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「今日の第一小隊の演習は、隊長インファンテがしばらく欠席のため自主訓練に切り替える!皆各自で励むように!」
ロメルさんが遠くで俺の部下に指示する声が聞こえる。第一小隊は第三小隊に隣接した訓練場で練習しているため自主訓練ともなれば第三小隊の訓練場を間借りするやつも現れるからだろう。俺のせいでまたロメルさんに手間を掛けさせて……本当に情けないな。
いや、こうしている場合じゃない。部下の手合いに付き合わなくてよくなった分で確保した自分の稽古時間をいかに有意義に使えるかだ。もうロメルさんを落胆させるわけにはいかない。
早く残りの分の素振りを終わらせてしまおうと剣の柄を握り直した時、背中にふと人の気配を感じてつい剣を構えたまま振り返る。
「っおお!びっくりしたぁ!んだよ、警戒すんなってぇ!」
「マ、マルティンか。ごめん、冒険者の時の癖でつい気配を感じると斬りかかりたくなってしまうんだよな……。」
「お、おぅ。ったくこれからは気をつけろよな、今度からお前とは相棒になるんだし!」
「あ、相棒……?」
驚きすぎて声がひっくり返ってしまった。
子爵のエリートと俺が、相棒だって?
「聞かされてなかったのか?優秀なアタッカーであるお前には、背後を固めて被ダメを抑える人間がそばにいるといいだろうってロメルさんに提案されたんだ。リタにはオレの幼馴染みのサルマが付くんだぜ!」
「そうなのか。リタは攻撃には特化して異次元に強い割に全体を見渡した防御の詰めが甘いからな。そういう人間が必要だろう。」
「サルマも攻撃には積極派だけど、基本的にタフなMPに依存した戦い方だから、相性のいい似た者同士なのかもなぁ。学園でもダメージを耐え凌いだあとに一気に攻め上げるカウンター戦法を2人ともよく使ってたし。」
「それで、俺は相棒としてマルティンと何をすればいいんだ?」
マルティンは顎に手を当ててうーんと考え込むと、そうだ、とりあえず手合わせしにいこうぜ、とだけ言った。
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「よー!リタとサルマじゃん、そっちはどんな感じ?」
「ねぇマルティン!第三小隊ってなにかの超人集団だったりする!?!?」
サルマの絶叫に俺とマルティンは顔を見合わせる。
「安心しろよ、ここの第一小隊長様も立派な超人なんだから。」
「少しも安心できないよね!?」
「基本的にこの騎士団にいるのはどこかが狂ってる奴らだけだって〜。考えたら負けだって〜。」
「……じゃあ私たちタンクの仕事ってほぼいらなくない???」
「……なるほど???」
「いや、いると思う。ただあたしの属性とサルマの属性が相性悪すぎるだけ。実戦では味方だから関係ない。」
「俺も、団体戦はほぼ初めてなので実戦ではきっと攻撃で手一杯になってしまいます。第四小隊の皆さんがいないと俺達アタッカーはいつか追い詰められてしまう。」
なぜか一気に静まり返った空気を打ち破ったのはサルマだった。
「ま、まぁそういうことなら?別に悪い気はしないけど?ってかユーゴは第一小隊のグラウンド好きに使えるのにどうして第三小隊に?」
「あーそーそー、お互い打ち合ってもしゃーねえと思って2人と手合わせしようって話になったんだよな。」
いやなってないが。勝手につれてこられただけだが。
「どーする?リタ。」
「どっちもあたしはよく知る相手だし大丈夫。楽しそうじゃない?」
「私はユーゴくんとの手合わせ初めてかも!よろしく?」
「よろしくお願いします。」
決して昨日のようにはさせない。マルティンに失望されないためにも気張らなくては。




