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第2話 定期試験

朝食を終え、僕はいつものように徒歩で学園へ向かう。カーティス家の馬車が整然と屋敷を発つのを背に、足を踏み出す。僕だけが家族とは別々の道を選ぶ理由は単純だ。


「迷惑をかけたくない」


兄弟姉妹たちは、どれもが天才として名を馳せている。学園に彼らが到着した瞬間、注目は一身に集まる。その輪の中に、凡人として見られている僕が紛れ込むのは、彼らの輝きを曇らせるだけだ。せめて、それだけは避けたかった。


学園への道を一人進む途中、昨夜の夢が頭をよぎる。暴力と嘲笑。それは夢というより現実そのものだった。最近、僕を取り巻くいじめはエスカレートする一方だ。軽口や嫌がらせ程度だったものが、殴打や魔法を絡めた攻撃にまで発展している。


「はぁ・・・今日も平穏には過ごせないだろうな」


ため息をつきながら教室へ向かい、自分の席に腰を下ろす。周囲からは冷ややかな視線と嘲笑が飛び交う。


「よく懲りないで、学校来れるな・・・」


「メンタルどうなってんのかな」


「おっキタキタ、おちこぼれ」


様々なクラスの思惑が充満する。そんな中、ある女子生徒が話しかけてくる。


「おはよう!アレン!」


「おう・・・おはよう。()()()


僕は、挨拶してきた女子生徒サランに挨拶を返す。


「また、落ちこぼれに話しかけに行ってる・・・」


「なんて優しいの、落ちこぼれにまで・・・」


「本当に優しいよな・・・」


クラスの中も目の前にいる女子生徒が俺に話しかけたことで、ざわざわした空気が流れる。

さっきまでのどんよりした目線から憧れの目に変わっている。


彼女の名は、()()()()()()()()()


サランは四大公爵家の一つ、アーディン公爵家の次女である。その名門の血筋を受け継ぐ彼女の容姿は、まさに「高貴」という言葉が似つかわしい。輝くようなプラチナブロンドの髪は陽光の下では銀の糸のように輝く。透き通るような白い肌と整った顔立ち、そして澄んだエメラルドグリーンの瞳は、見た者を一瞬で魅了する。


サランは1年生の頃から同じクラスであり、ちょくちょく僕にも話しかけてくれた人物であり、同級生の中で唯一、学園で話をする中である。サランとは一年生の時のある()()をきっかけに仲良くなった。


「アレン。そろそろ定期試験だけど、準備はできてる?」


「今回はその・・・実技試験よ・・・」


「そうだね。()()()()()()()()()()()()()()()


そう、去年、僕はこの定期試験を受けていない。ある事情があり、定期試験受けることができなかった。まあ、その事情は世間には秘匿にしないといけないことになっているし、この話をしてきたサランにも関係のある話だ。だからこそ、サランも僕にこの話を持ってきたのだろう。


