?」


《参考文献:『魔族と出会ったら読む本(初心者向け)』(王立図書館/レビュー評価☆3.0)》

「初心者向けて! 今まさに“出会ってる”タイミングで読むなよ!!」


タクトのツッコミが森に響く。

Chat-Gはしれっと続ける。

《同書には“慌てず挨拶を”と書かれていましたが、状況により推奨されません》

「そりゃそうだろ!! むしろ挨拶したら今ので首なくなってたわ!!」


そのやり取りを、魔族の一体がギリギリと歯を鳴らしながら聞いていた。

「……さっきから何をぶつぶつと……人間のくせに、ふざけているのか?」


視線が鋭くなり、魔力がわずかに高まる。


《あ、怒らせたかもしれません》

「お前が元凶だろ!!」


その瞬間、Chat-Gが警告を発する。

《距離3.7m、突進動作検知。回避優先──右斜め後方!》

タクトは、騎士団から借り受けたショートソードを低く構えたまま、反射的に身をひねる。

魔族の爪が風を切り、すぐ横の地面に深く爪痕を刻む。

「チッ、速いな……!」


だがタクトは、一歩も引かなかった。

切っ先を跳ね上げるように突き出し、魔族の懐へ滑り込む。

「──っ!」

右脇腹へ斜めに、鋭く一閃。

魔族の身体がよろめいた瞬間、タクトはすかさず踏み込み、脚を払うように斬り下ろす。

ズン、と確かな手応えが剣を伝って返ってきた。

魔族が呻き声と共に膝をつき、崩れ落ちる。

「やるじゃねぇか……人間のくせに!」

「そういう捨てゼリフが出た時点で、もう負けフラグなんだよ!」


◇ エリナの成長魔法、初披露

「タクト、左! 二体目来る!」

「っ──!」

横合いから飛びかかる別の魔族に、タクトは体勢を崩しそうになる。

そこへ、エリナの詠唱が響く。

「封じの連環よ──冷たき鎖となり、動きを縛れ──《氷環連縛陣・グレイシャル・バインド》!」

地面に走った魔法陣から、幾何学模様の氷鎖が立ち上がり、

魔族の四肢を氷鎖が絡め取り、動きを封じた。


「なっ……く、くそ……!」

タクトがその隙を逃さず、駆け込む。

ショートソードを握り直し、

腰のひねりを活かして胴へ鋭く一閃──

「──はあっ!」

ザシュッ!と切り裂く音が森に響く。

魔族の身体が仰け反り、地面へと崩れ落ちた。


◇ 最後の一体

残る一体が、明らかに怯えを見せながら距離を取る。

「なんだよ……こいつら、本当に人間か……!?」


Chat-Gが冷静に解析する。

《恐怖反応、急下降中。敵、今ちょっと帰りたいと思ってます》

「気持ちは分かるけどバラすなよ!」

魔族(歯ぎしり)

「……舐めてんのか、人間ッ!」


タクトがショートソードを構え直し、目を細める。

タクトが呼吸を整えながら言った。

「エリナ、動き止められるか?」

「任せて。タイミング合わせて!」

エリナが杖を掲げ、魔力の波動が周囲に広がる。

タクトはあえて前に出て、魔族の意識を自分に集中させた。

(今だ──こっちに気を取られてるうちに……!)

「──次の手で終わらせる!」

魔族が爪を振りかぶった瞬間、足元に魔法陣が展開される。

「光の楔よ、影を裂きて敵を封じろ──《閃封・ライトブレイク》!」

まばゆい閃光と共に、地面から複数の光の杭が突き出し、魔族の脚を一瞬で貫いた。

「がっ──!?」

その隙に、タクトが駆け抜けるように間合いを詰め──ショートソードの切っ先が、魔族の腹を深く抉った。

刹那、空気が破裂するような衝撃と共に、最後の魔族が倒れ伏した。

魔族の気配が完全に消え、森が再び静寂に包まれた。

タクトとエリナは、肩で息をしながら拳を軽く突き合わせる。

「……やったな」

「うん。ちゃんと……通じたね、私たちの技」


Chat-Gがピピッと音を立てる。

《戦闘評価:A−。連携精度+22%、詠唱速度1.2秒短縮、戦闘持久力+38%──なおタクトさん、構えがちょっと猫背気味でした》

「最後のいらんわ!!なんで毎回“減点ポイント”まで言うんだよ!」


《改善点の提示はモチベーション維持に有効です》

「俺、学校の三者面談中じゃねぇんだぞ!?」


エリナがクスクス笑う中、Chat-Gは続ける。


《あとタクトさん、“フィニッシュブロー時のキメ台詞”が不在でした。次回までにご準備を》

「試食レビューか! “味はいいけど盛り付けが残念”みたいな評価すんな!!」


つづく

ご覧いただきありがとうございました!

今回は久々の“ちゃんと勝てた戦闘回”です。タクトとエリナの3ヶ月の成長がしっかり描けたかなと思います。

Chat-Gの「初心者向けレビュー本」と「構えが猫背指摘」、個人的にもかなりお気に入り。

こういう“ボケてるのに真面目”なAIって、やっぱ愛着湧きますよね。

次回はいよいよ“森の観測者”イヴェリアが登場!

Chat-Gと同じくAIなのに、どこか不思議で、そして少し“怖い”存在かもしれません。

タクトが新たに手にする武器の秘密も含めて、お楽しみに!

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