SCENE7 仲間の定義 SIDE:ユーゴ
「98!99!100…!っし、100回20セット終わりぃ!」
1時間にもわたった素振りがようやく終わり、思わずその場で剣を落として膝から崩れ落ちる。なけなしの理性を動員して辛うじて完全に座り込まずに膝立ちにとどめた。
毎朝の日課の素振りはギルドの頃の二倍、走り込みの距離は1.5倍。ここ半年間における連日の酷な訓練で体はとうに限界を超えているが、もともと近衛兵として活躍してきた貴族生まれの騎士達は俺とは食ってるものが違うのか体つきから全然違う。リタ、フェリクスを初め、平民で孤児の俺からしてみれば雲の上みたいな人たちに目をつけて拾ってもらったのだ。ここで同じ第一小隊の同僚に後れを取ったり、ましてや足を引っ張る真似はしたくない。この後体が暖かいうちに走り込み、その後間食を挟んでからロメルさんに一対一の手合い稽古を頼んでいるのだ。怠けていられる暇はない。俺は重い体を引きずるように立ち上がった。
*
「おー。励んでるね、ユーゴ。」
日が西に傾き始めた頃。聞き慣れた声に振り向くと、いつも通り手にえげつないものを引っ提げた姿の幼なじみ兼上司がいた。
「お疲れ、リタ。あぁ、さっきロメルさんにつけてもらった稽古も終わって……まて、今日って登校日じゃないのか?」
「セネンに呼び出されて引きこもり研究バカの牙城を崩してたら中途半端な時間になったから。ダンジョン2つ潜りつつ帰ってきた。」
「……移動はいつから?」
「昨日の深夜?」
「でもそれ…」
17歳女子とは思えない逞しい腕で軽々と抱えられた新鮮な生肉を指差す。リタはやっぱり動じず答えた。
「ユニコン2頭、解体済み。これから先に帰ってるはずのニセタの所に送るつもり。」
「あーあ!今日もまたフェリクスは胃薬と親密を深めましたとさ!かわいそかわいそ!」
「ちょっと、どういう意味。」
「そのまんまだよ?」
「何が悪いのよ。」
「学園をサボってダンジョンに潜ること。」
「家業としての公欠だし良くない?」
「良くない!」
お互いに不機嫌そうな顔で見つめ合ってからその雰囲気に耐えられなくなって軽く吹き出してしまう。
親を亡くしてから自分一人で妹も自分も賄ってきた。しかしそうできたのはリタのお陰で。今こうして貴族の兵たちに混じって剣を振るえているのも、リタのお陰で。
どうしようもなく自由で身勝手な師だけど、俺はやはり彼女に逆らえない。
「ごめんください、ニセタ居ますか?」
「わ、リタさん!?いっ、いらっしゃいませ!店番のリリーです!ニセタですか?えーっと、本当につい5分前くらいに着いてですね…」
「…あれ?あたしより先に出てたんだけどなぁ…」
「リタ!?なんで先に出た僕より寄り道してる君の方が到着早いの!?」
A.自分の家の馬ほど走り慣れてる馬はない