「全力は尽くすつもりだよ」


「そ、そう、それはよかったわ」


「その・・・よかったら、試験まで一緒に、たんれ・・・んし・・・」


「おうおう!今日も懲りずに登校しにきたのかよ!落ちこぼれ!」


あー、キタキタ、めんどくさいなー。


教室に現れたのは、昨日、僕をボコボコにした野郎、名前なんだったっけ。まあいいや。クソ野郎と思ってればいいや。今日も今日とて、連れ巻きを連れてご登校。


「何サランと仲良く話してんだ!落ちこぼれ!」


「もうやめなさい!()()()!アレンをこれ以上いじめるようなら私は許しません!」


「強気だねえ!公爵家のお嬢さん・・・。いくら公爵家だろうと関係ねえ」


「いいか!この学園は身分じゃなく、実力のみが評価されるんだよ!」


「サラン!お前のランクはB、俺はAだ!ランクは俺の方が高えんだよ!」


「図に乗るな!」


そう言うとクソ野郎はサランの溝打ちを殴ろうとするが僕はサランの前に出てその拳を代わりに受ける。


「くはっ!」


「アレン!大丈夫?」


「うん。大丈夫、大丈夫」


こいつ、拳に魔力込めていやがった。外道が・・・。


「最近のあなたの行動には目に余るところがあります!」


「言うじゃねえか!」


再び、クソ野郎が手を出そうとした瞬間・・・。


「やめないか・・・君たち・・・」


クソ野郎の前に魔法障壁が現れ、その拳を一瞬に留める。


そこに現れたのは、担任だった。


「そんなに暴れたいなら、定期試験で暴れろや・・・めんどくせぇ」


「とりあえず席につけ!ホームルーム始めっぞ!」


そして、担任の先生は何事もなかったかのように、ホームルームを進める。


「来週はお前たちもわかるように定期試験が行われるからな」


定期試験は1年に2回行われるこの学園の試験である。毎回、筆記試験になるか実技試験になるかは学園長の気分によって変わり、今回は・・・。


「お前ら生徒にも情報がすでに漏れているとは思うが、今回は実技だ」


「今回の試験は実技、よってランク昇格戦方式で試験を行う」


ランク昇格戦方式は、クラス内で行うトーナメント形式の1対1の模擬戦で試験を行うと言うこと。この試験の結果、によってランクを上げるかどうかを教師側で採点する。


「特にアレン。お前は去年、定期試験受けてないから今回は必ず受けろよ!」


「このままだとFランクのままだからな」


そう去年、定期試験を受けていない=ランクが1年の時から変わっていないのだ。


「いいこと思いついたぞ落ちこぼれ!」


突然、クソ野郎が席を立つ。


「去年こいつは、試験で恥かきたくなくて逃げたんだったな!落ちこぼれ!」


「それはちが・・・」


「そうだね。僕は去年逃げたよ」


サランに被せるように発言した。去年の事件は公にはできないからだ。


「だったら定期試験、俺と戦え!」


「ここで宣言しろ!そうすれば、今回は逃げれねえ。いいでしょう、先生!」


「それは僕からはなんとも言えないかなー」


まあいいか、どうせ受けないといけないし。


「わかった。受けよう。その勝負」


「先生、落ちこぼれとは初戦に設定しといてくださいね。そうしないと、他のやつに負けて俺と戦えなくなっちまうからよ」


そう言うと、クラスからはクスクスと笑い声が小さく聞こえた。


「わかったわかった、僕は定期試験を受けてくれればそれだけでいい」


そうして、朝のホームルームは終わった。


朝は一悶着あったものの、その後の授業はいつも通り。そのまま放課後となる。


「アレン、ちょっといい」


僕はサランに連れられ、学園の屋上へと向かう。


「本当にごめんなさい!」


サランは大きく頭を下げる。


「急にどうしたの・・・やめてよこんなこと」


「だって・・・去年、アレンが試験を受けられなかったのは、私のせいなのに・・・」


「いいんだよ。そんなの。どうせ、今回の試験は必ず受けないといけなかったんだし」


「それに、あのクソ野郎には少しムカついているんだ」


「今日、あいつは・・・サランに手を出そうとした・・・」


「僕は・・・()()()()()()()()()()()()()()()()




来週、行われる定期試験で落ちこぼれと言われた少年の真の実力が学園中に知られることになることを。

まだ、誰も知らない・・・。



カーティス家の書斎にて、長男アルヴィンは父に呼び出されていた。


「お呼びでしょうか。父さん」


「ああ、来週、学園に用があって赴くと言っていたよな」


「はい。来週は学園長の元へ行く予定です」


「来週、学園では定期試験が行われるのは知っているか?」


「そろそろ、そんな時期だなとは思っておりましたが・・・それが何か?」


「私も同行しても良いか。アルヴィン」


「それは良いですが、父さんが心配するほどのことではないと思いますが・・・」


「いや、違うのだ。そろそろ見てみたいのだ」


「アルヴィン。お前やエシリア、リースが言う、()()()()()()というやつを・・・」


「それはそれは!存分に見てやってください!」


「アレンの天才っぷりを!」


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