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海上のパルーマ  作者: ヒカル
騎士団編
18/61

SCENE9 俯瞰 SIDE 軍師:ロベルト

「全く、戦場からの血気盛んな雄叫びで鼓膜が破れてしまいそうです。」


エマが呆れた声で肩をすくめて言った。


「まあ、できるだけアツくなれってのが俺の頼んだことだからなぁ。とはいえちっとばっかしやりすぎじゃねぇか団長さんよぉ…」


俺も疲れが隠せない様子で答えた。


今俺とエマは山頂の本部で戦場を俯瞰している。


紅茶片手に、戦場を眺める。いやはや良いご身分である。


「こちとら長旅のあとで疲れてんのにセルピエンテの奴、到着早々開戦するとかアホなんか。勝ったら俺がとるはずだった3日分の睡眠時間の慰謝料も請求してやる、あのクソ狸。」


「私たちがここ、山頂に着いたのもセルピエンテ軍が到着する1週間も前だったでしょう。あれ以上休む気だったんですか。あなたの体力、なさすぎでしょう。」


「首から上しか使わないからいいんだよ。」


「首から下が無能すぎるんです。」


「なんとでも言え。」




そこで、俺の脳内にノイズのような信号が入った。

この気配は山腹に潜んでいるアデラから受信だろう、と思いそのノイズに注意して耳を傾ける。


これが闇魔法の一種で最も特徴的な魔法、同属性間での共鳴による意思伝達だ。

会話の始まりでチューニングのような感覚でお互いの波長を合わせる必要があるが、慣れてしまえば数秒でこの動作もこなせるようになる。

通信魔術とは違い、声に出して会話しなくても意思交換ができるのでとても便利だし、諜報にもうってつけのなかなかいい魔法だ。


アデラから伝わってきた言葉を読み解く。


(ロベルト、セネンたちが見えた。もう本陣近くまでにじり寄ったようだ。)


【セネンにチューニングして進捗を訊く。報告助かった、アデラ。】


(またなにか手伝えることがあったら教えてくれ。)


【了解】


今度はチャネルを切り替えるようにしてセネンの意識に集中する。


【セネン、セネン・アナジャ。聞こえるか、こちら本部のロベルト・セールズだ。】


(ロベルト、僕はもう連日の疲労でMPが切れそうだ。)


突然の言葉に一瞬驚くが取り乱すわけにはいかないので詳しく状況を把握する。


【ニセタに治癒をかけてもらうことはできるか?】


(本陣、思っているより敵が分散していて、ニセタも思っていたより大技になると踏んでいるらしい。彼女がこれから使うMPの見当がつかないのに、僕に浪費させる訳にはいかない。)


【そうか。ならお前は食って寝て休んでおくしかないな。ロメルを遠隔転移させるように取り計らってみるから、それでいいか。】


(むしろいいのか?ここで勇者を使って。)


【直に日が暮れる。囮軍の犠牲は当初の計画よりかなり抑えられていて、第三軍に至っては進軍もしていないようだ。これはかなりのプレッシャーがセルピエンテにかかっていると考えて良い。食えない狸爺の事だ、今日のところは早々に撤退して休養を取らせ、明日に向けて体勢を立て直そうとするはず。】


(その休養の隙を今夜突く、と?)


【むしろ今夜が最高にして唯一の瞬間だ。】


(そうか、それなら勇者を使うのは今夜、いや、明日の未明が最適だな。)


【体裁からみても、勇者&ギルドが連携して首を取ったってのもかっけぇだろ。】


(わかった、君がそう言うなら。)


【じゃあロメルを引き抜いてアデラと一緒に送り込むからそれまでうまく指揮をとれよ。】


(了解。)


相当余裕がなかったのだろう。セネンの意識がプツッっと切れた。

気絶するように寝たのだ推察する。


「エマ、緊急事態だ。俺は今から囮陣営と通信魔術で会話してくる。お前さんは山腹からアデラを連れてここに呼んでくれ、対面で話す必要ができた。」


俺はそう指令を出すと本部の奥に向かったのだった。

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