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「我々が今回のこの戦で追うのはただ一つ、セルピエンテ・ジェペスの首だ。彼さえ屠れば、セルピエンテについていたものは将を失って瓦解するだろう。だから彼以外を無駄に追うことは絶対にしないでくれ。戦略的総指揮はロベルト・セールズが執り、俺は前線にてお前たちと共に戦う。俺は平民上がりのたたき上げだ。そして今回相対する相手は俺が踏み台にしてきた同僚でもある。故にあいつらの癖はこの中でだれよりも知っているだろう。戦場では互いから離れることもあるとは思うが、俺の指令が聞こえたらどうか従ってほしい。」
続いてロベルトが口を開いた。
「よしてめえら!ようやくあの狸爺をぶちのめす時が来たんだ、腕に自信のあるやつは死なねえ程度に大暴れしてこい。作戦は今は言わねえぞ、その都度言う。」
そしてあの板についた悪い顔をして付け加えた。
「あと、俺とアデラはこの三週間で超絶面白え仲間を連れてきた。紹介するよ。シャエット国リエゾン公爵家よりはるばるお越しいただいた、公爵家の騎士の皆さんだ。」
彼の後ろから音なく現れたのは、中くらいの背にフードを目深にかぶった不思議な男性だった。するとその男性は増殖した。そう、まるで複製されていくように増殖したのだ。
瞬く間に一人しかいなかった男性は、70はいるだろうか、そんな数になっていた。
隣でセネンが、「同族。」と呟いた。
え、この子も増えるの?
「皆の中にも知っている奴が多いと思うが、シャエット国は古代よりその独自の武術で一騎当千の強さを誇る武人を大量に抱える国家だ。今回、俺とアデラはシャエット国にわたりリエゾン公爵と交渉の末この72人を領内から貸していただいた。彼らはバカほど強い。必ず俺らの勝利に貢献してくれるだろう。」
全く、ロベルトの交渉力は恐ろしい。この短期間で他国の公爵を説得したのか。
「明日は全員にとって長い一日になる。今日必要なのはよく寝ることと、今いう奴らのどれかと仲良くなっておくことだ。」
仲良くなる?
「勇者号も持つロメル、宰相の娘のアデラ、次期商業ギルド長のセネン、強力な土魔法使いのマルティンとサルマ、ヒーラー且つ近接戦にたけたニセタ、冒険者ギルド長の娘のリタ、父親相手でさえも正義を突き通せるソフィア、奇跡みたいになんでも治せるセレナ、この軍で最も根性あるフェリクス、冒険者の期待の新星ユーゴ。それとここにいる加護持ちの女、エマ。この12人。今回の作戦は学園の成績とか実績とか諸々みてこいつらを中心に回すことに決めた。だから今日のうちにこいつらと仲良くなっとくと明日生き残れる確率がぐんと上がるかもしれねえ。」
なるほど、今言われた人物を中心に小隊を組むのか。
しかしロベルトが言ったエマという少女は聞いたことがない。
「ロベルト、エマっていうのは?」
「そのへんで拾ってきた天才。」
「…良い子だから聞き分けよく元居た場所に返してきなさい。」
「やだね。シャエットからの帰りで飢え死にそうになってたから俺お手製のエナドリあげたらなつかれた。俺の弟子にする。」
本当にこの自由人は…お手製ってなんだ。君が水魔法で適当に作っただけだろうアレ。
ロベルトお手製のエナドリ、もとい魔の補給剤は味と見た目以外は優れものだ。
原材料は水、ブドウ糖、アミノ酸9種、必須脂肪酸、セルロース。
味はただただ途方もなく甘く、色は1000年物の井戸で組んできた水のような白濁だ。
ついでに原料が浮いてたり沈んでたりする。
ロベルトの体はこれでできているらしい。なんて奴だ。
「あの子、優秀そうだしいいだろ!?というわけでお疲れ!皆解散!」
…どこまでも僕達らしい軍が出来上がったものだ、と僕は呆れたのだった。




