第13話『Chat-G、遺跡の扉を俺に押しつける』【謎の封印解除係】
異次魔との激戦から数日。
成長を実感するタクトとエリナの前に現れたのは、あの冷静沈着な騎士団長・セラ=ノワール。
そして始まる、謎の遺跡探索──。
だが、封印解除担当はやっぱりタクト。
Chat-Gから割り振られる“係”にツッコみながら、今回もなんやかんやで話は進む!
騎士団&遺跡の登場で、ちょっとだけ冒険者っぽくなってきた回です。
──古代遺跡・第一階層 内部回廊。
「なんか……想像より、ずっと……メカメカしくない?」
タクトは壁をなぞりながら眉をひそめた。淡く光る文様、幾何学的な彫刻。そこには魔法的でもあり、どこかテクノロジーのようでもある構造が静かに広がっていた。
《構造解析:古代魔導文明と推定。ただし照合一致率は8%以下。ほぼ未知領域です》
「またお前の“知らん領域”かよ……」
エリナが小声で呟いた。「空気も……ちょっと重たい。なんか、息苦しい感じがする」
そのときだった。床下に埋め込まれた文様がぼんやりと浮かび上がるとともに、低い音が響いた。
「──来るぞ!」
壁面から現れたのは、球体をベースにした不気味な自律守護体。複数の関節と、無機質な構造。生き物にも兵器にも見えるその存在は、明らかに侵入者に反応していた。
《警告:古代遺跡の自律防衛機構が起動。対象を“不正アクセス”と認定しました》
「今度はログイン認証エラーかよ!?」
守護体の一体が触手のようなアームを伸ばし、タクトへ振り下ろす。
「ぐっ……重てぇ!」
タクトは反射で受け流すが、訓練用杖ではダメージを与えられていない。
エリナが素早く詠唱に入る。
「──レグナ・レグス!」
魔法陣が守護体の足元に展開し、束縛魔法が炸裂。しかし動きは止まらない。
「……効きが悪い!」
《補足:対象は物理魔法融合型。構成材質に“演算型金属構造”を含みます》
「聞いたことない単語出すなよ!? 解説より手ぇ貸して!!」
守護体が一斉に動き出す。タクトはChat-Gの演算支援による“パターン予測モード”を発動──
《演算完了。敵の攻撃軌道、3ステップ先まで予測可能》
目の前の守護体が腕を振り上げた瞬間、タクトは身体をひねって軌道を外れ、滑り込むように回避。
次の一撃には踏み込みで間合いをずらし、三撃目にはしゃがみ込みでスレスレの回避。
「よし……流れに乗ってる……っ!」
しかし攻撃の起点を掴めない。
「くそ、避けてばっかじゃ勝てねえっての……!」
《処理遅延です。動作が重い日は“再起動”を推奨》
「このタイミングで“ぐるぐるマーク”出すなよ!? 命かかってんだぞ!!」
そのときだった。
「そこまで」
後方から澄んだ声が響く。
セラ=ノワールがすっと前に出る。
「あなたたちが傷つく前に、終わらせるわ」
カツン、と床を踏み鳴らす音。
「剣技──穿破連閃!」
閃光のような踏み込み。セラの剣が、一直線に守護体を貫く。衝撃とともに、敵が爆ぜるように崩壊。
残る敵も、その迫力に気圧されたかのように後退していく。
タクトは呆然と口を開ける。
「……今の、必殺技!?」
《補足不能。ただし“高密度魔力加速突き”の技系統に分類されると推測されます。おそらく彼女にとっては必殺技ではなく“通常技”です》
「通常技のパワーじゃねぇだろ!!」
セラが振り返り、静かにタクトを見つめる。
セラがタクトを一瞥し、静かに言った。
「……敵の動きを見切っていたわね。あの速度で反応できるのは、並大抵じゃない」
《補足:予測モードの効果は未公開ですが、“天性の勘”という誤解はありがちな展開です》
タクトは肩をすくめた。「まあ、バレてないうちが華ってことで」
エリナはセラを見上げ、どこか憧れの混じった目で静かに息を吐いた。
「……本当に強いんだね、あの人……」
それからタクトに視線を戻し、小さく微笑んだ。
「でも……タクトもすごかったよ。私、ちゃんと見てたから」
その先に、遺跡の中心を示す扉のような構造があった。
「また俺が触るの? 最近ずっと“謎解きデバイス係”なんだけど」
《封印の反応あり。どうぞ、タクトさん》
「なにその“俺がやる前提”みたいな流れ!?」
セラが、静かに言う。
「……ここは、私たちも数年にわたり探索してきた場所。この反応、先に進みましょう」
Chat-Gが補足する。
《……レリック・レゾナンス反応。微弱ですが、“古代演算構造”の波が近いです》
タクトは深く息をついて言った。
「何度も言うけど“微弱”って言うときに限って、だいたいロクなことないんだよな……」
──つづく
セラ=ノワール、再登場。
落ち着きのある大人の女性キャラかと思いきや、思ったより情熱家?
次回はいよいよ遺跡の奥へ──そして新たな敵の気配も?
「Chat-Gの言う“危険な気配”って、大体ほんとに危険なんだよな……」
──タクト、次回も“なんかやらされる”予感。
14話もお楽しみに!




