SCENE2 騎士団、始動 SIDE 勇者:ロメル
「…というのが、カリナから聞いたあの一件の発端だね。」
「なぜ、今、聞かされたんだ…」
僕は山積みになった書類をさばきながらアデラと話していた。
「つまりロベルトはすべては自分の身分証明のためにカリナ様のご要望に応え、あれだけの大掛かりなことをしたと。」
「本人のみぞ知ることだが、カリナによればきっかけはそうなんだろうな。」
「そんなことができるのか、あんなにも壮大な下準備を、一冬の間で…?」
「ロベルトなら不可能じゃないと思って。ボクの見込みは正しかった。」
「末恐ろしい…」
書面に埋めていた頭を持ち上げ、彼女に振りかえる。
「ところで騎士団の分割の話は進んだか?」
「もう一応全員に話を通してある、そろそろ各小隊の長が決まるころだ。」
「全員分の帯刀許可申請と公務員契約をしなくてはならないのが憂鬱だな…」
この夏の一件によって、ジェペス父子の悪評が広まると共に騎士団の評判と人気は急速にのび、今となっては王直属で10000人を抱える大騎士団となった。ロベルトはというとあの裁判以降全く表に出ることはなく、彼から時折送られてくる手紙によると今はエマをつれて王都郊外の山麓の集落にある古い研究所で法律の研究に明け暮れているらしい。彼がそんな状態ということは、この騎士団の後を見るのはナバーロ殿と初代騎士団メンバーの学園卒業生だけ、ということになり、僕とアデラ、ナバーロ殿の3名だけでこの10000人体制の騎士団を運営している。勘弁してくれ。
しかも、戦いを生業にすると決めた者にはそれ相応の手続きがいる。
まず武器を操る者として民間を傷つけない、騎士道に反した行いをしないことを誓約する帯刀許可申請、加えて国の機関の一つに仕えるため全員が公務員として国に奉仕することを契約する公務員契約。
ナバーロ殿や僕は元近衛騎士団員だからこれらの手続きは終えているものの、夏以降入団してきた他の団員の多くは平民の出や学生なので当然そんな手続きを行ったことも見たこともない。
…つまり、僕たちが教えなければいけないわけで。過労は必至である。
「ボクはすべての申請は終えた。あれ、一個一個誓約を書いたうえですべてに誓約者と国王の署名が必要なんだな。なんて面倒な。」
「近衛では入団初日にみんなでやらされるから収拾がつくのだが、まさかこんなに爆発的に、7000人も増えると思っていなかったんだ…」
「ここで悪い知らせで申し訳ないのだが、さらにボクたちに嬉しい悲鳴を上げさせに来る案件がある。」
「これ以上か、なんだ…?」
「どうやら、ギルド連合が政治に干渉しようとしているらしい。これを見てくれ。」
ギルドが公式文書を出すときに使用する黄色半紙を手渡され、その内容を読む。
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宰相バエズ家次期当主、アデラ・バエズ嬢
この度は偉大なるご武勲、心よりお祝い申し上げます。今後とも更なるバエズ家の皆様のご活躍をギルド連合一同応援申し上げます。
さて、我々より折り入ってお願い申し上げたいことがございます。アナジャ商業ギルド、ロペス商業ギルド、ジュステ率いる冒険者ギルド、フェルナンデス率いる魔術師ギルドは今一度ギルド連合としてより一層連携を強め、騎士団の皆様へ金銭、人材面から最恵の支援をさせていただきたく存じます。その代わりと言っては失礼千万でございますが、ぜひバエズ様には我々ギルド連合の枢密院介入を手助けしていただきたければと存じます。
我々は平民からなる組織であり、国民の99%を占める平民の代弁者であると思っております。そしてその志は、騎士団の皆様も同じくしていらっしゃると信じております。
バエズ様のご寛大なお心に感謝申し上げます。今後ともギルド連合をよろしくお願い申し上げます。
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