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海上のパルーマ  作者: ヒカル
騎士団編
33/61


原告の弁護士が静寂を破った。


「証人の発言は信憑性に欠けます、この国において統治者の罷免は宮廷にも連絡があるはずですが該当する情報は入手されていません!」


「そうでしょうね。もしそれがまともな宮廷だったならもちろん情報が入っていたでしょうとも。」


俺は挑発的に言った。


「裁判官、エマ嬢に記憶の奪取魔術をかけてみては?」


「なぜか聞いても。」


「エマ嬢はリューエット地方の出身です。それは俺がリューエット地方に拠点を構えるアナジャ商業ギルドからもらった情報に記載されています。そんで、そこの子息のセネン・アナジャからもらった今のリューエット地方の光景はこれです。」


俺はセネンに見せてもらったリューエットの荒廃した様子の幻影魔法を公表した。


幻影魔法は便利だ。景色から幻まで、脳内に起こせるありとあらゆる映像を具現化できる。俺は学園長を訪れたあの日のあとすぐにセネンにはリューエットの実家に行かせてそこでの街の様子を見てきてもらったのだ。あとはセネンが俺に見せた幻影魔法を俺がもう一度ここで再現するだけ。


エマはまさか故郷の景色をもう一度目の当たりにするとは思っていなかったのだろう、分かりやすく目を見開いた。


俺は裁判官に向けて更に畳み掛ける。


「国内有数の貿易街リューエットがこんなことになってもこの王都には一報さえ入っていません。私が先ほど見せた凄惨な光景も所詮は幻影魔法、私が幻を見せたとお疑いの方も多いでしょう。地元民たるエマ嬢の記憶から情報を得ることでこの件についてより公正な裁判ができるのでは?」


「……宮廷魔術師を呼べ!」


裁判官の号令で、程なくして宮廷魔術師を示す紫のマントを羽織った男が現れた。


「法の精神に誓って公正に魔術を行使すると誓います。」


恭しく裁判官と王妃に一礼して、彼はエマの頭に手をかざして魔術を展開した。


次第にエマの瞼が降り、エマの記憶を表す光が男の手に集まる。終わる頃にはエマは完全な昏睡状態にあった。


「それでは、幻影魔法を媒介にエマ嬢の記憶を再生します。」


最初に現れた映像は栄えたリューエット港だった。

水揚げ直後の新鮮な魚が売られる魚市場。

白い帆船が一斉に海に乗り出していく光景。

行き交う商人と商業ギルド、セネンの実家の大きく立派な建物。


エマはそんな平穏な街で生まれた。


加護を持った人は強く願うことで何かを得ることができる。

漁業者だった両親のため、エマは強い水魔法を手に入れることを願った。

捕れた魚の鮮度を保つために独学で水魔法を磨き、各々の魚にとって最も過ごしやすい水槽が作れるようになった。

旬の季節に直撃するはずだった嵐を避けて自分の家のみならず他の漁師の船も救った。


彼女は家族思いの優しい少女だったのだ。


しかし悲劇は突然に起きた。


リューエットの一部の力を持った商人たちが商業ギルドに反抗、アナジャ商業ギルドからの独立と貴族統治制からの脱却を掲げて蜂起した。

どうやら、この地方を治めていたジェペス家三男ビクトルによって課せられた重税に耐えかねたらしかった。アナジャ家は貴族との協定があって税制に対して異議が言えない。これに腹を立てたのだという。

暴乱はリューエット地方の各街に広がり、貿易は一時的に止められざるをえなかった。


その混乱の中だった。


エマの両親が、荒れ狂う暴徒の手によって嬲り殺されたのは。


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